第11話 それぞれの思惑④~ルヴァン・カリス~
今回は、ルヴァン視点と、ちょっとした余談です。
ルヴァンは、巨大な建造物から巨人が現れ、王女殿下が攫われたところを横目で見ていた。
自身の魔術師としての、“生”は終わった。
また、巨人が出てくる。今度はこちらに向かってきた。
周囲の上級魔術師たちは、
「軍に任せて、逃げましょう」
と、喚き散らす。
正直、うるさいとしか思えなかった。
そして、巨人に掴まれた。
人としての“生”も、終わるのだろう。
喰い殺されるのも、業というものだ。
捕獲され、透明な建物に監禁される。
晩御飯にでも、するのだろうか。
近衛兵士が、新たに捕獲された。
騒がしいやつだ。
クルーガや王女さまを見習って、静かにしておれ。
その後すぐ、巨人が、武器を持って暴れ出した。
やはり、悪魔を召喚したのか。
巨人と、近衛兵が話し始める。
巨人は、“テツジ”と名乗った。
近衛が、“勇者召喚”などとほざくから、我を忘れ、召喚の事実を叫んでしまった。
召喚魔術師は、異世界人を如何に強くさせ、永く生かし、従僕させるかに心血を注ぐ。
勝手に魔法を施し、使い潰すために。
異世界人が死ぬと、軍部上層部に文句を言われる。
自分たちの使い方に問題があるだろうに…。
テツジと近衛兵の話を聞いていると、かなりの知性を感じた。
トイレは、見たことも無い素材で出来ている。
夜に取り出した薄い板は、正に驚きの道具だった。
明かりを灯し、離れた人と会話ができ、更に、瞬時に精巧な絵を描くことが出来る。
テツジは、魔道具ではないと言う。
人の心を、豊かにしてくれる道具だ。
魔術師になった時、人の役に立ちたいと、魔法陣の勉強を必死にしていた。
給金のほとんどを使い、安くない魔道具を買った。
分解して魔法陣を研究するためだ。
しかし、天才だと囃し立てられ、いつの間にか、自尊心を満たすために、魔法陣を描いていた。
遠く離れた人との会話。
瞬時に届く手紙。
ルヴァンは作ってみたくなった。
理屈も理論も分からない。
でも、作ってみたいと、強く思う。
頭を働かせていたからか、興奮からか、よく眠れなかった。
テツジは、食糧を分けてくれたり、トイレを用意してくれたり、優しい部分もある。
暴れたのは、わしの考案した“凶暴化”魔法のせいだろう。
やはり、豊かな心は人に優しくなれる。
心が豊かになる魔法を、魔道具を作ろう。
最上魔術師第三位のルヴァン・カリスは死んだのだ。
■余談 悪魔の水 ■
私は、リリアーナ・エルディアス・フォン・アストレイア。
アストレイア王国の第二王女ですわ。
花も恥じらう乙女ですわ。
それが、巨人テツジの人質になってしまいました。
悲劇のヒロインですわ。
何が過酷って、お花摘みです。
少し匂う土の上で、用を足せと言われました。
人質である以上、仕方がないのですが、あんまりです…。
マーリンだけが味方です。
不機嫌顔でいると、テツジが“スポーツ・ド・リンク”という飲み物を提供くださりました。
一口飲むと、酸っぱいような甘いような。
初めて体験したお味でした。
それに力が湧いてくるような、そんな感覚になります。
つい、舞踏会でもないのに、踊りを披露してしまいました。
はしたないですが、何度かお代わりを所望し、飲ませていただきました。
ところが、急にお腹が…ギュルギュルと音を立て、冷汗の出る激痛に襲われました。
急いで、テツジの作った、最低のお手洗いに向かいましたわ。
事なきを得ましたが、音が聞こえてしまったのではないかと、恥ずかしくて、恥ずかしくて…戻れません。
マーリンが、心配して見に来ましたが、それも恥ずかしくて、きつく当たってしまいました。
自己嫌悪です。
全て、あの“スポーツ・ド・リンク”がいけないのです。
人を虜にして、苦難を与える。
そう、まさに“悪魔の水”です。
もう、二度と口にしません。
でも、一口だけなら…。




