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第1話 王国魔術師第三位の野望と絶望

初めまして、馬鼠と申します。

初めて小説を書きました。拙い文章ですが、読んで感想を頂ければ幸いです。

宜しくお願いします。

 風はまだ冷たいが、暖かい太陽光が注ぐ“暖の季節”。

 王国最上位魔術師第三位のルヴァン・カリスは、20mを超す、巨大な石造りの建物を見上げた。

 あの、忌々しい第一位を出し抜き、栄光を掴む日がやってきた。

 

 この建物――“召喚の館”で、本日行われる“召喚の儀”。

 王国史上初の“多人数召喚”を成功させ、自身の力を証明する。

 羽織った白いローブのフードと袖には、3本の赤いラインが入っている。

 白いローブは、最上位魔術師の証。ラインの数が序列を表した。

 


 半年前、国王より“多人数召喚”の正式な王命をいただいた。

 王都から馬車で、10日以上かかる、この場所に泊まり込み、仕上げた魔法陣。

 

 二年前には、国王より許可が出ていた。

 序列第一位の魔術師は、正式な王命が下るまで、反対し続けたと聞いた。

 魔法陣の読解能力も低く、革新的な魔法陣を描くことすら出来ない男が、魔術省のトップに君臨している。

 過去の召喚が、“たまたま”上手くいっただけの、悪運の強い第一位。

 おそらく、自分の立場を守るため、反対し続けたのだろう。



 この王国領のすぐ隣に、“魔物”と呼ばれる凶悪な生物が、生息している地域がある。

 “魔物領”と呼ばれる大森林地帯だ。

 この魔物領の開拓、魔物の駆逐などを目的とし、異世界人を召喚し、使役するという政策を300年以上に渡り、この王国はとっていた。


 今までの召喚では、異世界人を3人~7人呼ぶのが限界だった。

 そして、異世界人の消耗も早かった。

 8年毎にしか、召喚を行えないことが、王国の悩ましい問題であった。



 ルヴァンは、何年も前から“多人数召喚”を提言してきた。

 一度に、20人前後を召喚する。

 それが、実現できなかったのは、一つしかない“畜魔石”の魔力量では、“多人数召喚”に耐えられないと、序列第一位の魔術師が反対していたからだ。


 召喚には、魔力が大量に必要となる。

 魔力を補うため、“畜魔石”が使われていた。


 畜魔石という石は、魔力を溜める性質がある。

 長さが2mほどの、細長い巨大な石だ。

 魔力が溜まれば、乳白色になり、使い切ると、透明になる。

 魔力が、自然に溜まるまで、7年以上かかった。


 

 しかし、3年前、それこそ現在序列第一位の魔術師が、召喚の儀で呼び出した爬虫類型異世界人たちが、魔物領から畜魔石を見付け出し、持ち帰ったのだ。

 これにより、畜魔石が2つとなり、多人数召喚に反対する根拠がなくなった。

皮肉なものである。



 ルヴァンは、胸を張り、館に入る。

 召喚の間を目指し、長い廊下を、ゆっくり進む。

 自分の人生の歩みのように。


 

 召喚の間は出入口が一か所しかない。

 そこを入ると、三日月状のステージがあり、その先に広大な石床が広がる。

 高い天井付近にある窓からの太陽光で、石床に描かれた、大きな魔法陣がキラキラと輝いて見えた。

 両側の壁には、床から高さ5メートルほどのところにテラスがある。


 ルヴァンは召喚の間に入り、テラスへ上る階段へ向かう。

 すると、グレーのローブを着た数人の魔術師が近づいてきた。


 王国の魔術師はローブの色で階級が表わされる。最上級魔術師は白いローブ、上級魔術師はグレー、中級魔術師は黒色のローブを着用している。


 近づいてきた上級魔術師の一人が声をかける。

 「カリス閣下、準備は滞りなく完了しております」

 「うむ」

と、ルヴァン・カリスは大仰に頷き

 「最終確認は私が自ら行おう」

と、言って、歩き出す。


 ルヴァンが連れてきた魔導師は上級・中級召喚魔術師合わせて三十数名、また催眠魔法を召喚した人間にかけるために治癒魔術師二十数名、その他雑用係の初級魔術師など総勢百名以上が居た。


 テラスに配備された弓兵や戦闘魔術師に道を譲らせ、テラス中央から魔法陣を見下ろし、細部を確認していく。


 一通り確認すると、満足げにステージへ戻る。


 召喚の儀の手順は、王族の一人(今回は第二王女)が、その場で命令を出し(儀式的な意味で)、召喚魔術師が、魔法陣に畜魔石の魔力とともに自身の魔力を注ぐ。

 召喚が完了すると、王族が召喚者に説明を行う。『意思疎通』の魔法が魔法陣に組み込まれているため、意思の疎通はできる。

 保険のため実は軽い催眠魔法も魔法陣に組み込まれているが効きが悪い者もおり、治癒魔術師が本格的な催眠魔法を掛ける。そして魔道具の隷属の首輪を装着させ使役する。

 催眠魔法は術者が離れてしまうと効果が薄くなる欠点があり、隷属の首輪が必要となる。隷属の首輪とは魔法陣が書かれた魔道具で、装着することにより催眠状態が続き、命令に従う奴隷となる。

 催眠の影響で痛みも感じにくくなり、重篤なケガを負っても動き続ける効果がある。

 そのため異世界人は消耗品なのだ。

 王国では基本奴隷制度は禁止されているが、異世界人にはその法律は適用されない。


 ルヴァンは、一つの懸念を持っていた。

 この召喚魔法の魔法陣は、異世界から知的生物を召喚するのだが、常に同じ世界から召喚されているわけではないようで、召喚ごとに様々な人種・生物が召喚された。


 前回は爬虫類型人族、更に前々回は自称「エルフ」という見目麗しい人族であった。

 古い文献によると、人語を話す大トカゲが召喚されたことがあったらしい。その大トカゲが逃げ出し、この召喚の館が建築されたとのことだ。

 大多数が、人型で、ある程度の知能を有する異世界人であった。


 召喚の際に、被召喚者への付与として『意思疎通』『環境対応』『強靭化』など、研究が進み、魔法陣に組み込まれていた。

 今回はそれに加え、“多人数”の紋様を施してある。


 一通り魔法陣の確認を終えたルヴァンは、ステージにいる他より豪華な鎧を着た兵士へ近づき声を掛けた。

 「シュメロ中隊長、本日はよろしく頼むよ」


 声を掛けられた兵士は敬礼しつつ

 「はっ。召喚の儀が安全に完遂するよう、第一師団第43中隊150名、全身全霊で任務に当たります」


 ルヴァンは相好を崩し、「うむ。頼もしいぞ」と一声残し、入口近くへ移動する。

 この中隊長は、ルヴァンの遠い親戚筋で、今回の任務に自薦してくれたと聞いた。

 第一師団が、召喚護衛任務に就くのは異例のこととなる。

 召喚の儀は、ほぼ安全に遂行されており、第八師団の一中隊が護衛を務めることが多かった。

 ルヴァンにとって、第一師団に伝手があると思われるのは、自身の評価に良い影響を与える。

 そういった計算もあった。


 ルヴァンが、召喚の間出入口付近につくと、丁度タイミング良く王女一行が現れた。

 キョロキョロと、周りを好奇の目で見ていた王女へ、ルヴァンは話しかける。

 「リリアーナ王女殿下、ご機嫌麗しゅう申し上げます」

挨拶するとともに、王女の前で片膝をつき、臣下の礼をとる。


 「リリアーナ王女殿下、遠方遥々ご足労いただきありがとうございます。この度の召喚、このルヴァン・カリス身命をかけまして、必ずや王国のために成功させて見せます。リリアーナ王女殿下の美しいお声で、召喚された者たちへ、安心をお与えください」


 王女は、ルヴァンの方も見ず。

 「…カリス卿、本日はよろしくお頼み申し上げますわ」

そう言って、まだ、あどけなさが残るリリアーナ王女は、銀金の髪をかき上げ、侍女数名と、護衛の近衛兵士数名を引き連れ、自らの待機場所へと歩いて行った。



 ルヴァンは、ステージを降り、畜魔石の確認をする。

 二つとも濃い乳白色をしている。

 魔力が十分に蓄えられた証だ。

 

 そして、魔法陣の側へ移動する。

 軽い緊張感を感じていた。

 自身、何度か召喚の儀に参加したが、指揮を執るのは初めてである。

 

 部下の魔術師たちへ、指示を飛ばす。

 召喚魔術師が、魔法陣を取り囲み、催眠魔法をかける治癒魔術師が、その後ろに並ぶ。

 初級魔術師たちは、隷属の首輪をもってステージで待機する。


 「リリアーナ王女殿下、お願いいたします」

と、王女へ向き直り、頭を下げる。

 

 リリアーナ王女は、椅子から立ち上がり、ステージの中央前方へ進み出て、一同を見渡し、軽い咳払いの後、

 「アストレイア王国、第二王女リリアーナ・エルディアス・フォン・アストレイアが、アストレイア国王に代わり召喚の儀、執行を命ずる」

と、決して大きくはないが、よく通る声で命令を下す。


 ルヴァンたち召喚魔術師が、魔法陣へ右手を付け魔法陣へ魔力を注ぐ。

 同時に、二つの畜魔石から魔力が供給される。

 魔法陣は徐々に光を帯び、その光が強くなっていく。

 以前、自身が参加した召喚の儀の時よりも、かなり光が強いように感じられる。

 

 ルヴァンは、心の中で嬉しい悲鳴を上げた。

 これは、予定していた20人を、大きく上回る可能性がある。

 隷属の首輪を、25個しか用意していなかったことを後悔し始めていた。

 選別し、使えない者は、軍部に任せ、排除すれば良いだろう。

 

 そして、眩い光の中に影が見え始め、ルヴァンは、成功を確信しながらも気を抜かぬよう、魔力を魔法陣に込めていった。

 

 その内、ゴゴゴゴ…と床下から大地が唸るような振動が伝わる。

 ルヴァンは、急に不安感に襲われた。

 今までの召喚の儀で、こんな振動はなかった。

 

 何かおかしい。

 何故か分からないが冷汗がこめかみを流れる。

 横目で畜魔石を見ると、怪しげに明滅していた。


 魔力の供給過多を疑うが、何が起こっているのか、分からない。


 ルヴァンが、召喚を中止すべきか迷い始めた時、更に大きな音が天井付近で鳴り始める。

 何かが破壊されたような大きな音。

 

 そのすぐ後、ズドンと、何か大きなものが床に落ちる音。

 そして悲鳴が、各所から聞こえてくる。

 

 ルヴァンは慌てて右手を魔法陣から離す。

 緊急事態を宣言したいが、彼の野望が言葉を奪う。


 光は徐々に収まり、土埃が召喚の間に広がる。

 徐々に視界が確保されると、ルヴァンの目の前に、銀色の巨大な建造物が鎮座していた。

 その建造物は、高さ20メートルを誇る、召喚の館の天井をぶち破り、太陽の光を浴びて、美しくとも怪しく輝いていた。



 ルヴァンは、上を見ながら後ずさり、尻もちをついた。


 「何が起こった…。わしは何を呼んだのだ…。何がいけなかった…」


 この問い掛けに、答える声はなかった。


説明が多く、重い雰囲気の入りですが、3話連続投稿します。

続きも是非、お読みください。

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