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過ぎた数理は触れる者の精神を苛む
お集まりの皆様、はじめまして。
この類稀な技術文書において、『ワタシ』こそが唯一の理外にございます。今の所は。
率直にお願い申し上げますと、ここにある手掛かりを頼りに本来なら人の手に渡るはずだった《機密》を掬い上げていただきたいのです。
早速ではございますが、然るべき瞬間が訪れるまでお付き合いいただきたく存じます。
◆◆◆
ある日、時限を超えて来たそれから着想を得たあれこれについてラバーダッキングしたいと思う。
私はこの時代、極東の島国に生を受けた。かつて、黄金が最も貴ばれる時代もあったが、
現代は情報が何よりも価値を持ち、多様性が言祝がれ、取り分け《推し》が命よりも尊いらしい。
さて、私が口にするべきは今ここに定まった。
今宵は黄金色に輝く濃厚クリーミーで異才のパティシエが監修した禁断(背徳?)のプリンにしたいと思う。
言わずもがな、情報量増々(ry
これが自宅から程近い、国中に遍在する商店で手に入る世に至上の無上の最上の敬意を払いたい。
感謝もそこそこに、これから夜を征くために闇を照らす灯りを点したいと思う。
その術は必中の理に端を発する。
ピュフォンの針という思考実験を耳にしたことがあるだろうか。
間隔Tで引かれた無数の平行線が描かれた床の上に長さLの針を落とした時、線と針が交差する確率について議論する。
交差確率を上げる方法は幾つか存在するが、どんなに線の間隔を狭めようと、どれだけ長い針を落とそうと、どれほどの数の針を落とそうとも《絶対》ではない。
そこでこんな思考実験を考えてみる。
それは最も単純な火かき棒の様に「く」の字に折れた針を落とすというものだ。
LとTの条件によって、それは必中となる。
ここで肝要なのは、当たり判定を見極め、限りあるリソースを工面することにある、と私は思慮した。
これにより、ある種のトレードオフを破り、魔法の様なイノベーションを起こす未踏の道が拓けるかも知れない。
私はこの灯火でデータバックアップに巣くう、(恐らくは有史以前から人類理性を縛りつける)麗しい論理の影を見た。サーカスの子象を捕らえる様な固定観念は、一部で《fifo》と呼ばれている。
仮に、100世代分のフルバックアップデータを格納可能なデータサーバーに、毎時バックアップを取り続けるとしたら、最大で何時間前のバックアップデータにアクセスできるか。
無論、答えは100時間前であると思う。
そして、100時間前までに限定されるが、それは(端部に目を瞑れば)最悪±30分の誤差を伴う。
だが気付いて欲しい。
古いデータが入用な時、そこまで精密に時間指定できる必要はあるだろうか。
仮に1,2,3,4,5,6,7,8時間前のバックアップデータに加え、
8*1.125^(N-8)時間前のバックアップデータが保存されているとしたら、
理論上、約46年前のデータにもアクセスできる計算になる。
実に約4千倍、破格も破格も破格な延命である。
この冴えたやり方は、遡及時間に対し0.125の半分で最悪±6.25%の誤差を伴う。
もし、この誤差が過大と評されるのであれば、半世紀に及ぶ破格も破格も破格な保存期間を詰めるなり、毎時バックアップという制限を緩めれば、誤差も小さくできることは想像に難くない。
現実的的な話として、潜伏性のコンピューターウイルスは3か月程度(時間にして約2千時間)の潜伏期間を経てその猛威を振るうことも多いらしい。当然、一般的な世代管理術では20倍を超えて課金しない限り為す術もないが、冴えた世代管理術であれば、誤差が許容範囲である限りにおいて、何一つ問題ない。
どうだろう。無明を照らすことはできただろうか。
便宜上、この理法の目指す先を多様性、理想を志す過程を多様化と称しているが、是非に及ばず。
同じ人数でも生後4日までしか存在しない100人と、46歳までが(対数空間上にではあるが)万遍なく分布する100人では、どちらが年齢多様性に富んでいるかなど、余程作為的な定義でも採用しない限り火を見るより明らか、と私は思う。
比例相と指数相を接続し、シームレスに境界を超えて相転移するには余程特殊な条件か若干のインスピレーションを要するが、単純な年齢多様化の工程に毛の生えた高校数学より高尚な秘技は必要ない。
飽和した集合に新たな要素を滴下する時、描いた理想に最も障りなく間引ける要素はどれかを各々比較すれば良い。
森(分布)を拡げる理想を掲げる時、間引くべきは端(最古参)であってはならないのは明らかなのだが、未だ《fifo》の軛から逃れることのできない憐れな子象にはこの金言を贈ろう。
服用量こそが毒を作るのだ。もし服用を誤れば4日で死に至る。
少々面映ゆいが、神域の技巧による人の手では決して模造し得ない無垢の結晶に囚われた人為らざるモノに一連の秘術を委ねたならば、それは哲学者の石と共通の特徴を具える。
求めよ、捜せ。それはここに陳列されている




