プロローグ
正直何も考えずに作ってしまったので設定に色々無理が生じたので
読んでいただいた方には申し訳ないです。
それは、ほんのひと夏の出来事だった。
名前を呼ぶたび、少女は少しずつあの空へと消えていった。
僕はただ、それを呆然と見ていた。
何も守れなかった。何も届かなかった。
でも、たった一度の全てを手に入れ、全てを失った、永遠の夏だった。
――(ここから)――
僕は、夏っていうものがあまり好きではない。
理由は、じめじめとしていて暑いからだ。
みんみんと鳴き続ける蝉の声も、体に張り付いてくる制服のシャツも、自分を苛立たせるだけだ。
おまけに今年は学力テストの結果があまりにも酷かったとかなんとかでPTAから教育委員会にたくさんクレームが入った。という訳で夏休みのはじまりがうんと遅い。学力が酷かったのは上の代だけだというのになぜこっちまで巻き添えを食らう必要があるのか。
ここまで暑いとたった20分の登下校すらも鬱憤に思う。これでまだ朝8時だ。昨今の気温というのはどこかおかしいと思う。
ようやく校門が見えたことに喜ぶ自分と、ここからが長いのだと絶望する自分がいた。たったの300mとはいえ、30度を超える炎天下の中、沢山の荷物を持ちながら歩くことは厳しい。
その時だった。
「やっほー!!久しぶり!ターツーキーくん!」
後ろから知らない声がした。妙に高い声だった。だけど不快感はせず、むしろ心地よさすらも感じた。
当たり前のように知っている前提で話されているが、僕は誰か全くと言っていいほど思い返せない。
振り返るとそこに立っていたのはベージュ色の髪色の少女だった。こっちをじっと見つめてニコニコしながらぴょんぴょんとはねている。赤色のリボンのセーラー服を着てるということは、同じ学校の、それも同級生のはずだ。背丈は僕よりも大分低く、制服を着てなかったら小学生だと思ってただろう。
こんなに目立つ子、いくら周りに興味がなかったとしても知らないわけがない。
「ねえ、タツキくんはそらの名前分かる?」
「……自分で言ったじゃん。そらって。」
「あー…そっかー!間違えちゃった!」
僕は置いてきぼりにされた―というか、脳が追いついていなかった。
「おはよう!そらちゃん!」
「おはよー!みんなー!」
周りの人たちも何事もなかったかのように話しかけている。その光景が怖かった。
もしかして、おかしいのは自分の方なのではないか。
「タツキくん!早く教室行こうよ!」
「あ…うん、そうだな」
こうして僕達は教室に向かった。
何一つ納得いってないままに。