盗賊マリー
月明かりに濡れる白刃の刃
今宵も私の生きる糧
血しぶきに残存証明
私のために死んで?
理由なんて要らない
生きるために掻き切る
瞬間は、刹那──
駆けめぐる逡巡
私が幸せに生まれてたのならって
せめて祈るよ
さよなら──、って。
依怙贔屓でも良い
私に力くれたのなら
痛みも知らずに刃振るう
生き残るためのすべて
リアルなら死んでるし
仮想ならゲームオーバー
どっちが良い?
私に滑る柔らかい肌
貴方は何も知らないのかも
心奪うなら
まずは私の命奪ってよ
幾千もの金貨奪っても
私は盗賊
満たされない
転職シてみる?
譲らない寡黙な勇者
世界を変えるって言うの?
出会った矢先
すべてを奪う前に
魔王獲るって?
突きつけられた喉元の小刀
「お前には、何が視える──?」
目が病んでた
勇者って、噂より暗い
闇堕ちしてんのかな
盗む前から
握りしめられた手首
「お前──、その能力貸せよ?」
何それ──。
高鳴る鼓動は
ギルドの木製の壁の内に潜む
「パーティー成立?」
紹介屋の店主の声が聞こえる
「嫌、そんなの無理だって」
焦る私。
それはそうだ。
今まで独りでやって来た。
全部、盗むってんなら話は別だけど?
「輪廻覚醒──。それでも良い……」
「何それ……」
ソイツが見せた魔法の宝玉
剥奪する前に、抱きしめられる私
「お前には、俺が必要だ──」
嘘でしょ?
身体中から能力が抜ける
囁かれる耳もと。
勇者の熱い吐息がかかる。
──抜け落ちる。
私の唯一の存在証明──。能力「【略奪絶対王】」。
「これから、どうでも良い世界、獲ろうってんだ。魔王を殺る前に、お前を喰いてぇ」
そんな理不尽なこと言われて連れ込まれる宿屋。
「嫌……」
それでも、良いかもなんて何もかも
私は、勇者に捧げて
この世界で
初めて仲間を組んだんだ。
大事な私の心、勇者に盗まれて──




