第8話【新国家結成、新たなる問題】
国民候補を探すついでにクエストを達成したイージス達は、 街に戻りギルドに成果を提出した。
「これが全部だ」
「な……何ですか……この魔物の死体の量は! ? 」
『全部イージス様とザヴァラム様がやったのか! ? 』
『流石はダイヤ等級と金等級の冒険者……』
受付の人は慌てて鑑定士に鑑定を頼んだ。
「こ、 これは……かの伝説に記されていた、 暴食のバジリスク! 」
伝説だったんだ……このバジリスク……
「これは相当な価値がありますぞ! 少なくとも金貨10万……いや、 金貨50万枚は下らないですぞ! 」
金貨50万枚! ? 聞いただけで解る……これは相当高額だ……
その後、 イージス達には金貨60万枚を贈呈された。
どうしよう……こんな金使いきれないぞ……国の予算に宛てるか。とりあえず収納魔法でしまってと……
「やはりダイヤ等級の方は凄まじいですね……その収納魔法だって一部の冒険者にしか使えない高等技術なのに……」
収納魔法もかよ!
イージス達は面倒なことにならない内に退散した。
……………………
「……あれが噂の……早速国王に報告しなくては……」
ギルドに謎の金髪の女がイージス達を見ながらそう言った。
……………………
事を済ませ街を後にしたイージス達はオベロニクスに戻った。
するとそこには大勢の亜人族や魔物達がその地に巨大な城下町を建設していた。
『王がお戻りになられたぞ! 』
『あれがイージス様! 』
うぉぉぉぉぉぉ! ! ! すげぇ、 この短い時間でこんなにも国民を集めたなんて!
その数、 実に一万!
イージスが感心していると目の前に守護者達が集まってきた。
『イージス様、 国民を集めて参りました。』
「良くやった、 それじゃあ他の話に移ろう。皆城に集合だ! 」
『はっ! 』
そしてイージス達は国民達に挨拶をしながら城に向かった。
城の中庭ではエメが帰りを待っていた。
(お帰りなさい、 イージス様! )
「ただいま、 エメ」
「イージスさん、 私はエメと一緒にいますね」
「あぁ、 話が終わったら呼ぶよ」
ミーナはイージス達と分かれ、 エメと一緒に待つことにした。
イージス達は城の会議室に向かった。
「さてと、 早速話すがこの国……ちょっと名前を変えないか? 」
「名前……ですか? 」
レフィナスが不思議そうに言う。
そもそもこの国の名前が物騒なんだよなぁ……何だっけ、 死域 オベロニクスとか? 邪神の王とか? 俺はあまり悪い奴みたいな名前は嫌なんだよ。ここに来てからの目標は人々を守ること。そして誰よりも強くなること……いや、 これは達成したと言うか……まぁともかく!
「そうだ、 俺はこの国を良い国にしたいと思っている。だからそれの第一歩として、 国の名前を変えようじゃないか」
すると守護者達は
「それは良いですな! 私も死霊魔剣士から聖霊魔剣士に名を変えたいと思っていたんです! 」
「私も……深淵魔術師などと物騒な名前はあまり好きではなかった……」
「私はイージス様がお望みとあらば喜んで♡」
「わ、 私も……イージス様がお望みなら……」
皆も賛成しているところだし、 問題は無さそうだな。とすると……新しい国の名前はどうするかぁ……
確かオベロニクスって昔は別の文明が栄えていたんだよね? 文明の名前さえ分かればなぁ……
「うーん……なら新しい国の名前はどうするかぁ……」
イージスが悩んでいるとアルゲルが
「イージス様……ならば昔この地に栄えていた文明の名前を取ってみてはいかがでしょう? 」
「それが分からなくてなぁ……」
「文明の名前はメゾルポルテでごさいます……」
「……えっ! ? 」
アルゲル知ってたの! ? ザヴァラムも知らなかったのに……凄い知識量だな……
メゾルポルテ……メゾルポルテか……オベロニクス……メゾル……メゾロニクス……メゾロ……
イージスが考えに考えた名前は……
「よし、 メゾロクス、 メゾロクス王国にしよう! 」
「おぉー! 素晴らしい名前ですな、 イージス様! 」
「オベロニクスとメゾルポルテの名前を交えるとは……流石でごさいます」
皆は賛成みたいだし、 よし、 これからこの国はメゾロクス王国だ!
「よし、 これからはこの国はオベロニクス改め、 神聖国 メゾロクス王国だ! 」
「となればこの国の王も邪神の王ではなく……」
ガムールが言いかけたとき、 ザヴァラムが言った。
「聖剣王……邪神剣は聖神剣に名を変え、 その剣を従えし正義の王……聖剣王 イージス様……! 」
せ、 聖剣王か……何かちょっと恥ずかしいな……
「我らが王の名にふさわしい、 流石はザヴァラム! 」
「……聖剣王か……良い、 良いぞ! 」
「元から美しいイージス様が、 更に美しくなる……はぁぁあ、 感激……♡」
「はははっ! 素晴らしいぞ! 我らが王、 聖剣王 イージス様! 」
「わ、 私もカッコいいと思いますぅ……! 」
守護者達は歓喜した。
うんうん、 いよいよ本格的な国になってきたぞ!
にしても……
「アルゲル、 君の知識量は凄いな……」
「勿体なきお言葉……私はただ世界中の古代知識を集めていただけなので……」
アルゲルは深淵魔術師とか言ってるけど全然そんな感じじゃない。この際職業とか変えられないかな……
イージスがそんなことを考えていると
(報告、 国名を変えたことにより守護者達と主様の職業がランクアップしました。)
えっ、 職業がランクアップ! ? 職業名が変わったってことか?
すると守護者達が
「なっ、 わ、 私の職業名が……堕天使から聖天使になっている! 」
「私もですわ! 超魔人から超聖人に! 」
「俺もだ! 聖霊魔剣士になっているぞ! 」
「むっ……我も深淵ではなく神聖魔術師に変わっている……」
「わ、 私も黒血暗殺者から浄血暗殺者に……! 」
守護者達の職業が変わっている! 驚いて少し素に戻ってるし、 ザヴァラムは……
「私は覇竜戦士のままですね」
元から悪に関係する職業だけしか変わってないのか……でも何だかちょっと安心した。
そしてイージスも自分の職業を確認した。
「俺は……覇王……」
何かまた凄くなっちゃったよ……まぁいいか……
それはそうと……国の名前を変えただけでこんなにも変化するのか……凄いな。国民達も変わってたりしてな……
(報告、 メゾロクスの民達のクラスがアップしました。)
予感的中……
マジかぁ……国民達のクラスがアップしたってことは強くなったということか? 勢力増強にもなるな。
そしてレフィナスは一つ咳払いをし
「ではイージス様、 次の計画を……」
「あぁ、 そうだなぁ……」
イージスが次の計画について考えているとアルゲルが口を開いた
「次の計画についてなんですが……私に一つ提案が……」
「何だ、 提案って? 」
「はい、 実は我が国は今……エネルギーに問題がありまして……」
「エネルギー? それって魔力ってこと? 」
「左様でごさいます……」
魔力に問題が? 一体何が……
アルゲルは話を続ける。
「今、 我が国は生活用の魔法具……または兵器を動かす為の魔力が足りないのです。どうにかして膨大なエネルギー源を見つけることができればいいのですが……」
俺が住んでいた世界に例えると電気みたいなものか……となると発電所的な物が造れれば、 もしくは丁度いい物が見つかればいいんだよな?
「うーん……」
イージス達が頭を抱えていると
(報告、 メゾロクス中央部、 地下50メートル地点にて膨大なエネルギー反応を確認しました。)
えっ、 何でいきなり?
謎の声がイージス達の悩みを解決できそうな物を探し当てたのだ。
もしかして……探してくれたの?
(はい、 主様のサポートをするのが私の役目ですので。)
そうか、 ありがとう。
「皆、 メゾロクス中央部の地下に膨大なエネルギー反応があるって謎の声が言っていた。そこに行けば俺達が求めている物があるかも! 」
「謎の……声、 ですか。まぁでも、 イージス様が言うのであれば行ってみましょう」
レフィナスがそう言い、 イージス達は外にいたミーナとエメも連れてメゾロクス中央部へと向かった。
向かっている途中、 イージスは国民達の様子を見た。
皆の姿が変わっている……国名を変えただけでなのに凄いな……
そしてイージス達はメゾロクス中央部にやって来た。
「ここから地下50メートル地点にあるらしいんだ。誰か掘れる人とかいないかな? 」
イージスがそう言うと突然聖神剣が鞘から飛び出し、 高速回転をしながら地面をとてつもない速さで掘り進めていった。
「聖神剣ってこんな使い方もあるのかよ! ! 」
「でもこれで先に進めます! 」
イージス達は剣が掘った穴を進んでいった。
しばらく穴の中を進んでいくと穴の向こうからうっすらと緑色の光が見えてきた。
穴を抜けた先にあったのは……
「な、 何……だ……これは……」
「凄いな……こんな装置見たこと無いぞ! 」
とてつもなく大きな空間に緑色に輝く謎の巨大なクリスタルを乗せた何かしらの古い装置だった。
その前で待機していた聖神剣が鞘に戻った。
「何だこれ、 これが例の物なのか? 」
するとアルゲルが
「イージス様……ここは私にお任せ頂けますか? 」
アルゲルか……そうだな、 彼ならこの装置の起動方法が解るかもしれない……
「分かった、 君に任せるよ」
「では暫しお待ちを……」
そう言うとアルゲルは装置を調べ始めた。
数分後……
アルゲルが装置から戻ってきた。
「イージス様……この装置はかつてメゾルポルテ文明が使用していた超強力な魔力製造装置のようですぞ! 」
「マジか! 」
「凄い……これさえ動かせればこの国の全てのエネルギーを賄える……」
イージス達は大いに喜んだ。
おっと、 まだ喜ぶのは早い……問題は起動方法とそもそも動くのか……ということだ。
「アルゲル、 この装置は動くのか? 」
「見たところ損傷もありませんし……問題無く動くかと……」
「どうすれば動く? 」
「それがまだ分からないのです……装置にはヒントのような古代文字が刻まれていましたが……私でも解読が不可能でした……」
アルゲルでも解らない古代文字って……これじゃどうしようも……
その時、 イージスの頭の中である考えが思い浮かんだ。
待てよ……これならいけるかも!
思い立ったイージスは装置の前に来た。
「アルゲル、 その古代文字ってどこに? 」
「はい……こちらでごさいます……」
アルゲルが指す場所には確かに意味不明な古代文字が刻まれていた。その文字の下には手形のようなものも刻まれていた。
俺の予測が正しければ……鑑定!
(スキル、 鑑定が発動します。)
するとさっきまで意味不明だった古代文字が翻訳されて見えた。
やっぱり、 鑑定はこういう時にも使えるんだ! あっ……だったら最初から自分でやれば……いやいやそんなこと考えちゃ駄目だ! 部下を活躍させてこその上司だ!
イージスはそんなことを思いながら文字を読んだ。
「“この地の覇王……手を捧げし時……恵みの力……目覚めん……”」
「なっ、 イージスさん、 読めたんですか! ? 」
「いや、 まぁ……たった今読めるように……」
「流石はイージス様! 」
この言葉の意味……きっとこの手形に関係してるんだよな……それに覇王って……
イージスは少し考えた
……そうか、 そういうことか!
イージスは自分の手を装置にある手形にかざした。
この地の覇王つったら俺の職業、 覇王しか無い。そして手を捧げるって言ったらやっぱりこの手形だろ。
すると手形が突然光だし、 空間内が大きく揺れ始めた。
「な、 何! ? 」
「まずいな……皆外に出るんだ! 」
ガムールが皆に指示を出し、 イージス達は急いで外に出た。
外でも地面は揺れており、 国民達が大騒ぎしていた。
『な、 何だ何だ! ? 』
『地震か! ? 』
するとイージス達が出てきた穴の周りからヒビが入り、 それはどんどん大きくなっていった。
その内メゾロクス中央部には大きな穴が空いた。
「い、 一体何が……」
イージス達が困惑していると
“ゴゴゴゴゴゴ……”
大きな穴の奥からあの装置が地上に昇ってきたのだ。そして装置に乗せられていたクリスタルが強く輝きだし、 そのまま沈黙した。
(報告、 メゾロクス中央部にて大規模な魔力製造装置の稼働を確認、 メゾロクス一帯に膨大なエネルギーの供給が可能となりました。)
「やったぞ、 装置が動いた! 」
「左様ですか! 」
よっしゃぁぁぁぁああぁぁ! ! ! !
これでエネルギー問題は解決だ! あとは守護者達に任せても大丈夫だよね? ……いいん、 だよね?
イージスはザヴァラムを見た。
「……」ニコッ
「ッブ……! 」
ヤベッあんな表情のラムは見たこと無かったから思わず……でも任せてもいいってことだよね?
するとレフィナスが
「ではイージス様、 後のことは私達にお任せを……」
「おう、 頼んだぞ。……じゃあとりあえず今日はもう遅いし、 帰って寝るか」
『はっ! 』
そしてイージスとミーナは城に戻り、 この日の疲れを癒した。
守護者達は国の警備をすると言ってそのまま外に出ていった。
城内にて……
「守護者の皆は大変だなぁ……こんな夜遅くまで警備なんて……まぁそれが仕事だしな……今度皆に休日でも取らせるか」
イージスは国の責任者としての自覚が芽生えてきたのだった。
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とある城にて……
「そうか、 例の冒険者は見つけたか……」
「はい、 いかがなさいましょう……国王? 」
その城の玉座に座る国王、 そしてその前でひざまつく一人の女騎士……
「特徴は分かるか? 」
「はい、 髪は白く、 瞳は赤く染まり、 右目には傷があり、 服装は黒に赤のラインが特徴的なコートのような服を着ており、 その中身には腰の両脇に剣を二つ装備しており、 あとは背中にそれよりも少し大きな剣を背負っておりました」
「うむ……ではまずは様子を観察せよ、 国に対する敵意を感じたならば即座に殺せ」
「御意! 」
そう言うと女騎士は玉座の間から出ていった。
……………………
(……殺せ、 か……私にあんな化け物、 殺せるだろうか……いや、 カロスナのギルドで見かけた時点で私は気が付いているのかもしれない……)
その女騎士はイージス達とすれ違ったあの女であった。そしてその女はこう呟いた……
「あの男は……誰にも倒せない……」
と……
続く……




