第7話【拠点作り、失われた国】(後編)
オベロニクスにて守護者と一旦別れたイージス達は再びカロスナに戻った。
さて、 国民に関しては守護者達に任せられるとして……こっちはこっちでパーティ仲間を見つけよう。
現在のイージスのパーティは三人、 イージスはあと二人程欲しいと思っていた。
……最高だ……
何が最高だって? そりゃ……
「何だか優秀な部下を持った社長になった気分……」
イージスは小声で無意識に呟いた。
「イージスさん、 どうかしました? 」
「あぁいや、 何でもない」
危うく目的を忘れるところだった。
国民候補探しと、 あとはパーティメンバー探しだな。
イージスはギルドでクエストを選んだ。
丁度良さそうなクエスト無いかなぁ……
イージスが悩んでいると
「イージス様、 これはいかがでしょう? 」
「だから勝手に……ん? 」
ザヴァラムが手に取ったのはカロスナ街から東の森に住む人食い大蛇の討伐クエストだった。しかしこれは噂話だと言って誰も手に取ることは無かったものらしい。
大蛇が住んでいるのは森の奥にある神殿……大蛇か……少し興味があるな。目的は少し後回しになっちゃうけど行ってみるのもいいな。
「よし、 これに行こう」
「はい! 」
イージス達はクエストを受注し、 東の森に向かった。
森に向かっている途中、 イージスはあることが気になった。
そういえばオベロニクスって廃墟が多かったけどあそこって昔は何だったんだろう?
「ラム、 オベロニクスって昔何があったんだ? 」
「はい、 オベロニクスにはかつて人知を超えた文明が存在していたのです」
そんな文明が……でも何故滅んだんだ?
ザヴァラムは説明を続ける。
「その文明の名前は今になってはもう分かりませんがそれはとても平和で人智に溢れた文明だったそうです。滅んだ原因としては我ら邪神軍が現れ、 ガイン様直々に滅ぼしたからです」
やっぱり邪神軍の仕業か……可哀想に……
もしかするとその文明の遺産がまだオベロニクスに残っているかもしれないな。後で調べるか。
そうこうしている内にイージス達は森の中に入っていた。
「いつの間にか森に入っていたな。早く神殿を見つけよう」
でも神殿を探知で見つけることはできない。でもその神殿に目的の大蛇がいるなら話は別、 蛇を探知しよう。超探知……
(スキル、 超探知が発動します。)
おぉーいるいる、 すぐ近くだな。
イージス達は探知した方に向かった。
そこには古びた神殿が佇んでいた。中に入ると地下に続く階段を発見した。
「イージスさん……」
「あぁ、 分かってる……大量の魔物の反応がビンビンしてる」
だが俺なら問題ないな……しかしこの神殿、 ただの神殿じゃないぞ……大蛇はこの奥にいるみたいだが、 一体何なんだこの神殿……
するとザヴァラムが
「恐らくこの神殿、 ダンジョンになっているのかと思われます」
ダンジョンか……そんなものもあったんだな。ゲームとかでは良く攻略してたっけなぁ……それが今目の前に本物としてあるんだ。
イージスは少し楽しみだった。
「まぁ俺とラムがいれば問題は無いでしょ。ミーナ、 俺達の側から離れるなよ」
「は、 はい! 」
そしてイージス達はダンジョンの中へと入っていった。
中はとても暗く、 前が見えない程だった。
参ったなぁ……俺とラムは暗視のスキルを持っているから見えるけど、 ミーナがなぁ……
「い、 イージスさん、 いますよね? 」
「あぁ、 いるよ。けどこれじゃ先に進めないなぁ……よぉし! 」
手当たり次第に使ったことのない魔法を見てみよう。……お、 これが丁度いいんじゃん?
超級光魔法、 太陽の子……
するとイージスの手から小さな光輝く玉が出てきた。その玉はイージス達の周りを明るく照らした。
「イージスさん、 これって……」
「超級光魔法だよ。多分これも伝説級でしょ? 」
「は、 はい……もう何だかイージスさんって何でもありですね……」
ミーナは苦笑いしながら言った。
まぁ実際そうだね……
イージス達はダンジョン内を進んでいった。
しばらく進むと少し開けた部屋に出た。
「何だここ? 通路が沢山あるぞ」
目の前にはいくつもの通路が繋がっていた。イージス達はどうするか迷っていると……
「キキキキキキッ! ! 」
「な、 何だ? 」
大量のコウモリが天井から降りてきた、 そしてそのコウモリは一つに纏まり人の姿に変わった。
うわぁ……これって吸血鬼だよね……しかもこんなに沢山……
「久しぶりのご馳走が入ってきたなぁ」
「お前達の血はどんな味だ? 」
「イージス様、 ヴァンパイアです」
「ど、 どどどどどうするんですか! ? 」
「まぁ落ち着け」
この人達意外と知性はありそうだな……国民にできないだろうか……でも敵意ビンビンだしなぁ……
その時、 ザヴァラムはあることを口にする。
「ヴァンパイア族には必ず長が存在するはずです。そいつを潰せばこの者達を支配下に置けるかもしれません」
ザヴァラムナイス! となると……能力透視……
(スキル、 能力透視が発動します。)
イージスは大量のヴァンパイア達から一番高いステータスを持つ個体を探した。
……いた! あいつだけ他のとレベルが違う!
「ラム、 一番奥にいるやつだ! 」
「承知致しました」
「むっ、 させるかぁ! ! 」
ヴァンパイア達は一斉にイージス達に襲いかかる。
なるべく殺したくはない、 結界魔法、 物理耐性結界、 魔法耐性結界……
イージスは結界を出現させヴァンパイア達を全員閉じ込めた。
「な、 何だこれは! ? 」
「くそ! 何故破れない! 」
「他の奴らは閉じ込めた、 あとはあいつだけだ」
取り残されたヴァンパイアの長は慌ててコウモリの姿に変身し、 ダンジョンの奥へ逃げようとする。
しかし……
「逃がさない……超爆炎魔法! 」
ザヴァラムは手を前に出すと突然大量の炎が吹き出てきた。炎は壁を破壊し、 通路ごと逃げるヴァンパイアの長を跡形もなく消してしまった。
うっひょぉ~ラムの魔法は初めて見たけど凄いなぁ……まぁこれでひとまずヴァンパイア達は大人しくなったかな?
イージスは結界を解除した。するとヴァンパイア達はイージスの前にひざまついた。
『ヴァンパイアキングを打ち倒せし新たなる王よ、 先程の無礼……どうかお許しを……』
よぉし成功だ! これで国民が増えるぞ!
「許そう、 そして君達に俺の造る国の国民になって欲しいんだが……いいかな? 」
……あっ、 でも確かヴァンパイアって太陽に……
「はい、 王がお望みとあらば喜んで! 」
「でも君達太陽とかって大丈夫なの? 」
「はい、 私達ヴァンパイア族の長が人間に変わった今、 私達の弱点の太陽は克服されました」
へぇ……率いる者が変わるとその部下達の能力も変わるのか……少し勉強になった。じゃあとりあえず皆にはオベロニクスに移動をしてもらおう。
「じゃあ君達にはオベロニクスに移動してもらおう」
「はっ、 では行って参ります! 」
そう言うとヴァンパイア達はコウモリに変身し、 ダンジョンから出ていった。
案内は……他の守護者に任せるか……
イージス達は気を取り直してダンジョンを進もうとした。
「さて、 進むか……あ……」
ダンジョンの通路は全てザヴァラムによって破壊されており、 もはやただの一本道になっていた。
「うん、 まぁ結果オーライだね……」
「も、 申し訳ありません……」
イージス達は通路を進んだ。
その後も沢山の魔物に出くわしたがイージス達は難なく進んでいった。残念ながら先程のヴァンパイア族以外の知性を持つ魔物は見つからなかった。しかし倒した魔物達はギルドに提出すれば金になる。イージスは倒した魔物達を収納魔法を使い回収していった。
そしてイージス達は最終階層へたどり着いた。
「ここが最終階層だな」
「す、 すいませんイージスさん……私、 足手まといですよね……」
ミーナが落ち込んでいる。
確かに俺達だけで戦っていてミーナは全然活躍できていなかった……でもこれはミーナが悪いんじゃない……そもそも回復系の魔法は自分で使えちゃうし、 治癒魔導師のミーナでは出番が無いのは必然的になってしまうからな……治癒魔法の他にも攻撃系の魔法を覚えられればそこそこ活躍できると思うんだがなぁ……まぁそれは後で考えるとして……
「気にしないで、 君は悪くない。それよりも……」
「イージス様、 例の大蛇が近くにいます」
クエストのメインターゲット……大蛇がいる所まで来た。
すると向こうの岩影から巨大な蛇が現れた。その大きさはおよそ50メートル程はあると見た。
おぉ~来た来た、 こいつは売れそうだな。
「イージス様、 ここは私が殺りましょうか? 」
「いや、 俺が殺る」
「承知致しました」
イージスは大蛇の前に立った。
これは……バジリスクか? 鑑定……
(スキル、 鑑定が発動します。)
『バジリスク、 蛇種族の王と呼ばれる存在、 口から吐く毒は人間を一瞬にして液体にしてしまう。』
やっぱりバジリスクだったか。なるべく綺麗な状態で残したいからなぁ……そうだ、 そんな時はこの魔法だ!
するとイージスはバジリスクの頭上に瞬間移動し、 バジリスクの頭に手を付いた。
死属性魔法、 強制昇天……
「キシャァァァァァッ! ! ! ! 」
バジリスクは断末魔をあげ、 そのまま倒れた。バジリスクは死んだのだ。
「えぇーーーー! ! ! イージスさん一体何をしたんですか! ? 」
「体はそのまま綺麗な状態で殺せる死属性魔法だよ」
「流石ですイージス様! 」
「もはや触れただけで殺すところまで……もうダイヤ等級のレベルを越してますよ……」
「まぁとりあえずクエストは達成したし、 街に戻って早くやること済まそう」
「そうですね」
イージスはバジリスクの死体を収納魔法で回収し、 ダンジョンを出て街に戻るのだった。
続く……