第14話【帝国略奪任務】
ザヴァラムが帰ってきてから翌日、 イージスがメゾロクスの城下町を散歩していた。
ほぉ……前よりも建物が増えたかな、 国の発展を見るのって結構楽しいな。
イージスが街の建物を眺めていると
「あっ、 イージス様! 」
「ん? 」
十二天星騎士団が話しかけてきた。
「あれ、 十二天星騎士団の皆さん、 どうしてここに? 」
「今日は国王陛下からの命により、 貴方様に頼みたい事がありまして参りました」
頼みたい事、 何かまた面倒くさそうな予感がするなぁ……
「そうか、 まぁとりあえず城へ……」
そしてイージス達は城へ向かった。
……………………
「……それで、 頼みたい事って? 」
「はい、 実は……聖神国 メゾロクスに、 ヴェル・ハザード帝国の略奪を依頼したいのです! 」
「……えっ? 」
えぇ~……邪神軍壊滅、 レッド・アイズ壊滅の次は帝国略奪かよ! てかヴェル・ハザードっていかにも大軍勢とかいそうじゃん、 面倒くさ! ! !
……いや待てよ、 これはいい機会だぞ……メゾロクス軍の強さを確かめることができるかもしれないな……いや、 にしても!
「いやいや、 ここは聖神国だよ? 何と言うか……国の略奪とかそういうことは……ねぇ? 」
「いえ、 ヴェル・ハザードは今まで多くの悪事を犯してきたのです」
「例えば? 」
「はい、 異常な程の奴隷制度……凶悪犯罪者の放置……黒魔術師の大量生産……そして……魔王軍への支援行為、 等です……」
……魔王軍、 奴隷制度……
それを聞いたイージスは突然とてつもない覇気を放った……
それを感じた十二天星達は固まった。
「っ……何という覇気……」
「う……動けない……」
隣に待機していた守護者達も動けなくなっている。
「い、 イージス……様……? 」
「…………ヴェル・ハザード帝国……絶対に許せない……」
イージスは目の色を変えて言った。
「で、 では! 」
「あぁ……聞け、 これより我が国メゾロクスは、 ヴェル・ハザード帝国の略奪依頼を受け入れる! 」
イージスは玉座から立ち上がり、 宣言した。
俺が一番許せないことをあの帝国は全てやっている……このままにしておいてなるものか……!
「守護者達よ、 直ちに軍を用意せよ! 」
『はっ! 』
そして守護者達は玉座の間を後にした。
……覚悟しておけ、 ヴェル・ハザード帝国……今から直接襲撃してやるからな……!
「い、 イージス様……」
「後のことは俺達に任せろ……君達はヒュエルに戻ってベルムント国王に報告してくれ! 」
『はっ! 』
十二天星達もメゾロクスを後にした。
あとは帝国に宣戦布告だな……どうやってやるか……よし……
イージスは自分の部屋に入り、 剣を手に取って外に出た。
外では既に軍隊が準備を整えて待っていた。一番前の列に守護者達がいる。
「イージス様、 準備が整いました」
「よし、 行くぞ! 」
『うぉおおぉぉぉおぉぉ! ! ! 』
兵士達が一斉に掛け声を上げた。
そしてイージス達は十二天星達に教えてもらったヴェル・ハザードの方角へ向かった。
・
・
・
その頃、 ヴェル・ハザードの首都 バラナルハでは……
「た、 大変です、 ダブライル国王! ! 」
ヴェル・ハザードの城の玉座の間に兵士が押し掛けてきた。
「どうした、 そんなに慌てて? 」
「この街に謎の軍勢が向かって来ているのです! 」
「何だと! ? 」
ダブライル国王が玉座から立ち上がって驚いた。
「すぐに軍隊を用意しろ、 迎え撃て! 」
「は、 はい! 」
・
・
・
バラナルハから数キロ離れた場所でイージス達は止まった。
……わざわざ偵察隊に見つかるように通って来たが……ちゃんと見つかっただろうか? まぁこれくらいの騒ぎになれば国王も出てくるはずだ……
するとバラナルハに潜入を任せられていたロフィヌスの暗殺部隊が帰ってきた。
「イージス様、 作戦通り国王がこちらの存在に気づいた模様です」
「そうか、 あとは相手が来るまで待つか……」
待つこと二時間……
バラナルハの壁の前に大勢の軍隊が出てきた。
うわぁ……凄い数だな……1万はいるか、 国王もその中にいるようだな……
「皆、 相手が現れた……くれぐれも死なないようにしてくれよ……よし、 ガムール! 」
イージスはガムールに指示を出した。
「承知、 皆の者、 出撃だ! 」
『うぉおおぉぉぉおぉぉ! ! ! 』
そしてヴェル・ハザード側も……
「あれが謎の軍勢か……面白い……やれ! 」
『うぉおおぉぉぉおぉぉ! ! ! 』
そして戦争が始まった。
……うぉ~……凄いな、 俺達の軍隊の方が圧倒的だ……死ぬどころか、 傷すらも付けられてないよ……こりゃ勝ったな……
イージスが勝利を確信した時、 ヴェル・ハザード軍から感じたことのない強い気配を感じた。それも六つ程……
「むっ……まずいな……一旦軍隊を引かせろ」
「えっですがイージス様、 このままでは攻め込まれますぞ、 強い気配も感じますし……」
ガムールがイージスに言う。
「分かっている……そこでガムール、 君の強さをここで見てみたい……お願いできるか? 」
するとガムールは納得した顔で
「なるほど……守護者の強さを確かめてみたいのですな、 お安いご用! 」
そう言うとガムールは前線に出ていった。軍隊には一時撤退をさせ、 野原の真ん中にガムールと強い気配を放つ六人の騎士達、 そして少なくなったヴェル・ハザードの兵士達だけが残った。
「……何だ貴様は? 」
一人の騎士が問う。
「俺は聖神国 メゾロクスの至高なる聖剣の王、 イージス様に仕える守護者の一人……ガムールである! 」
その名前を聞いた騎士達が驚いた顔をした。
「が、 ガムールだと……まさかあの伝説の……」
ガムールの伝説とは……それは後々語られることとなる……なぜなら今は騎士達との戦いが始まろうとしているからだ……
「さて、 君達の名前を聞きたい」
ガムールが騎士達に名前を聞いた。
「私はメザルットだ」
「我はガスダート」
「俺はグロバロートだ」
「ヘルドだ」
「私はターミュス」
「我輩はダザールである」
騎士達は皆黒い鎧を着ている。
「そうか、 皆良き名だ……さて、 始めるとしようか……」
「一対六でか? 」
ガムールは黙って指で誘った。
それを見た騎士達は剣を抜いた。
「いい度胸だ……」
そして六人全員がガムールに襲い掛かる。
しかしガムールは余裕の表情で剣を避けていく。
なびくマントにすらかすらない程素早く避けるガムールに騎士達は動揺する。
「な、 何故当たらない……」
「速すぎるわ! 」
「どうしたどうした、 それで終わりか? 」
ガムールが騎士達に挑発する。それに腹を立てたメザルットが
「避けてばかりではなく攻撃してみろ! 」
それに対しガムールは
「ほぉ……ではもう殺ってもいいということかな? 」
その瞬間、 ガムールから物凄い殺気が溢れ出た。それを感じた騎士達は恐怖で固まってしまった。
そしてガムールは剣を抜いた、 その剣には謎の文字が刻まれており、 全体が真っ黒であった。
「では……行くぞ! 」
そう言うとガムールの姿が突然消えた。
「なっ、 消えた! ? 」
すると騎士達の背後にガムールが現れ、 彼は剣を横に振った。剣を振った瞬間物凄い風圧が起こり、 騎士達は吹き飛ばされた。
「ぐぁっ……! ! 」
「な、 何なんだ……雰囲気がさっきとは別物だぞ! ? 」
ガムールは黒いオーラを纏い、 目が銀色に光っている。心なしかマントまでも黒く染まっている様に見えた。
そしてガムールは再び姿を消した。
騎士達は背中合わせにして武器を構えた。
「気を付けろ……次はどこから来るか分からないぞ! 」
しばらくするとガムールが騎士達の前に姿を現した。するとガムールは剣をしまい、 そのまま自軍の方へ戻っていった。
「お、 おい! 決着を付けないのか! ? 」
騎士達が呼び掛けるとガムールは振り向きこう言った。
「……もう決着は付いたよ」
「な……何を言って……っ! ? 」
すると騎士達の首が一斉に落ちた。血は噴水の様に吹き出し、 残された体はバタバタと倒れた。
……ガムールは既に首を斬っていたのだ。
それを見ていた兵士達は恐れを成して逃げ去っていった。
自軍に戻ったガムールはイージスに報告した。
「イージス様、 六人の騎士は殺しました」
「全部見てたよ……凄いな、 ガムール」
「勿体無きお言葉です……! 」
するとイージスは椅子から立ち上がり、 守護者達に告げた。
「俺はこれから相手の大将を打ち倒してくる、 皆はここで待機していてくれ! 」
『はっ! 』
そしてイージスはヴェル・ハザード軍の方へ向かっていった。
……こういうのって王様を殺せば勝ちなのかな? 俺はこういう戦争とかの経験とか無いしなぁ……まぁとりあえず一番奥にいる偉そうなやつを倒せばいいか。
「聖神剣……」
イージスは聖神剣を抜き、 ダブライル国王がいる方へ突っ込んでいった。
向かって来ているイージスを見つけたダブライル国王は慌てて
「な、 何なのだあいつは……は、 早く守れ、 我を守るのだ! ! 」
「し、 しかし兵士は皆逃げてしまいました! 」
横に立っていた執事が言った。
そうこうしているうちにイージスはダブライル国王の至近距離まで到達した。
そして……
「これで終わりだぁ! ! 」
イージスは高く跳び、 聖神剣を上から勢いよくダブライル国王の心臓に二本共突き刺した。
「が……ぁ……」
ダブライル国王は絶命した。イージス達は戦いに勝利したのだ。
遠目で見ていた守護者達はイージスの勝利を確信し、 歓喜した。メゾロクスの兵士達も大いに喜んだ。
「我らの勝利だぁぁ! ! 」
『ワァァァアアァァ! ! 』
その頃、 イージスは
……以外とあっさり勝てちゃったな……俺達が強過ぎたのか……まぁ何がともあれこれでヴェル・ハザードは壊滅したな。あとは国内にいる犯罪者達の処理と黒魔術師達の確保だな、 これはロフィヌスに任せるか。
イージスがそんなことを考えているとダブライル国王の横に立っていた執事がひざまづいた。
「新たなる王よ……私を殺すのであればどうぞ……」
この人は王様の指示を聞いていただけだしなぁ……罪も無い人を殺すのは俺の意に反する。
「いや、 俺は無闇に人を殺さないから……仲間になってくれるならそれでいいんだよ」
「はい、 ありがとうございます……イージス様に永遠なる忠誠を……」
ち、 忠誠って……まぁいいか……
・
・
・
そこから一週間、 イージス達はルスヴェラート王国から多大なる感謝をされ、 ヴェル・ハザードにいた犯罪者、 黒魔術師達はロフィヌスの暗殺部隊により全て確保、 ヴェル・ハザードはメゾロクスの物となった……
メゾロクスには今まで以上に発展を遂げ、 国に訪問してくる冒険者達も現れた。メゾロクスはこれからも勢力を上げていく……
……………………
世界の裏側……魔王の城にて……
「……以上が現在の報告でございます」
玉座の間でひざまづいている獣人族の女が玉座に座る骸骨の男に言う。
「……ご苦労、 下がって良いぞ……」
「はっ! 」
獣人族の女は玉座の間を出ていった。
「……邪神軍が壊滅してから一ヶ月程しか経っていないというのに……まさかヴェル・ハザード帝国も壊滅とは……我の死期は近いのかもしれんな……」
そう呟くと骸骨の男は玉座から立ち上がり、 窓の外を眺めた。
「……彼なら……我を止めてくれるかもしれない……」
薄暗く、 地獄のような風景を眺めながら骸骨の男はそう呟いた。
……………………
その頃、 イージス達は……
元ヴェル・ハザードの城にて守護者達を集め、 イージスが玉座に座りながら話している。
「君達の働きには本当に助かっているよ、 これからもよろしく頼むよ」
「いえ、 勿体無きお言葉! 」
「イージス様のお手伝いをすることこそが私達の幸せでありますわ♡」
「存分に私達をお使い下さいませ……」
守護者達はひざまづきながら言う。
……まだ終わりじゃない、 この世界にはまだまだ多くの悪が存在する……その原因となっているのは……魔王軍……だな。
そしてきっとそこまでの道には沢山の壁が待ち受けているはずだ……
「……楽しみだ……」
イージスは思わず呟いた。
するとザヴァラムが
「イージス様、 次はいかがなさいますか? 」
「……そうだな……よし、 俺はしばらくここを空ける、 冒険者としての旅をしたいからな。守護者達はその間、 国の管理を任せる! 」
『はっ! 』
そしていつか……この世界に……平和を……!
二章へ続く……
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。この物語はまだ続きますのでよろしければ第二章も読んで頂けると嬉しいです。