第13話【ドラゴン達の問題】(後編)
前編の続きから……
「ここが我々の拠点だ、 毎回場所を変えているからバレる心配は無い」
ふむ……早速潰すとするか……
ザヴァラムがそこに降り立った瞬間……
「さて……ここまでの案内ご苦労だった」
「何? 」
「いやぁ……まさかこんなにも愚かなドラゴンだったとはなぁ……そろそろ種明かしとするか」
「何を言って……ッ! ? 」
するとザヴァラムは今まで隠していた魔力や威圧感を全て解き放った。
その場にはとてつもなく重い空気が漂った。
「な、 何なのだ……貴様……! ? 」
「まだ分からぬか……いいだろう、 教えてやる」
そしてザヴァラムは名乗る。
「我は……至高なる聖剣の王、 イージス様の守護者の一人……覇龍族では最強にして最恐と言われている龍……その名は……覇王龍、 ザヴァラムだ……! 」
それを聞いたジュラザムは驚く。
「ば、 馬鹿な! 覇王龍はこの私だ! ! 」
「嘘を付いているのは自分でも分かっているはずだろう? 」
「ぐっ……」
さて、 ひれ伏したままで動けなくしてしまったが……皆殺しをするのはイージス様の意に反することになる……イージス様ならどうするだろうか……
ザヴァラムは考える。
……そうだ、 イージス様ならまずはこのドラゴン達が何故暴れ回っていたのかを聞き出すだろう!
「おい、 ジュラザムよ……」
「な、 何だ……」
「何故お前達は龍の里で暴れ回っている? 」
ザヴァラムはジュラザムに聞く、 しかしジュラザムは
「……貴様が知る必要はない……貴様はこのジュラザム様が倒してくれる……! 」
「その状態でどうやって倒すというのだ? 」
するとジュラザムはある提案をしてくる。
「貴様が本物の覇王龍様なら、 人の姿でも強いはずだ! 」
なるほど……そう来るか、 確かに上位龍や覇龍族でも人の姿になると力が弱くなってしまう。だが覇王龍ならば力はそのままで人の姿でも本来の力を引き出せる……本物ならば龍の力を使えるはずだと思っているようだな。
「決闘か……よかろう」
そしてザヴァラムは威圧感を消し、 人の姿になった。
それと同時にジュラザムも人の姿になった。
「さて、 始めましょ……」
ザヴァラムは両手に大剣を出した。
超強化魔法、 身体能力、 腕力、 脚力、 速度、 武器、 魔法……
スキル、 覇龍の加護……
ザヴァラムは様々な魔法を掛け、 スキルを発動させた。
そしてジュラザムも……
「強化魔法、 身体能力、 脚力、 速度、 魔法! ! 」
「言わなければ発動できないのね……所詮は下等種か……」
「黙れ……行くぞ……! 」
するとジュラザムはザヴァラムに高速で襲い掛かる。しかし、 ザヴァラムはそれ以上の速度で避ける。そしてザヴァラムはとてつもない速さでジュラザムの背後を取った。
「……遅いわね……」
「なっ、 いつの間に! ? 」
ジュラザムは距離を取る。
「今ので私はお前を百回以上は斬れた……隙が多すぎよ……」
「くっ……ならば……! 」
するとジュラザムは両手をザヴァラムの方に向け、 詠唱を始めた。
「我が龍族を守りし覇龍よ……今ここに我の力となり……敵を焼き尽くせ……龍滅、 覇龍炎! ! ! 」
ジュラザムの目の前に巨大な魔方陣が現れ、 そこから大量の紅色の炎が吹き出てきた。
ザヴァラムの体は炎に包まれた。
「ふははははっ、 どうだ、 これこそ我の究極なる奥義! これに触れた者は何者だろうと塵すら残らん! ! 」
……しかし
「……ぬるいわね」
「なっ! ? 」
炎の中からザヴァラムの声がしたその瞬間、 炎は一瞬にして弾けてしまった。
ザヴァラムは平然とそこに立っていた。
「これが奥義なんてね、 馬鹿馬鹿しい……」
「なん……だと……! 」
するとザヴァラムは空に向かって手を掲げた。
「奥義っていうのは……こう言うことなのよ……! 」
ザヴァラムがそう言うと天に超巨大な何重もの魔方陣が現れた。
「な……超位魔法……だと…………」
「どうする、 このままだとお仲間さんと一緒にここ一帯が蒸発するわよ? 」
「うっ……」
そしてジュラザムは諦めた顔でザヴァラムの前にひざまづいた。
「参りました……どうか仲間達だけは許して下さい……」
ザヴァラムは魔方陣を閉じた。
そしてザヴァラムは改めてあの質問をする。
「それで、 何故お前達は里を暴れ回っていたの? 」
「それは……」
ジュラザムは答えた。
「我々の種族生存の為だったんです……」
「種族生存の為? 」
「はい、 我々アークドラゴンは年々に数が減ってきているのです……なので仲間を増やす為に……里で暴れ回り、 配下に着く者達を増やし、 繁殖しようとしていたのです……」
なるほど……確かに最近、 アークドラゴン達の数が減ってきているとは聞いたことがあった……中位龍達の中から魔力の高い者だけを選び、 その者と繁殖をしようとしていたのね……だけど暴れ回るだけでは誰もついてこようとしないから、 覇王龍などと名乗り、 脅していたのね……
「……分かった……事情は理解したわ、 その件は私が何とかしてあげる」
「本当ですか! ? 」
下等種であっても同じドラゴン……助けないのは私の誇りに欠けるわ……
「少し待ってて……」
ザヴァラムは剣を消し、 通信魔法でイージスに連絡をした。
(どうした、 ザヴァラム? )
「イージス様、 ドラゴン達の問題の件についてなのですが……」
ザヴァラムは今までの事情を全て話した。
するとイージスは
(そうか……それは助けない訳にはいかないな、 それじゃあどうする? )
「上位龍達は人の姿にも変われます。それにアークドラゴンなので魔法も使えるので我が国の兵力に加えてはいかがでしょうか? 」
(そうなのか……よし、 それでいこう! それじゃあいつでもアークドラゴン達を連れて帰ってきてくれ。)
「承知致しました」
そして通信は切れた。
正義というのは……こう言うことなのだろうか……まぁいいわ、 とりあえずイージス様のお許しが出た。
「お前達、 イージス様がお許しになさったわ」
「ということは……」
「そうね……メゾロクスへようこそってとこかしら? 」
アークドラゴン達は歓喜した。
でも今日はまだやることがあるわね……三日後にでも連れていきましょう。
ザヴァラムのやること、 それは……
「ただし、 しばらくは壊した里の復旧を手伝うわよ」
『はい! 』
その後、 ザヴァラム達は各地の龍の里を回り、 復旧作業を手伝った。
三日後……
《ここからイージス視点に戻ります。》
ザヴァラム達はメゾロクスに戻り、 イージスの元に向かった。
「……イージス様、 アークドラゴン達を連れてきました」
「ご苦労様、 ラム……さてと……」
イージスは能力透視でアークドラゴン達のステータスを見た。
ほうほう……レベルは200か、 中々の強さだな……兵力としては申し分ない。
イージスはザヴァラムに指示を出した。
「ラム、 このドラゴン達の訓練は君に任せるよ」
「わ、 私でございますか? 」
ドラゴンの戦闘の事ならラムが適している。人の姿の時の戦闘はガムールに任せるか……
「……承知致しました」
「あぁ、 頼むよ。じゃあ早速訓練に入ってくれ」
「はっ! 」
ザヴァラムは返事をし、 アークドラゴン達と共に玉座の間を後にした。
「……ふぅ……王様って結構疲れるなぁ……休みたい……また明日ヒュエルに行くか……」
イージスは誰もいなくなった玉座の間で独り言を呟いた。
続く……