第12話【片目の姫、 赤き瞳】(後編2)
前回からの続き……
「その……まずはありがとな……私達のことも、 兄さんのことも……」
「気にするな、 仲間だからな」
「ははっ、 仲間か……」
するとアイはしばらく黙り込む。
そしてアイは話しだした。
「なぁ、 イージス……私はこれからどうすればいい? 」
アイは迷っていた、 因縁に決着を付けた今……アイには目的を失っていた。
「うーん……アイはどうしたい? 」
「私は……」
これからはアイは自分の人生を自分で決めていかなくてはならない……誰かが決めたりとか、 誰かのためだとか……もうそんなことを考えなくてもいい……アイはアイのやりたいように生きるべきだ……少なくともお兄さんもそう思っているはずだ。
そしてアイは
「私は……これからも皆と一緒に冒険者を続けたい。そして困っている人達を助けたい、 イージス達がやっているように……」
イージスの目を見ながらそう言った。その目は片方しか無く、 痛々しい傷が左目に残っていたが、 彼女は真っ直ぐイージスの目を見た。
「……そうだね……それがいい……それがアイのやりたいことなら……そうすればいいよ」
「う……うん……///」
アイは顔を赤らめて目を逸らした。
……やっぱりアイって……
イージスは何かを思った。
「それじゃあそろそろ時間も時間だし行くよ」
「おう、 またな! 」
「イージス達もゆっくり休んでくれ」
「ありがとう、 じゃっ」
そしてイージスはザヴァラムとミーナのところに戻っていった。
・
・
・
それから二日間、 イージス達はしばらくヒュエルで様々なクエストをこなしていたり観光したりしていた。そしてアイ達の怪我は完全に回復した。
ギルド前にて……
アイ達は次の場所へ旅立とうとしていた。
「色々世話になったな、 イージス! 」
「俺達もイージス達みたいに強くならねーとな! 」
「いやいや、 俺達もまだまだだよ」
ウルヴェラとケルム、 そしてフェリアはイージス達と楽しそうに話す。
しかしアイはウルヴェラ達の後ろに隠れて何も喋らない。
そして遂に別れの時……
「じゃあな……またどこかで会えたら」
「……きっと会えるさ」
イージス達と別れようとしたその時、 アイは突然前に出てきた。
「イージス……その……えっと……」
アイは言葉に詰まっている。
「どうしたんだい? 」
「ふぇぇ……え、 えっと……///」
「言ったれ言ったれぇ! 」
ウルヴェラが応援する。
……このパターンってあれだよな……
そしてアイは意を決したようにイージスに言った。
「お、 お前に……一目惚れしてしまった……好きだ、 イージス///」
ですよねぇ~~~~……どうしよう、 ここは大人の対応でいくか……
「そうか、 じゃあそんなアイに俺からプレゼントをあげよう」
イージスはアイの手を取り、 アイの手のひらに一個の指輪を置いた。
「これは魔法の指輪だ、 君を悪いものから守ってくれる。俺だと思って大事にするといい……」
「ッ~~~~///」プシュー……
アイは顔を真っ赤にしながら黙ってうなずいた。そしてアイはウルヴェラの後ろに駆け寄った。
うーん、 強い冒険者とは言えどまだまだ子供だなぁ……
イージスは親の顔みたいになった。
「それじゃあな、 元気で……」
「イージス達も元気で! 」
フェリアが最後にそう言ってアイ達は立ち去っていった。
……………………
ヒュエルから出たアイ達はこんな会話をしていた。
「……一緒に行かなくて良かったのかい、 クイーン? 」
ウルヴェラがアイに聞く。
「私には大切な仲間がいるから……これでいいんだ」
指輪を見つめながらアイは言う。
するとケルムが
「だったら俺がイージスの代わりになってあげるよ、 アイちゃん♡」
と言いながらアイに抱き付こうとするも、 アイに顔面を蹴られた。
「その呼び方を止めろってんだよ、 気持ち悪い! ! 」
「そんなこと言わずに─」
「黙れ、 消し炭にされてぇのか……? 」
アイが手に青い炎を出しながらケルムを睨み付け、 威圧した。
「……はい……すいませんでした……」
「はぁ、 大切な仲間とは一体……」
フェリアは呆れ顔で呟いた。
「仕方ないさ、 ああ見えて中身は112歳なんだから……レッド・アイズの不老不死の研究って怖ぇもんだよな……ある意味でも……」
ウルヴェラも呆れ顔で言う。
そして今までイージスはアイの年齢を勘違いしていたのだった……
「全く……ケルムの野郎は……」
(……イージス……また会えたなら、 その時は私がお前を守ってやるからな……それまでにもっと強くならないと……)
アイはその想いを胸に、 次の街への道を仲間と共に進むのだった。
……………………
「さて、 俺達は帰るか」
「そうですね、 きっと皆心配してますよ」
「イージス様がご不在中、 アルゲルが新たに魔法兵器の開発に成功したようです」
スゲェなアルゲル……よし、 早く帰ろう、 皆が心配だ。
「そうか、 それじゃあ早く帰ろうか」
そしてイージス達は三日ぶりにメゾロクスに戻るのだった。
……………………
一方、 ベルムント国王と十二天星騎士団は玉座の間で話している。
「邪神軍の件に引き継いで、 まさかレッド・アイズも壊滅させるとはなぁ……」
ベルムント国王は自分の髭を撫でながら玉座にもたれて言った。
「全く……あのお方は正に世界最強ですよ」
「どんな者かと思いましたが……まさかあのような青年だったとは……思いもしませんでしたよ」
「でも……とても凛々しくて素敵な方でした……♡」
十二天星達もイージスの事を話している。
そしてアリアスはベルムント国王にある話を持ちかけた。
「国王陛下、 私はイージス様にあの国の件について任せてみたいと思ったのですが……」
するとベルムント国王は前のめりになって驚く。
「まさか……あの帝国をか! ? 」
「ふむ……確かにイージス様一人でも可能かもしれん……」
「我々では手に負えなかったですからねぇ……」
ベルムント国王に続いて十二天星達も言う。
そしてベルムント国王は意を決したようにうなずき、 アリアスと他の十二天星達に言った。
「では十二天星騎士団よ、 我が国はメゾロクス王国に……ヴェル・ハザード帝国の略奪を依頼しようと思う、 異議のある者は立ってそれを示せ! 」
十二天星達はひざまづいたまま動かない。
「では一週間後、 十二天星騎士団がメゾロクスに行き、 イージス殿に頼むように! 」
『はっ! 』
またまた波乱の予感?
・
・
・
そこから二日後、 メゾロクス王国は更なる魔法兵器の開発に成功……メゾロクスには新たに軍隊を築き上げ、 その主君はガムールに任される。
そしてメゾロクスの城、 玉座の間にて……
「イージス様、 メゾロクス南部海岸の港町建設計画に関しまして、 必要な物質と人材が揃いました」
レフィナスがイージスに報告する。この時イージスは漁業も発展させ、 交易の発達や名物料理の増加を考えていた。
「よし、 では今から建設開始だ! 」
「はっ! 」
この国は随分と成長した、 しかしまだ終わりじゃない……国造りの最終目標は人と魔物、 種類問わずに皆仲良く暮らせる……そんな国を造ることだ。
今も隠れて暮らしていて苦しんでいる魔物達も沢山いるはずだ。俺はいつかそんな魔物達も守れる人に……なってやるんだ!
イージスは改めてその決意を胸に今日も守護者と共に国を発展させていくのだった。
「そういえば……エメはいるかな? いたらドラゴン達の会議とやらの話を聞かせてもらお」
……イージス達にはまだまだ冒険が待っている。
続く……




