第11話【同盟を結ぼう】
イージス達は新たな魔法兵器を開発し、 順調にメゾロクスの勢力増強をしていった。
そしてアリアスと別れてから翌日、 メゾロクスに初めての客が訪れようとしていた。
「うーん……」
イージスは城の書斎にて魔法書を読んでいる。
昨日のアルゲルがやっていた召喚魔法……他にはどんなやつが召喚できるのか気になって読んでみたが……どうして中々面白い。
イージスは自分の持つ魔法については全て熟知していた。他にも魔法薬学や錬成魔法学など、 その知識量は学者もしのぐ程である。しかし、 そんな中でも唯一イージスが使ったことが無く、 かつほとんど知識が無い魔法学があった。
それが召喚魔法学であったのだ。
「ダークナイトに……イフリート……超位龍も召喚できるのか……ほぉ~……」
イージスが召喚魔物の一覧を見ているとザヴァラムが書斎に入ってきた。
「イージス様、 メゾロクスに向かってくる大量の人間を発見したとロフィヌスのメゾロクス監視隊から報告が入りました」
人間? それに大量って……侵入者か? いや、 こんな昼間に侵入してくる訳がないか……だとすれば……
「分かった、 監視を続けてくれ。一応メゾロクスでは警戒態勢にしておいてくれ」
「承知致しました」
そしてザヴァラムは書斎から出ていった。
昨日アリアスと別れてから一日……現れたメゾロクスに向かってくる大量の人間……もしかするとルスヴェラート王国の……
「……これは後にするか」
イージスは本をしまい、 書斎を後にした。
「イージス様、 どこへ? 」
「ちょっとメゾロクスの街を見てくるよ」
「左様でございますか、 お気をつけて」
城のメイドがイージスを見送った。
外に出たイージスは一度エメの様子を見に行った。
最近放置してたからなぁ……いじけてたりしないかな?
「エメ、 いるか? 」
エメがいつもいる中庭を見てみたがそこにはエメはいなかった。そこにいたメイドに話を聞くと
「エメ様なら中位龍の集会で出掛けると言っておりましたよ」
「そっか……」
中位龍の集会って何だ? 帰ってきたら聞いてみよ。
そしてイージスは城から街に出た。城下町は始めの頃よりもかなり発達しており、 活気に満ちていた。
おぉ、 建築物がだいぶ増えてきたな、 そのうち飲食店とかも寄ってみるか。
イージスが街をふらついているとミーナに会った。
「あっ、 イージスさーん! 」
「おう、 ミーナか」
「良かったら一緒に見て回りません? 」
「あぁ、 いいよ」
イージスはミーナと街を見て回ることにした。
……何かデートみたいになってるんだが……いやいや、 これはデートじゃない、 ただのお出掛けだ!
イージスがそんなことを考えながら歩いていると
(い、 イージス様……今……よろしいでしょうか? )
ロフィヌスから通信が入った。
「ごめんミーナ、 ロフィヌスから連絡が入った」
「大丈夫ですよ」
(実は……先程の報告にありました、 大量の人間なんですが……どうやらルスヴェラート王国の軍隊らしいんです……)
「えっ、 ルスヴェラート王国の? 」
(はい……いかがなさいましょうか? )
やっぱりルスヴェラート王国か……目的は何だ? 少なくとも戦争ではないはずだ……
「メゾロクスに入りたいと言われたなら通せ、 俺が対応する」
(承知致しました。)
そして通信が切れた。
別の国の軍隊が入ってくるならこの国の代表者である俺が対応すべきだしな。……と、 そろそろ来るか?
「すまんミーナ、 急用ができたからまた後でな」
「はい」
イージスはミーナと別れ、 メゾロクスの外側に面する外壁の出入口にやってきた。すると出入口の門が開いた。そこには大量の鎧兵が並んでいた。
結構凄い数だな……あれ?
イージスは軍隊の一番前の列に並んでいる騎士達が気になった。
「あれ、 アリアス? 」
「なんと……これはイージス様、 自らここまでお出迎えとは……」
やっぱりアリアスだ! となるとその横に並んでいる十一人はもしかして……まぁ今はそんなことより!
「よく来たな、 さぁ入って! 」
イージスはルスヴェラートの兵士達を招き入れた。
列の中に馬車があるな、 あの中に王様とか乗ってるのかな?
そんなことを思いながらイージスは軍隊を城まで誘導する。
途中、 メゾロクスの国民達を兵士達が物珍しそうに見ていた。その時、 アリアスの横に並んでいる騎士の一人が呟いた。
「何故下賎な魔物共がここに……」
それを聞いたイージスが呟いた騎士に振り向き……
「……国民を蔑むようなことを言うのを止めろ……! 」
声色を変えてイージスは威圧した。
ここに住む皆も俺の大切な仲間であり、 平等な生き物達だ……それを見下すようなやつは、 何者だろうと絶対に許さない!
「うっ……も、 申し訳ありません……」
騎士は怯えて謝罪した。
(……やはりイージス様は優しい方だ、 魔物達をも平等に扱っているなんて……)
アリアスはそう思った。
そうこうしている内に城に到着した。
「案内は守護者達に任せるから、 俺は先に玉座の間で待ってるよ」
「はい、 ありがとうございました」
そしてイージスは城に入っていった。
……………………
イージスが城に入ったタイミングで馬車からルスヴェラート王国の王が降りてきた。
「ほぉ……これがメゾロクスの城……立派なものだ……」
国王が感心していると目の前にザヴァラムが現れた。
「よくぞここまで参りました、 ルスヴェラート王国、 国王陛下。イージス様の準備が整いましたのでどうぞお入り下さい」
ザヴァラムはイージスから国王には敬語を使うように厳しく念を押されていたため、 この時はザヴァラムは仕方なく敬語を使っていた。
国王は十二人の騎士達以外は外で待機させ、 ザヴァラムに案内され玉座の間に向かった。
転移魔方陣で階を移動するのを知った国王は大変驚いた。他のどの国にもそのような技術は存在しなかったからだ。
そして国王達は玉座の間に入った。
「おぉ……あれが……」
玉座に座っているイージスを見て国王とその騎士達は圧倒された。
騎士達はそれぞれ思った……
(何なのだ……この威圧感は……! )
(あれは正に……)
(この地に座する……)
「……覇王……」
アリアスは思わずそう呟いた。
……………………
「よくぞここまで、 ルスヴェラート王国の国王陛下殿」
「初めましてイージス殿、 儂はルスヴェラート王国の国王、 ベルムント・リング・ヴェラートと申します」
イージスは玉座から立ち上がり、 ベルムント国王達を歓迎する。騎士達は両サイドの通路に整列した。
「それで、 今日は何用で? 」
まずは何故ここに来たのかを聞かないとな。
「いえ、 まずは建国の祝福をと思いましてな……」
「そうですか、 ありがとうございます」
「それと、 儂の方からイージス殿に……折り入ってお願いしたいことがごさいまして……」
ベルムント国王は少し改まって話す。
何だ、 お願いしたいことって……
「なんでしょう? 」
「単刀直入に言おう……」
ベルムント国王が言った願いとは
「我々、 ルスヴェラート王国と同盟を結んで欲しいのです! 」
「……えっ? 」
えぇ、 同盟! ? 俺あまり国の事についてとかはよく分からないけどいいのか! ?
……でも待てよ、 同盟を組めば貿易だとか軍勢だとか……色々共有できるようになるよな?
それに他の国にも狙われて攻撃されるリスクも回避できる……つまりこれはチャンスなのでは?
イージスは考えた、 今後のメゾロクスについて何が得で何が損なのか。
「……うん、 よし、 分かりました、 同盟を結びましょう! 」
「おぉ~……では……」
「と、 その前に! 」
イージスは少し話を止めた、 気になっていたことがあったからだ。
「そこにいる騎士達は何者なのでしょう? 前にも会った騎士も中にいますけども、 一応聞いておきたくて……」
「いいですとも、 十二天星達よ! 」
『はっ! 』
ベルムント国王の指示と共に騎士達が玉座の前に出てきた。
さて、 ステータスはと……
イージスは鑑定で騎士達のステータスを見た。
「……どれも100代か……なんか微妙……」
「何か言いました? 」
「いや、 何も」
そして騎士達が自己紹介を始めた。
『お初にお目にかかります、 我々はルスヴェラート王国の王直属の騎士団……十二天星騎士団と申します! 』
「一番天星、 グロズワルト・エルセです」
「二番天星、 ネルト・グランです」
「三番天星、 ミレウィー・レヌストです」
「四番天星、 アリアス・ミルストルです」
……長いので省略……
さっきの続き……五番から順に人名でグレン、 ナターシャ、 ロベリック、 キロウス、 メラウラーヌ、 スカフル、 オラン、 レイナル……である。
(それぞれの詳細についてはかなり後に話されますがご了承下さい。)
……流石にここまで多いと覚えられるかなぁ?
あとこれが十二天星……カッコいいな。ちょっとガムールに近い感じかな? ガムールの鎧は黒、 十二天星は白でちょっと違うけど。
するとさっき国民達を蔑んだ発言をしたグロズワルトが
「イージス様、 先程の無礼……誠に申し訳ありませんでした」
イージスに深く謝罪した。
「大丈夫だよ、 最初は誰もそう思うだろうし。こちらこそ強く当たってごめん」
「そんな……イージス様は何も……」
するとベルムント国王は
「こほん……では話を続けてもよろしいですかの、 イージス殿? 」
「あぁ、 同盟の件でしたね」
……同盟ってどうすれば成立するんだ? ここは……
イージスは玉座の横で待機している守護者達の中のレフィナスを見た。
助けてレフィナス!
イージスと目が合ったレフィナスは察したように
「承知致しました。では誓約書を……」
そう言うとレフィナスは指を鳴らし、 メイドに誓約書を持って来させた。
「ではここにサインを……だよね……? 」
イージスは再びレフィナスを見る。レフィナスは静かにうなずいた。
よ、 良かったぁ~……レフィナスがいて助かった!
レフィナスは法律や建国に必要な知識など、 いわゆる国造りのスペシャリストなのである。
そしてベルムント国王は誓約書にサインをし、 同盟が成立した。
誓約書に書いてある条件はこうだ。
『一、 同盟国はお互いにお互いの国を侵す行為はしてはならない。』
『二、 同盟国はお互いに他の国からの攻撃を受けた場合、 お互いに支援し合うこと。』
『三、 同盟国はお互いの持つ技術を共有し合い、 協力し合うこと。』
以上が同盟を結ぶにあたる条件である。
「これからはよろしくお願いしますぞ、 イージス殿」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうしてメゾロクス王国とルスヴェラート王国は、 同盟を結んだのだった。
これでまた国が発展してより良い国ができる。
イージスはその思いを胸に、 ベルムント国王と握手を交わした。
続く……




