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予期できぬ事態 ☆

to4koさんに依頼しました

 時は少し遡って地の底、光は一筋も射し込まず空気は滞留し砂塵が舞う劣悪な環境に二人の魔族の姿があった。片方はクレタ・ミノタウロス、腕を組んで前方の相手を睨む。睨まれた相手、ビリワック・ゴートマンは平然とした態度でお辞儀をしていた。


「ご機嫌とお加減は如何ですか?」


「腕はあの女の治療で万全だが、機嫌もあの女のせいで最悪中の最悪だ。貴様はどうなのだ? あの様な男を引き入れるなど。アレがどんな奴か分かっているだろう」


「私は主の(メェ)に従うまでですので。……クレタ様も可愛い部下を意地に巻き込まない方が宜しいと思いますよ?」


「……さっさと去ね、殴り殺されたくなければな」


挿絵(By みてみん)


 ビリワックの言葉に不機嫌さを更に増して行くクレタ。それが伝わって尚、ビリワックは平然とした様子でお辞儀をして消える。静かな地中にクレタの舌打ちの音が響き渡った。


「……部下と共に逃げ出せ、自由に生きられたらどれ程良かったのだろうな。……その果てに惚れた男と囁かな暮らしを享受する。私の願いはそれだけだが……それをさせない為の外道働きか」


 怒りに任せて岩壁を殴れば罅が広がって行く。今の彼女の顔には憂いと怒りが入り混じった物であった。








「良いか、息子よ。我々は日の当たらぬ世界の住人。それを重々心得よ」


 それは男が幼い頃より言い聞かされた言葉。父は自分達の一族の偉大さや強大さを語る一方で、日陰の存在だと。決して表舞台に出るべきではないと語る。幼い頃の彼にはそれが理解出来ず、きっと正しい行いをすれば誰もが賞賛すると思っていたのだ。そして、その機会が訪れた。


「ふふふ、凄いでしょ! 僕の力なら皆を助けられるんだ!」


 普段は屋敷に籠もり、太陽の光を浴びるのは中庭だけだった日常の中、父に修行として遠い山に連れて行かれる道中の事であった。外の住民との関わりは最低限で、絶対に力を見せるなと言われていたにも関わらず父の目を盗んで遊びに向かった先で目の前でモンスターに襲われる人々を見捨てられない正義感、そして承認欲求を持っていた彼は家の秘術で人々を救ったのだ。


 きっとこれで誉めて貰える。父だって感謝する人々の言葉を聞けば言いつけを破った事を許してくれる、そんな風に思った彼は称賛を浴びる瞬間を待ち望む。だが、彼の思惑とは逆に浴びせられたのは称賛とは全く別の物であった。


「この外道!」


「村から出て行け!」


 浴びるのは罵倒と石礫、向けられたのは感謝の念ではなく嫌悪と恐怖。自分を見る目が怖くて逃げ出した先に居たのは怖い父親。思わず身を竦ませるが、父は彼を優しく抱き締めた。


「……これで分かったな? 力とは力無き者を守る為に存在する。だが、我が一族の力は外道外法の類。賞賛も喝采も感謝も求めるな。人を救う事、それだけを励みとせよ」


 彼は理解する。父が自分に言い聞かせていた言葉の理由を。父も自分と同様に日の当たる場所で暮らしたいと願い、そして現実に打ちのめされたのだと。自分には普通の生活も普通の幸せも平穏な暮らしも無理なのだとも理解してしまったのだ。だが、疑問が一つ湧く。


「……何で感謝もしてくれない他人の為に犠牲にならなくちゃいけないの?」


 この問いに父は悲しそうな顔をし、それが自分達の使命だと告げる。誰かが邪法を使い泥を被ってでも動かなければ救えない人が存在するからと。その言葉は彼には理解出来ず、それを当然とする一族が途端に気持ち悪い物に思える様になったのだ。


 それから数年後、少年から青年へと成長した彼は自らの本心を隠し、飄々とした態度で過ごす様になる。魔族の出現で世界が慌ただしくなる中、修行の為に世界を回り、日の当たる場所に居るのが当然な人達への憎悪を隠しながら。そして力試しに強いと噂される者達に挑む中でとある二人組に出会ったのだ。


 一人は最大の嫌悪を向ける相手。日の当たる世界に生まれ、更に強い光と人々の称賛を浴びる運命を持ちながら堕落した男。自分がどれほど望んでも手に入らない物を目の前で溝に捨てられている気がして腹が立った。


 そして二人目、彼女の事を彼は絶対に忘れない。暗い世界に生きていたからこそ他者の輝きに敏感な彼には直視出来ない程に眩く見えた初恋の相手。例え死んで転生しても彼女の事を覚えている自信が有る程に強く惹かれたのだ。


 この出会いを切っ掛けに彼は表の世界に出る事になる。自分とは無縁に思えていた称号を得た途端に家の秘術を使っても称賛を向ける人々には嫌悪と憤怒しか感じず、彼にとっては使命などどうでも良い事だった。最早憧れた場所にも興味は無く、彼女の隣に居られたらそれで良い。自分が触れれば彼女の輝きが穢れるからと想いを心の内に留め、日に日に大きくなるそれを押さえ込むのに苦しむ。


 そして、それを解放しても良いのだと思った時は全てが遅かった。彼女の心を手に入れる事も、隣に居続ける事も不可能となったのだから。この後、彼は歴史の表舞台から姿を消す事になる。様々な憶測が飛び交うも事実はその中には存在せず、やがて彼を気にする者も居なくなった。それを彼は嗤うだろう。所詮は日陰者だったのだと。



「……はは、はははははは! 今度は間違わない。絶対に彼女を手に入れる。例え外道と唾棄されようとも元よりそうなのだから!」


 日陰者として生まれ、日の当たる場所に憧れながらも何時しか諦め、強い光に惹かれた男は自らの意志で深い闇に身を投じる。そして、とある存在が彼に接近して背中を突き飛ばしたのだ、永久に這い上がれぬ深き闇の広がる奈落の底へと。彼も抵抗する事無く落ちて行った。


  


 そして今に至る。全ては計画通りに進んでいた筈だった。だが、何らかの介入は予期していても予測すらして居なかった珍妙な格好の闖入者達に包帯男は我が目を疑う。寧ろ疑わない方が不自然であり、それでも即座に三名周囲を渦巻く力を感じ取った彼に更なる動揺が走った。


(有り得ない。あの者達は……いえ、アレは一体何なんですかねぇ?)


 彼は最初は只の演技であり、今や心中の呟きにさえ使っている口調で考える。今までの経験で六色世界の住民には世界ごとに異なる力の性質を持っているが、三人はどれにも当てはまらない。だから奇妙な見た目しか分からず、一つ思うのはその様な格好をする理由が存在する事。最も有り得るのは顔を隠さざるを得ない理由が存在するという事。思い当たった瞬間、無性に腹が立って来た。


「……貴方達、正直言って目障りですよ」


 人前で堂々と姿を晒せない分際で何をしに現れたのか。まさか正義を気取っての事ではないのか、そんな想いと共に幼い頃に抱いた理想の生活が浮かび、続いて石を投げられながら罵倒された時の記憶が蘇る。彼が頭を押さえよろめけば包帯の隙間から見えていただけの目が包帯と共に動く様子を見てティアは目を細めた。


「幻覚? 何故目を隠す?」


「……五月蠅い、黙れ小娘が。偶々賢者に拾われ光を浴びた程度の餓鬼が私の思考の邪魔をするんじゃないですよぉ」


 今の彼に先程までの浮き世離れした態度は既に見られず、苛立った様子で両手を使って顔に巻いた包帯をグシャグシャにしていった。それでも包帯は意思を持つかの様に彼の素肌を決して晒さず、ティアへの興味など既に消え失せたと言いたげに彼は三人の方ばかりを向く。その三人は何をしているか、少なくとも包帯男に大して興味は示していない。




「……どういう事ですか? 私は軍団の名を考える会議があると呼び出された先で二時間待たされた上に、鯛焼きの尻尾はアンコ沢山かカリカリの焼き加減かどうかで五時間の無駄話をした後で五秒で決定したのですが?」


「私は激辛担々麺を食べながら話し合って決めたのだがな。まあ、お前がどうしても偽獣隊が良いと言うのなら構わんさ。お前の希望を尊重しよう」


「いや、心底どうでも良いです。契約でなければ所属どころか関わりたくもない」


「……」


 挑発するかの様に肩を竦める鳥トンと非常に不服そうなグレー兎のやり取りに割って入りたいのか手を左右に動かしてアピールするも声を出さないから気付かれない。いや、鳥トンは気が付いている様子で一瞬視線を送っては笑い、直ぐに見ない振りをする。


「……」


 最後に『僕は朝ご飯の時に告げられましたよ』、そう書いたスケッチブックを掲げるも二人に無視される。大して興味が無いのではなく、完全に包帯男は眼中に無かった。


「貴様達、一体何者だ!」


「さては東側の援軍だな!」


 同じく周囲に居ないかの様に扱われていた西側の戦士達がその結論に至ったのは当然の事。自分達に味方していたゾンビを急に現れた不振人物達が倒したのだ。血走った目で武器を構え、殺気を向けて襲い掛かる。この時になって三人の視線が彼等に向けられた。


「……おや、私達が東側の味方だと?」


「まあ、その結論は当然ですが……」


「……」


 何処か落胆した様子の黒子がナイフを抜く。小柄でとても戦士の肉体には見えない彼は前傾姿勢になり、その場から消えた。驚愕に目を見開く戦士達、彼等の間を疾風が過ぎ去り、背後に黒子が現れる。彼がナイフをホルスターに仕舞うと同時に彼等はその場に崩れ落ちた。


「……よし。勝てる、勝てるぞぉ!!」


「誰かは知らないが、このまま共に力を合わせて一気に西側の連中を叩きのめそうぞ!」


 思い掛けない兵器の投入や敵側の援軍、優勢状態から一気に劣勢に追い込まれ志気が下がっていた状態からの逆転の状況に東側の戦士の戦意が一気に燃え上がった。ときの声を上げ、動揺が見られる敵を叩きのめすべく向かって行く。そして前のめりに倒れ込んだ。彼等の背後から鳥トンが襲い掛かった事によって。


「な…何故……?」


「私達はお前達の味方ではない、それだけだ。ククク、残念だったな」


「神も賢者も勇者も、賢者の使い魔さえ介入出来ないこの戦争……ですが、使い魔の部下なら話が変わる。……まあ、戦争を止めるにはこれが一番ですので」


 倒れ込んだ東側の戦士の背中を踏みにじり嘲笑う鳥トンと冷静に語るグレー兎。黒子はコクコクと頷き、三人が味方ではないと察して西側と同様に三名に殺気と武器を向ける。三人は互いに背中を向け散開、圧倒的な人数差の相手へと向かった。


「さて、少しは遊ばせて貰っても良いのだろう?」


 鳥トンが左右に腕を広げれば指の間に無数の鉄串が現れる。バーベキューに使う様な物であり、とても武器には使えない物。それが戦士が使い慣れた自慢の一品を貫き通し破壊、更に一歩踏み込んで手をそっと体に当てる。何をする気だと相手は笑みを浮かべ、彼の背後から他の仲間が武器を振り上げる。その瞬間、手を当てた部分から衝撃が突き抜け数人纏めて吹き飛ばした。


「さて、楽しい楽しい戦闘の始まりだ。正当化される暴力とは随分と心地良い。……仕事後のビールの味も格段だしな。ククク、実に楽しみだ」


 鳥トンは次々に鉄串を投擲しながら嗤う。その姿はとても戦士には見えない。実際、彼に戦士の誇りは存在しないだろう。その姿を誰もが悟る。目の前に居るのは性根の腐った人格破綻者なのだと。




「……あの男は相変わらず何と言えば良いのやら」


 その光景を見て深い溜め息を吐くグレー兎。どうやら前々から思っていたらしく声には苦労が滲み出ている。それを好機だと捉えたのだろう。東と西、両側の戦士が鳥トンの異常さから仲間も危険だと判断したのか取り囲む。元々は同盟を結んでいたり同部族だった者達。何よりも一流の戦士だ、その連携に一切の乱れは存在しない。


「とった!」


 鎖付き分銅がグレー兎の足に巻き付き、武器を持った戦士とその間を縫って放たれる矢。彼等は勝利を確信し、それでも切っ先に乱れは無い。勝機を感じるのと油断慢心は別物だと、それだけなのだろう。グレー兎は動かない。まるで全てを諦めているかの様に……。


「……はぁ」


 静かな溜息が聞こえ、指先に魔法陣が現れる、彼女の目の前、ほんの数ミリの距離で矢も武器も見えない壁に阻まれて止まっていた。


「ご安心を。契約ですし戦争は犠牲を極力出さずに止めますが……あの男の様な真似は致しませんので」


 グレー兎に至近距離から攻撃を仕掛ける戦士達、そして矢を放った戦士達の体が糸が切れた人形みたいに崩れ落ちる。諦めたのではなく、必要が無いから動かなかっただけ。そんな単純な話であるが、此処で疑問が一つ。魔族でもない彼女が杖も魔本も使わずにどの様に魔法を使っているのかだ。


「……さて、そろそろの様ですね。流石にこの数を相手に重傷を負わさず鎮圧するのは私達だけでは難しいでしょう」


「なら、さっさと諦めて倒されろ!!」


 先程の黒子、そして鳥トンとグレー兎が微塵も苦戦せずに戦士達を倒したのは確か、だが足りない。戦争をする為に集まった西側の数は凄まじく、話し合いの為に族長達が連れて来た人数も合わせれば無謀な試みと一笑されるのが普通だ。だから戦士達も数で攻める。相手の強さを認めた結果であり、手加減された事への腹立ちも含まれているだろう。


「……まあ、あの腐れパンダが集めたのは私だけでは有りませんが。手間を掛け、異世界(・・・)でスカウトした犠牲者……いえ、部下が揃っています」


 戦士達を取り囲む様に現れた無数の魔法陣。そこからときの声が響き、武器を持ったキグルミ達が現れた。ライオン、ネコ、ラッコ、コアラ、蜘蛛、アルマジロ、ヒトデ、クマ、スカシカシパン、最早どれだけ居るのか一目では判別不可能な数の出現に再び固まる戦士達。今度は東西両サイドの戦士が揃ってではあるが。


「さて、第一部隊隊長の私が言うべきか。……総員突撃。被害を抑えつつ無力化せよ」


 鳥トンの号令と共にキグルミ達が動き出す。立場が逆になった数の暴力が始まった。




「……はは、はははははは! 何ですかねぇ、これは。一体何なんだ!!」


 目の前の光景に包帯男の口調が乱れる。だが、それも致し方ない事なのだろう。一体誰がこの様な事で計画がひっくり返されると予測出来るのだ。未来を見通す予知の力を持っていたとしても何かの間違いだと自らの力に疑いを持つ光景こそが彼の目の前で起きている事であり、それを引き起こした存在、アンノウンの無茶苦茶な能力と性格等普通ならば思い当たる方がどうかしている。


「……えい」


 そう、アンノウンの事を知らなければ動揺と混乱で動けないのが当然だが、ティアはアンノウンを知っている。この世で最も慕う同率二人である両親の片方である父と、六百六十五人の神が悪乗りで創造した存在である事を。……流石にそれでも限度はあるが、少なくても包帯男よりも立ち直りは早い。生じた致命的な隙を狙って繰り出される拳。顔面に迫ったそれに気が付いた時、既に彼には受け流す余裕は存在しない。


 この戦いにおいて初めてティアの攻撃が有効打となった。正面から叩き込まれた拳の威力を咄嗟に後ろに跳ぶ事で軽減するも本来に比べて動きが悪い。動揺した状態で受けたダメージによって完全な動きが出来ずに削ぎきれなかったダメージ。彼の体勢は空中で崩れ、ティアの追撃のハイキックが襲い掛かる。


「舐めるな!」


 だが、攻撃を受けた事で彼の意識はティアへと移り、水の刃がティアの背後から襲い掛かった。背後からの急所を性格に狙った攻撃。ティアの耳が僅かに動き、その動きが加速する。彼女を絶命させたであろう刃は僅かに柔肌を切り裂くだけに留まり、蹴りは彼の頭に威力を殺す事無く叩き込まれた。


「身体能力強化!? 馬鹿な、先程までは使って無かった筈。それに何故後ろからの攻撃を……」


「……何となく? あと、手札は残しておく物って習った」


 振り抜かれた足は包帯男の側頭部を蹴り抜き、包帯をビリビリに破けさせながら彼の体ごと宙を舞う。包帯の破片が散らばり、包帯男は何度も地面を跳ねて最後に転がって漸く止まった。その状態で起き上がった彼は血を吐き捨てながらも二本の足で立つ。顔に手を当て、さらけ出された事が随分と不愉快な様子だ。


「えっと、知ってる顔だけど……誰だっけ?」


 その顔を見て腕組みで考え込むティアだが、彼女以外の者達の中には思い当たった様子の者が多かった。直接会った訳でも遠くから顔を拝んだ訳でもない。だが、それでも知られていて当然の顔を前に動揺が広がる。プードルの獣人が信じられないといった顔で呟いた。



「天……仙……? そんな、げふぅ!?」


 戦闘中にその様な隙を晒せば当然の如く狙われる。黒子が首筋にナイフの峰を叩き込んで気絶させた。そして、その呟きが聞こえたのだろう。包帯男……いや、天仙ウェイロン、百年前に勇者と共に世界を救った英雄が肖像画に描かれた若いままの姿で立っていた。



「……流石に遊びが過ぎましたねぇ。この体も限界らしい」


 首に手を当ててゴキゴキと鳴らすウェイロン。包帯の隙間から見せていた目とは別物の糸の様な細い目でティアの方、その後ろで彼女の武器を持って来たリンに向けられる。口元が僅かに吊り上がった瞬間、ティアが間に割り込んだ。


「させない!」


「はあ。何をさせないのですか?」


 背後から聞こえる人が倒れた様な音。振り向けば前に倒れたリンの姿。足首から下が地面から突き出した水の刃で切り落とされていた。


「リン!」


「ああ、彼女はリンという名なのですねぇ。名を知れて良かった……とでも言っておきましょうか」


 僅か一瞬だけリンに視線を向け、興味が失せたのか言葉の途中で頭を振る。ティアの目が鋭くなり、見慣れぬ者でも今の感情を察せられる中、リンの腕が動いた。


「お姉様、これ……」


 これを、そう叫ぶ前に再び地中から飛び出した水の刃が腹部を貫く。透明な水の刃に赤い色が混ざり、トンファーを持って振り上げた腕が下ろされると共に閉じられる瞳……それが再び開かれ腕が振り抜かれる。ティアがそれを受け止めたのを目にしたリンは微笑み、そして目を閉じた。


「お友達で?」


「……分からない。父はストーカーって呼んでたし、知り合いではあるけれど……お前だけは絶対に許さない」





 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雰囲気のある挿絵ですね。
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