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再会

仕方ねぇから感想書いてやるか、そんなお気持ちが何よりの応援です!

「……ねぇ。今、何って言ったの? もう一度言ってみなよ。グチャグチャに潰してやるからさ」


 この日、パンダがキレた。僕にとってアンノウン様がガチギレするなんて話にも聞いた事が無い事態に動けない。恐怖が僕の体をその場に縫いつける。ガンドルさんも小さなパンダから発せられる怒気を感じ取ったのか少し警戒した様子だし、パンダは僕の頭の上だし、これって巻き込まれる流れ?


 いや、まさか。アンノウン様はパンダを操る力が殆ど残っていないって言ったけれど、何時ものその場のノリでの言動の可能性だって有るんだ。だから僕が巻き込まれる可能性は低い。……流石に世界を救った勇者の使い魔と仲間の戦いに巻き込まれるのは勘弁だからね。


 戦いになったら大変だけれど、僕はどうしたら良いんだ? 出来れば巻き込まれない方法で……。


「ってな訳で僕の腹心の黒子が相手だよ! やっちゃえ黒子!」


 速攻で巻き込まれる所か戦いに駆り出されてるぅ!? いやいやいやっ!? 僕も結構消耗しているんですけれどっ!?


「黒子、君に決めた! 残った力で回復してあげるから、僕をイシュリアなんかの使い魔で同類呼ばわりしたヒゲをぶっ倒せー!」


 回復してもぶっ倒せません! って、パンダのヌイグルミが動かなくなって、僕の体に力が湧いて来たっ!?

無理無理無理っ! 



「……これは見た目で判断して侮るのはちぃっと不味いかも知れんな。ほれ、下がっとれ」


「は、はい!」


 駄目だ。力が弱まってるとはいえアンノウン様の殺気は凄まじい。ガンドルさんもそれを察したのか戦う気になってしまっている。しかも戦うのは流れ的に僕だ。首を激しく振って戦いに参加しない意思を表明するタイミングを逃しちゃったし……逃げよう!


「!?」


 フラミンゴの背中から飛び降り、背中を向けて全力での逃走を開始する。今のパンダは動けない状態だし、時間が経てば有耶無耶になる筈。主にアンノウン様が飽きるから。


 だけど両足を幾ら踏み出しても進まない。振り返れば僕の服をフラミンゴがクチバシで摘まんで逃げ出せないようにしていた。


「クェッ!」


 逃げずに戦えとフラミンゴが瞳で語り掛けて来る。くっ! この鳥、一体どうしてアンノウン様の命令を忠実……とは言えないけれど聞いているんだ? 僕の頭から落ちたパンダを踏みにじりながら僕に向けるフラミンゴの瞳はフラミンゴとは思えない力強さで、何処かで見た事があった。


 ……あれ、もしかして。


「……クェ」


 アンノウン様はモンスターだって言ったけれど、一言もこの世界のモンスターだとは言ってはいない。思い出すのは街中で執拗に僕の足を踏み続けた事。あれはアンノウン様の手綱を握れって無茶振りだったとしたらフラミンゴの正体は……。


「えっと、気が付かなかった事にしますね」


「……クェ」


 静かに頷きながらフラミンゴはお礼を言うみたいに鳴く。そしてクチバシを動かしてガンドルさんに挑めと指示してくる。この人、本当にスパルタだから困る。まあ、僕は特に娘同然の存在に惚れているからだとは思うけれど……。


「……あー、結局儂に挑むのかいの?」


 あっ、肝心の人を放置していた。僕は慌ててジェスチャーで意志を伝えるべく頑張る。ガンドルさんには通じなかったけれど、お付きの男の人が何とか分かってくれて助かった。



 ……それにしても僕って何をしているんだろ? 自分で時々分からなくなって来たよ……。でも、ちょっと思ったれど、これってチャンスなんじゃ? 此処で良い所を見せて評価が上がれば娘との仲を応援してくれるかも。僕はそんな淡い期待を抱き戦いに望む。愛の力は偉大だ。きっと誰にだって負けはしない。


 この時、僕は意中の相手とは別に恋人同士でも何でもなく、同じ所に住んでる奴その一程度の認識である事を都合良く忘れていた。




「えっと、これってどんな状況ですか?」


 背後から聞こえた困惑しか感じない声。振り向けばキリュウさんが僕達を困り顔で眺めている。この瞬間、僕は完全に我に返った。そりゃそうだよね。……取り敢えず最初の目的だったキリュウさんからガンドルさんへの手紙を渡そうか。差出人が直ぐ後ろに居るけれど……忙しそうだから別に良いか!

 






「成る程のぅ。イシュリア様の使い魔呼ばわりするのは悪かったか。人類史上最悪最低の侮辱だったわ。失礼にも程があったわい」


「いやいやいやっ!? イシュリア様ですよ、イシュリア様っ! 愛と豊穣の女神に向かって何を言ってるんですか、ガンドル様っ!?」


「……お主も一度会えば理解出来るぞ。うん、本当に……」


「ちょっと君も何だか言って下さい。この方、世界を救った英雄で大司教何ですよっ!? 普段から偶にぶっ飛んだ事を口にしてますけれど……はっ!」


 慌てふためく彼は僕に助けを求める。でも、僕は何も言わない。顔を覆面で隠したまま彼の顔を見れば通じ合った。凄い力を持つ無茶苦茶な人に仕えてる者同士、言葉なんて無くても通じ合う何かが有ったんだ……。





「クェクェクェクェクェクェクェクェェエエエエエエエエッ!!」


「痛たたたたたたたたたたたっ! 何ですっ!? 何で私はフラミンゴに怒りをぶつけられているんですかっ!? てか、このフラミンゴ強っ!?」


 僕が新たな友情を結んでいる時、フラミンゴが怒涛の蹴りの嵐をキリュウさんに叩き込んでいた。え? フラミンゴは何を怒っているのかって? だってほら、キリュウさんってアンノウン様の……。




「ちょっとガンドルッ!! この子、どうにかして下さいませんかっ!?」


「……悪いんじゃが関わり合いになりたくないのでな」


「酷いっ!?」


 ……何かなあ。あっ、そうだった。手紙をお付きの人に渡しておこう。そして今繰り広げられている光景は知らない振りをしていよう。だって、それが一番平和だからさ。






「……さて、久し振りに連絡を寄越すのは別に構わん。頭の中に急に話し掛けて来ないのも評価しよう」


「あー、有りましたよね。用があったけれどベッドから出るのが億劫だから夜中に頭の中に何度も話し掛けたら一晩中怒られましたっけ」


 フラミンゴの怒りが少しだけ晴れたのか落ち着いた後、ガンドルさんはキリュウさんに正座させてお説教の構えだ。


「……それであの使い魔はいったい何なんじゃ?」


「凄く可愛いでしょう! それに賢くて優秀なんですよ! アンノウンって名前でして、私の可愛い……」


「……すまん。頭痛がするから少し黙ってくれんか?」


 ……ですよねぇ。

アンノウンのコメント  僕、何かしたかなぁ? 心当たりが千三百位しかないや


新作やってます  王道目指して書くファンタジーです


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