大熊猫と黒子の事件簿 ~六美童 密室っぽい殺人事件~ ⑨
今回シリアス!
既にアイリーンの腹は大食いチャレンジでも行ったみたいにパンパンに膨れ上がって服からはみ出し、急いで食べているから空気を取り込み過ぎて時折ゲップが出そうなのか口を手で押さえ、指の隙間から光が漏れている。
(既に手遅れな気がするけれど、アイリーンの乙女の尊厳の為にも早く戻りましょう)
レリルの手には圧縮された膨大な雷が現れ、動けない黒子に迫る。限界以上食べ続けた上に走り回っているアイリーンに何かあれば即座にリバースするだろうと察知し、一刻でも早く戻って誰も居ない場所に行かせた後は見ざる聞かざる言わざるを貫こうと決めた時であった。
「ローリングパンダドロップ!」
「げっふぅっ!」
「アイリーン!?」
猛烈な勢いで回転しながら飛来したパンダのドロップキックがアイリーンの腹に突き刺さり、後方に吹き飛ばす。垂直に飛ぶ彼女の口からは光が吹き出す事で更に勢いを増して飛んで行き、乙女の尊厳など既に破壊尽くされた。無事に残った墓石を幾つも薙ぎ倒して止まった時、仰向けになってグロッキーなアイリーンは顔面から出る物を全て出し、白目を剥いてピクピクと痙攣を繰り返すだけだ。
「まだまだこれからさっ! 大熊猫流低燃費版必殺技!」
そしてパンダは止まらない。蹴り飛ばしたアイリーンに乗ってレリルの真横まで飛ぶと真上に跳躍、大量のきな粉モチを口に流し込んで急激に太るなりお尻を下にして落下した。
「ジャイアントパンダヒップドロップ!」
「くぅっ!」
前回は成す統べなくイシュリア共々巨大化したパンダに潰されたレリルだが、今回は二度目であり、何よりも今のアンノウンは万全ではない。威力は前回より落ち、レリルが雷を消して咄嗟に張ったドーム状のバリアによって受け止める。
「この攻撃、前回よりは威力が下ね。ならば受け止めて見せるわ」
前回は一撃でやられたが彼女は魔王の側近である最上級魔族。そんな彼女が張ったバリアは不調とはいえ、アンノウンが操るパンダの攻撃を受けても着弾面にヒビが入るが形を保ち、ヒップドロップを完全に防ぎ切った。
「そう何度も何度も……」
「あっ、オナラ出る」
「……へ?」
プゥ
そんな可愛らしい音と共にヌイグルミのお尻から出たオナラはヒビから密閉されたバリアの中に侵入。この世全ての臭い物をかき集めて腐敗させた様な悪臭はバリアによって拡散せずに留まる。尚、黒子は内部に残ったままだ。
「は、鼻が曲がる……」
バリアを解除して走り抜けるべく足に力を入れるレリル。遅れれば上に乗ったパンダに潰されるだけだ。勝負を決めるのは一瞬。バリアを解除し、新鮮な空気を求めて走り出す。だが、目の前に彼女が張っていたバリアを包み込むようにして一回り大きいパンダ模様のバリアが現れていた。
「甘いね、甘い。僕の大切な友達を傷付けておいて無事で居られると思ったのかい?」
その大切な友達である黒子はパンダの屁によって悶絶し、今は倒れ込んで痙攣している最中だ。
「だから……お仕置きだ~い!」
横たわった黒子の姿が消え、パンダが何時の間にか持ち上げている。そのままジャンプしたパンダの口から火の粉が唾を吐き捨てるかの如く飛び出し、パンダ模様のバリアを通り抜けて内部に入った。そして引火。大爆発である。
爆発が収まった時、内部では頭が爆発したレリルが倒れていた。
「知らなかったのかい? 絶滅危惧種を怒らせるとアフロになるのさ!」
黒子を担ぎながらそんな事を口にするパンダだが、その意識は一番近い屋敷の屋根に向けられる。正確には屋根の上で此方を伺う者達に油断無く警戒心を向けていた……。
アンノウンのコメント 本当は三話で終わるギャグ予定だったんだ




