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高き山の神殿にて……

章タイトル変更しました


纏めきれなくてプロット変更です

「ええぃ! 何度言わせるつもりなのじゃ。この馬鹿者がっ!」


「あだっ!」


 少し懐かしい夢を見ておる。儂が未だ若く、家業の鍛冶屋よりも信仰に人生を捧げたいと故郷を飛び出して少し経った頃、淀みから出現した魔族によって世界は混迷へと突き進んでいた。人は一刻でも早く神の助けが来る事を祈り、身を縮めて嵐が過ぎ去るのを待つばかり。待てば神が助けてくれる、だから自らは動こうともせずにな。


「朝か……」


 思わず微笑みながら目を開ければ夜明け少し前。朝焼けがもう少しで広がって行く時間帯じゃ。ベッドから起き上がって窓から外を見れば雲海の切れ目から海が見えた。


 此処は雲の上に頭が突き出たブリエル一の高山の上に建てられた神殿。そんな難所故に所属する神官もエルフを中心に逞しい者ばかり。……いや、一人例外が居ったな。


 それにしてもあの頃の夢を見たのは何時以来じゃろうな……。


「随分と久しい。……三百年、随分と昔になったな」


 こうして昔の事を夢に見て懐かしむとは儂も歳をくったと思い、壁の傍に設置した鏡の前に立てば深く刻まれた皺だらけの顔と白髪だけの薄くなった髪。長い時を生きられる体になった儂じゃが、別段不老不死でもないので仕方が無いのじゃが……。


「ちょいと彼奴が羨ましいわい。いや、鬱陶しい事が増えるだけか。前言撤回じゃな。……さて、そろそろ時間か。入って良いぞ」


「ガンダス様、お早う御座います」


 長い付き合いとなった仲間の顔を思い浮かべているとノックの音が響く。入室の許可を出せば若い神官が入って来た。若者ながら儂の側近を任している優秀な男じゃ。種族はエルフ、日に焼けた逞しい肉体を持つ豪傑揃いの種族……なのじゃが。


「相も変わらずなよっとしとるのぉ、キッカ」


「あははは。そりゃ筋肉は一夕一朝じゃ付きませんよ。ですが、ガンダス様のお供で険しい山道を走らされて少しは逞しくなったのですよ?」


 このキッカ、エルフらしくない優男であり、性格ものんびりとして穏やか。幼い頃から海に出るよりも本を読んだり音楽を奏でたりする方が好きだったと酒の席で語っていた。


 まあ、見た目に反してその辺の連中よりも根性がある。英雄候補でもないのに大した奴じゃと気に入って目を掛けたら順調に出世をしよった。本人は大きな神殿で上に就くよりも田舎の小さな教会で子供相手に教えを説く方が良いと愚痴っていた。気持ちは分かるがの。


「今日の予定ですが朝のミサの後は巡礼の方々との会談。それと多額の寄進を申し出た方が是非ともガンダス大司教にお会いしたいと……面倒ですよね」


「じゃな。だが、間違っても儂の前以外では言うんじゃないぞ? 他の連中は冗談も通じぬ堅物じゃからな。儂が小言を受ける。ちゃんと注意しておいて欲しいとな。……面倒臭い」


「賄賂が通じる俗物よりはマシですけどね。皆さん、その話を聞いて渋顔でしたよ。信仰心の深い人の可能性もあるから上辺で判断出来ないが、頻度が多いからと。それと分かってますよ。私が他人を舐めた態度を取るのはガンダス様の前だけですから」


 本当にほとほと嫌になる。もう田舎の小さな教会に隠居住まいとか望みたいんじゃが、後任が見つからなくての。


「お主、将来的に儂の跡を継いでみる気は……」


「無いですね。他の方と同じで世界を救った英雄の後任とか荷が重すぎますよ。上に行きたい出世欲が深くても流石に比べる対象が対象ですからね。……それこそ今回の勇者か仲間に期待しては?」


「英雄か。……そんな風に呼ばれて久しいが、儂はそんな大したもんじゃないんじゃがな」


 勇者、その存在が誕生したのもその頃。突如世界の人々の頭に最高神ミリアス様が語りかけ、希望となる存在の手助けをせよと仰った。神ではなく人に任せる事に混乱が生じ、世界が終わるだの神が人を見捨てただのと神官でさえ困惑する中、儂は何時も通りに過ごしていた。生まれつきの強さを使ってモンスターから人を守るだけ。どうにもならん事は神にお任せするべきじゃが、どうかなる事までお頼み申すのは無礼じゃろう。


「……儂が勇者の仲間?」


 だからまぁ、勇者の仲間に選ばれた時は驚いたし、小僧と小娘しかいないのも意外じゃった。……まあ、その内一人はまさかの女神様じゃったが、旅に同行して数日で儂は自分の役割を悟ったわい。神官が学ぶ回復や支援の魔法による支援? いや、それもあるがもっと重要な事じゃ。


 仲間は若者だらけじゃったが、どうも一癖二癖もある連中でな。ナターシャは金に汚くて、既に旅の支援金を貰っているのに立ち寄った先で謝礼をこっそり要求して懐に入れたり。……後に育った孤児院の支援の為と分かったが、自由気ままで金に汚いのは最後まで続いた。


 イーリヤは生意気盛りの小童な上に王族として育ったからか妙に気位が高い。じゃが、そのくせ卑怯卑劣な手段を好むので儂等は卑劣王子と呼んでおったわ。後々聖剣王と呼ばれたんじゃが、今でも爆笑物じゃな。


 ……キリュウとシルヴィアは……まあ、性格には問題が無かった。気骨もあるし、性根も真っ直ぐ。じゃが、文化も風習も別の異世界のもから来た者と女神、価値観やら常識が違うから世間ずれしとってな……ナターシャとイーリヤは直そうともせんかったから儂が苦労したんじゃよな。



「まあ、今回の勇者は子供だと聞いているし、期待出来るかどうかは微妙じゃろうな。……無事に引退出来るのは何時の日になる事やら……」


「私も早く引退したいですよ」


「お主は若いじゃろうに。若い頃からそれでどうする……」


 出世したいと目をギラギラさせるのは聖職者としてどうかと思うが、此奴みたいに一切興味が無いのもどうかと思う。……いや、儂もそうじゃったか。


「最近の若い者はどうとか年寄りは口にするが、結局数百年経っても変わらん物は変わらんの」


「三百年越えが言うと流石……うおっ!?」


 窓を外から叩く音に振り向けばクチバシで窓を叩くフラミンゴ。……フラミンゴッ!?


「何でこんな高山の山頂にフラミンゴが居るんですかっ!?」


「いや、儂に訊かれても……」


 頭にパンダのヌイグルミを乗せているし、妙な奴じゃ。誰かの使い魔じゃろうか?


「誰の使い魔かは知らんが……主は間違い無くアホじゃろうな……」


 どんなアホならあの様な使い魔を創るのか気になるが、顔が見てみたいとは思わない。……だって凄いアホなのは確信物じゃからなぁ。


 


アンノウンのコメント  マスターはボスが関わらないとアホじゃないよ!

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