二人の団欒
同じ話が多重投稿されてました クリックが二回扱いだったらしい
明日一周年!
「えっと、レリックさん。あの……元気出して下さい……プッ」
「おい、こら。最後吹き出しただろ。笑うんだったら、いっその事思いっ切り笑えや」
「あはははははははははっ! うひょひょひょひょひょひょっ!」
「元凶のテメェだけは笑うな、アンノウン!」
「じゃあ、僕の部下を全員呼ぶから皆で大爆笑を……」
「すんなっ!!」
晩ご飯前、レリックさんはお酒臭い状態だけれど、ちゃんとお土産にポテトフライを沢山買って帰って来たわ。出掛けた時と同じモグラのキグルミを着た状態で。あんな格好でどうやってお酒を飲んだりしたのかしらとは思うけれど、アンノウンが用意したキグルミだから、それだけで説明が終わっちゃうわ。
「ふふふ、ごめんなさい。でも、そんな格好で外で飲み食いして来たかと思うと可笑しくって。お店の人も困ったんじゃないかしら?」
「ああ、困ってたな。まあ、金さえ払えばこっちは客だ。お祭り気分の浮かれ野郎だろうが何だろうが、他の客に迷惑を掛けるわけでも無ぇんだし、追い出さたりはしなかったぜ。……俺の姿を見た途端に入って直ぐに出て行くのは居たがな」
「それってお店に迷惑を掛けてるんじゃないかしら? まあ、良いわ。賢者様達は今夜遅くにはレリックさんの新しい武器を受け取って戻って来るそうだし、私達はご飯にしましょうか。あら? もしかしてお腹一杯?」
「……いや、大丈夫だ。テメェと飯食う分は残してる。直ぐに用意するから皿を並べとけ」
レリックさんったら私と一緒にご飯を食べるのが大切な時間みたいな言い方ね。うーん、ちょっと自意識過剰かしら? まあ、誰かと一緒のご飯は美味しいし、別にどうでも良いのだけれど。
「……あら? ねぇ、アンノウン。レリックさんって何時までキグルミを着たままなの?」
「実はキグルミに使った魔法が暴走して、全然脱げる気配が無いって事にしているんだ。レリッ君には悪いけれど、ボスが帰って来るまでは我慢して貰う気だよ、面白いから」
私が口にした素朴な疑問。飲みに行った間もずっとモグラのキグルミで、戻って来た後もモグラのキグルミ。脱ごうとする気配も無いし、アンノウンが何かしているんじゃと思ったけれど、深刻そうな声からして予想外の事態が起きているのね。
「……あれ? って事にしている? 面白いから?」
……って、よく聞いたら故意にやってるんじゃないのかしら? しかも知ったら絶対に怒る女神様が戻って来るまでは続ける気らしいし。
「アンノウン。本当にレリックさんに悪いと思ってるの?」
「思ってるよ? 面白いかどうかって事が優先だけどさ」
何と言うか疲れたわね。イシュリア様でドッと疲れたのに、アンノウンに追い打ちを掛けられて。ご飯を食べたらさっさと寝ましょうか今日は羊達を呼び出して一緒に寝ましょう。
「てか、自分から言い出した仕事はどうしたんだよ、アンノウン!? 普通に一緒に帰って来たからツッコミが遅れたわ」
「そんなのとっくに終わらせているよ。僕はイシュリアとは違うんだよ、駄目女神イシュリアとはねっ!」
さっきからツッコミの連続だけれど、レリックさんたら忙しい人よね。お陰で私は随分と楽が出来るわ。特にアンノウンのターゲットが分散したもの。
「私、レリックさんが仲間になって本当に嬉しいわ」
「……そうか」
あらあら、照れちゃったわ。本人は隠せていると思っているけど、周りから見ればバレバレなのに気が付いていないのね。誰か教えてくれなかったのかしら? 確かクルースニクにはそれなりの数の仲間が居たはずなのだけれど……。
「あのぉ、レリックさん。前の仲間の事で相談したい事があったら私だって話を聞く位は出来るから。賢者様だって伊達に三百年以上生きている訳じゃないもの。女神様とアンノウンとティアさんが絡まなければ頼りになるわ。絡んじゃったら絶対役に立たないから無理だけれど」
「本当に辛辣な事をスラッと言うよな、お前。まあ、気持ちだけ有り難く貰っとく。……言っておくが嫌われたりしてないからな」
……そう。私は何も言っていないのに伝わるだなんて……きっと照れ隠しが鬱陶しいって思われていたのね。仲の良さそうだったナターシャさんやレガリアさんは団長と副団長だから中立じゃないと駄目で、大勢から不満の声が挙がっていたら……。
もう少しレリックさんに優しくしてあげたい、そんな風に思う私だった……。
「……ったく、ゲルダの奴。アレじゃあ俺が嫌われていたと思ってるのがバレバレだっつうの」
(変な誤解が加速しているのは黙っておこう。その方が絶対に面白いから!)
この日、私達は色々な話をしながら食事を楽しんだわ。特にイシュリア様についてはレリックさんが呆れたり驚いたり、有名な愛と戦の女神がそんなポンコツ駄目女神だって改めて聞かされてショックを受けたり。……只、何かを隠している風に思えるのよね。レリックさんったら私に何を秘密にしているのかしら?
まあ、良いわ。レリックさんが私に害が及ぶ事をするとは何故か思えないもの。……いえ、時々妹萌えのロリコンの疑惑は向けているけれど、疑惑止まりで確信に至った訳じゃないし。只、隠し事って除け者扱いをされて居るみたいで嫌なのよね。私がまだまだ子供だから不満に感じるのかも知れないけれど……。
「何だ? 俺の方をジッと見て……一番小さい奴な。その代わりピーマンの肉詰めのピーマンも持って行け」
いや、別に先に食べ終わったからってデザートのイチゴを狙った訳じゃないのだけれど、レリックさんは勘違いしたらしくイチゴにミルクと砂糖を沢山掛けたのを差し出して来る。
「好き嫌いはどうかと思うわ、レリックさん」
「……うるせぇ」
流石に十歳近く歳の離れた子供に注意されるのは気まずいのか顔を背けるレリックさんだけれど、さっきキグルミ姿だったのを笑っちゃったし、お詫びにピーマンだけ貰おうかしら。
「……おい、イチゴも持って行け」
「私はお昼にフルーツたっぷりのケーキを食べたから自分のだけで満足よ。それにレリックさんったら私がピーマンの肉詰めが好きだからって自分の苦手なピーマンを使ったのだもの。それを食べるのは構わないわ。でも、一個だけよ? 残りの二個は自分で食べて」
ふふふ、まるで私ったらお姉さんみたいね。まあ、弟ならレリックさんみたいなのじゃなくって素直な子が欲しかったけれど。
和気藹々とした団欒の時間。でも、楽しい時間は突然終わりを向かえる。突然鳴ったノックの音。賢者様かと思って出迎えたけれど、出来れば会いたくない相手だったわ。
「ククク、夜分に失礼する。ああ、お茶は結構だから気は使わずとも良い。ワインならば喜んで頂戴するがね」
何を考えているのか見えない表情からじゃ分かりにくいキグルミ達の中で、数少ない何を考えているのか分かってしまう鳥トンが扉を開ければ立っていた。この時点で私の気分は台無しよ。そして、今からもっと嫌な思いをするのでしょうね。
「……お茶漬けでもどうかしら?」
「おや、これは辛辣だ。確かパップリガでも今直ぐ帰れと暗に伝える言い回しだったな。帰るとも、当然な。だが、その前に用件を伝えるが、その前に言っておこう。異なる世界の出身とはいえ神に仕える者だった私が言うのは何だが、神とて万能ではないのだ。自分が何も出来なかったからと気落ちする必要は無い。無論、それを許さぬ者は大勢居るだろうが」
「本題を言って欲しいのだけれど?」
「君が気にしていた少女の現状が判明した。そして数多く建設中の建物の中でも大本命らしき城の場所の手掛かりもな。では、詳しい話を聞くが良い。言葉を翻訳する為の道具は使っているからな」
鳥トンはそう言って誰かを手招きする。姿を現したのは頭が二つ有る巨大な鳥だった。
「……ねぇ、コルスは何処に居るの? 僕、コルスに会いたいよ」
モンスターだと身構えるけれど、私は直ぐに構えを解く。目の前の相手から聞こえたのは寂しそうな幼い子供の声だったから……。
アンノウンのコメント あの展開でどっちが生き残るかっていったらねぇ…‥




