チキチキ! 神様だらけの神前式 in 神の世界
異世界よりコピーとして召喚され、見事魔王を倒して勇者の使命を全うする。普通の物語ならば少しエピローグを挟んで終わりだろうが、生憎私とキリュウの人生はその後も続く。場面を急に切り替わって何年も経過する、なんて事も無く、今日の次は明日で、明日の明日は今日から見れば明後日だ。
まあ、具体的に何が言いたいか、それは事後処理が待っていたという事だよ。ええい! そういう事は権力者がやっていろ! イーリヤ、お前なら英雄で王族だし丁度良いだろ!
魔族が完全に消えても犠牲者が蘇りもしないし、傷が幻みたいに消えもしない。どれだけ被害が出ているのか、封印が既に終わって復興が一段落していた世界が他の世界の援助を行い、調査や今後の復興計画、治安維持や不安を取り除く宣伝の意味を持ったパレードを連日連夜行い、勇者一行は大忙しだ。
その上……。
「おーい! こんなにキリュウ宛ての王族や貴族、神殿の連中から婚約の申し込みが来てるよ。どうせ燃やすんだろうし、さっさとお断りの手紙を書く為に住所を控えて、さっさと僕が選ぶ手伝いをしてよ」
まあ、世界を救った勇者の血を取り込みたいって連中から余計な真似をされてな。邪魔だからとイーリヤに散々文句を言われた物だ。ったく、四人固まっていても仕方が無いからとナターシャ達と別れたが、向こうも大変な事になっていそうだな。
「……うーん。国の再建にはお金も人でも必要だけど、後々口出しが頻繁に有ったら面倒だし、独立性を重視しつつ迅速な支援をしてくれる所は……」
仲間内では卑劣王子だのと呼ばれるイーリヤだが、英雄としての呼び名は剣聖王。本人は未だ王位継承していないと笑っていたが、あのヤンチャ坊主が数年の旅でよくぞ成長したものだ。自分宛の手紙を世界や立場別に分類し、自らの結婚を既に政治の道具として見ている姿は寂しい物が有るがな。……女神としてクリアスに居るだけならば感じなかった感情だ。私は随分と人に影響されたな。
余所の世界から特定条件に当てはまる者を召喚するだけなら兎も角、条件を一人しか当てはまる者が居ない者に絞り、更にその者のコピーを作成して召喚する。今思えばソリュロ様に依頼すれば良かった無茶だが、頭の固かった私は自らの使命だとして思考を放棄、結果が弱体化だ。だが、それも既に元に戻っている。今の私は英雄シルヴィアではなく、女神シルヴィアなのだ。
「……おい、イーリヤ。私達の仕事も一段落だ。五人で集まるのは確か十日後だったな?」
「うん、そうだけど……そうか。まあ、旅の仲間でも何時までも一緒な訳じゃない。旅が終われば別れは必須だよね」
私の問い掛けにイーリヤは手を止め、少し寂しそうに呟く。そう、女神となった私も、本来この世界の住人ではなくもう直ぐ人とは少し違う存在となる キリュウも使命が終わったならば長く居座るべきでは無い。退去の時、仲間と別れる時期が間近に迫っていた。
「……ふん。まあ、向こうに戻っても元気でな。不老不死の存在に有限の命の儂が言うのも変じゃがな」
「シルヴィアと喧嘩して家を追い出されたら私を頼って良いわよ、キリュウ。掃除くらいはして貰うけど」
「僕も国を復興した式典とかが必要だし、祝辞位は送ってくれよ?」
「「「それと結婚式に呼ぶのは忘れないように!」」」
ガンダス、ナターシャ、イーリヤ。神にとっては僅かな時間だが人の子にとっては長い間苦楽を共にした大切な仲間達との別れの時。余計な邪魔者は一切入らせず、別れの挨拶を行っていた。
「勇者が失踪するとか面倒をお掛けしますね。結婚式には多少の無理を押し通してでも参加して頂きますよ。ガンダス、信仰する神の隣の席が良いですか?」
「当然じゃろ。結婚式そっちのけで話をしてやるわ」
「てか、結婚式って永遠の愛を神に誓うけどさ。シルヴィアちゃんって永遠に生きる上に愛の女神の妹でしょう? 結婚の挨拶の時に既に報告しているんじゃないの?」
「うん? ああ、既にしているぞ。キリュウがウェディングドレス姿の私を見たいと言うし、一応結婚するぞと他の神に改めて報告せねばならぬのでな。正直言って結婚式とか面倒だ。そもそも結婚式とか、何故わざわざ行うのだ? 姉様も普通に神殿で祈って伝えれば気が向いた時に祝福すると言っていたぞ」
「これだから神って奴は……」
む?
どうもイーリヤに呆れられているし、姉様は問題児だな、全く。私には良く分からんが、人にとってはどうかと思う発言だったのだろう。本当に我が姉ながら情けない。
「シルヴィア、本当にイシュリア様に式の進行と神父役を頼むのですか? ちょっと不安が残るのですが……」
「大丈夫だ。打ち合わせを先にして、問題が有るなら姉妹による拳での話し合いを行えば良い。漸く本調子に戻ったし、軽く動かしたい気分なのでな。……その前にストレッチとマッサージを頼めるか? お前にやって貰えるだけで嬉しい」
「なら断る理由は無いでしょう。私も貴女に触れたい事ですしね」
……正直言って姉様に式を任せるのは不安が募る。旅の途中でも何度か顔を出してキリュウを誘惑し、結婚の報告の際も誘惑して、誘惑してばかりだな、あの愚姉は。だが、式において愛の女神である姉様以上に相応しい神など……ん?
「いや、別に女神に拘る必要は無かったな。キリュウ、早速頼みに行くぞ!」
「え? 頼みにって……ああっ! そうでした。神は司る物毎に男女対ですし、男の神様だって居たのに忘れて居ましたよ!」
そう。姉様が問題ばかり起こして心労ならぬ神労の女神と呼ばれる程に印象に強い方なので忘れられがちだが、男の神にも愛と戦を司っている神が居たのだ。確か名前は……なんだっけか?
「……では、暫しの別れじゃな」
「何か寂しい気もするし、求婚前からイチャイチャしてるのを横で見せられなくて清々する気もするから複雑よね」
「それでもって自分は女神だって一線を引こうとするんだからさ。じゃあ、またね」
では、本当に別れの時だな。皆、それぞれ使命だの夢だのが有るから再び共に旅をする機会は無いだろうが、私は三人の事を決して忘れんと心に誓った。
「ええ、絶対に会いましょう」
「次は結婚式でな」
さて、クリアスに戻ったら急いで名前を調べねば。……ダヴィルに教えて貰うか。私の従属神の中で一番優秀だしな。
まあ、こうして仲間と別れた私とキリュウは続いて結婚式の準備に取りかかった。姉様が不満に思って鬱陶しい事をせぬ為に何か適当な役割を与えたり、面白半分どころか完全なる好奇心で参加を表明した神への対応。姉様が暇潰しに作った真実の木とやらの扱いに困り、仲良くなった王族に押し付けたりとかな。
「……僕の事をちゃんと覚えてくれていたんだ。イシュリアでさえ忘れててるのに」
「……うん。当然だろう」
「所でどうして目を逸らすの?」
こんな風に話を進め、遂にやって来た式当日。特別にクリアスに来るのを許された仲間達に祝福され、途中から頭のネジが外れた連中の宴の席に変わりながらも私とキリュウは永遠の愛を誓い合った。しかし特別な計らいで用意された式場だが、実はミリアス様の家の一つらしい。皆、遠慮無く汚しているな……。
ブーケトス? 面白そうだからと一部を除いて殆どの女神が参加した結果、権能が飛び交う狂乱の場になって最後は何故か離れた場所のミリアス様の腕の中に落ちた。
「ええっ!? 次の花嫁はミリアス様ぁ!?」
「男なんだけど……」
ならキャッチは無効だと殺到する女神達。先程までの争奪戦と今現在の牽制しあいで破壊される神殿。頭痛と胃痛を堪えていた。
「……それで私に何の用かしら? 新婚初夜だから気を使って乱入しなかったのだけど」
その日の夜、真夜中に呼び出された姉様は乱交パーティーの最中だったらしく少し不満そうだった。普段は呼ばずとも来るのにな。私だって普段は姉様を頼る愚行はせぬが、今回はどうにもならないのだ。
「……いや、ちょっと問題があってな」
「え? キリュウのアレが役に立たないの?」
「……殺すぞ。そうでなくてな……私もキリュウも詳しい方法を知らんし、どうせだったら色々と楽しみたいのだ。姉様だって、その分野でなら頼りになるだろう?」
「言い方っ! まあ、良いわよ。参考文献が有るし、どうせだったら私が実践で……嘘です」
まあ、こんな風に問題も解決し、私とキリュウは楽しくやっている。さて、今後も問題が無ければ良いがな。
「ごめ~ん! やらかしたから後始末手伝って~!」
……どうやら無理らしい。主に姉様が原因で。
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