ポンコツ駄女神イシュリア様
ブクマ増えました! 感謝です このまま総合評価千目指します
新作執筆中 一週間分書いたら連日、次からは週二回程 兎に角イチャイチャするカップルが主役の現代ファタジー
王様候補の番剣達 投稿したら宜しくお願いします
異なる環境、異なる文化を有する六つの世界が輪になって連なる六色世界。その輪の中心に存在し、六色世界からは自在に行き来可能な者が限られる無色の世界クリアス、神が住まうこの地にて、最も荘厳で、最も神聖な空気漂う神殿の最奥の玉座に座る少年は憂いに満ちた顔をしていた。
最高神ミリアス。唯一男女対ではなき絶対的存在、神々の王。キリュウからは面倒な仕事を笑顔で押し付けるパワハラ上司の認識の彼だが今日の顔は浮かない。いや、これこそミリアス普段浮かべている表情。彼の耳には今、世界中の人、獣、植物の声が届いていた。
「……またか」
神は平等で有るべきだ、それがミリアスの信念である。人の姿をした者が多い故に獣人やエルフ、ドワーフを卑下する者が存在するが、神にとっては皆同じ。それは人間種に限らず、獣も草木も平等だ。弱肉強食の原則、自然の摂理だからと口出しはしないが、踏み付けにされる小さな花の悲鳴さえもミリアスは耳を傾ける。
他の神の価値観も基本的に変わらない。その中でお気に入りの相手には特別な何かをするだけで、優劣を決めてはいないのだ。只、どうしても人の子の声は届きやすい。文明を築き、様々な文化や知識を生み出した故に人間以外の存在だけでなく、同じ種族、共同体の仲間であっても尊厳と命を踏みにじる事が有るのだ。
この時、ミリアスに届いたのは神に助けを求める祈り。それだけなら構わない。人の子が神に依存し自立を妨げる事の無い範囲で力を貸すだけだ。問題は予め差し出される対価。欲しておらず、現物が届きもしなくても気持ち自体が嬉しいミリアスだが、今捧げられようとしているのは幼い子供、生け贄だ。
「……誰が贄など欲しいと言った? 殺した所で届きはせぬのに。例え届いたとして、人の子がどうやって神の役に立つと言うのだ」
普段のミリアスはキリュウや他の神の前ではこの様な話し方はしない。これこそが仮面で偽った最高神としての顔ではない素顔。決して他者には見せぬ弱気な顔だ。
神は極力不干渉が原則。故に無意味に首を跳ねられ、血を壷に入れられて捧げられても悲しみしか感じず、遺憾の念すら届けられない。世界中で起きている悲劇全てを見聞きしている彼は一人の人物に意識を向ける。他の事全てをあたまにいれつつも、彼が考えるのはその相手だ。
「……イシュリアめ。ちゃんと伝えろと言った筈だ」
全てを見通す絶対神なれど、神相手には互いの神の力が反発して分かり辛い。それは神の周囲に居る者達に関しても同様で、目を向けた相手の今の様子から伝言を忘れていたのだと推察するしかなかった。
「……いや、本当にいい加減にして欲しい。最高神に心労を与えるだなんてどうなっているのだ?」
その呟きに答える者は居らず、誰かが居ても無理だろう。ミリアスに理解不可能な事柄を理解して言葉を導き出せる者が存在する筈が無いのだから。
「……矢張り私に賢者の名は重い。誰ですか、最初に賢者だなんて呼び出したのは。羞恥プレイはシルヴィアとするのだけで十分なんですよ」
私の前に横たわる干からびた騎士の死骸、そして宙に浮く無数の赤い粘液。一つ一つの重量は常人の血液の総量よりも少し重い程度で、どうやら血液の代わりに体内に潜んでいたらしい。
先程襲って来たのを返り討ちにしたのですが、どうも増殖する性質があるらしいので町に結構な数が潜んでいそうですね。私が何故賢者の名を恥ずかしいと思っているかというと、地球で読んだ小説で主人公を導くポジションの異名に多かった気がしますので成りきっているみたいですし、どうせなら、魔法の力が凄い! みたいな方が良かったですよ。賢者って頭の良さも求められそうで面倒ですから。
「ん? 羞恥プレイがしたいのか? 他人の前に肌を晒す以外なら構わんぞ?」
「誰が晒しますか! 貴女の恥ずかしがる姿を見るのは私の特権ですよ! でも、早速今夜お願いします!」
そしてこの粘液、どうもゴーラと共に召喚された可能性が高い。ったく、昔から思っていたのですが、物語とかでも強大な存在を復活させたり呼び出したりする連中って何故相手が自分に都合良く動いてくれると思うのでしょうか? 恩義で動くなら封印されないでしょう、多分。
「寧ろ私も研究に参加したかった! 資料を読むだけじゃなく、語らってこそ分かる事も有るのに!」
ですが粘液……いえ、ガーラ(ゴーラと同様に元の世界で名付けられた種族名らしい)は随分と危険な存在らしい。解析の結果、分裂した体が体内に入れば知能を奪って体を乗っ取り、体が使い物にならないと判断すれば脱出して奪った肉体の血液と魔力を持ち帰る。凄く興味深い性質ですし、正直言って興味深いし、是非とも現地に行って魔法の研究もしてみたい。だって、この様な生物が存在するのですし、他にも多くの奇妙な生物が存在し、それによって独自の発展を遂げた魔法が存在する筈なのですから!
この旅が終わればシルヴィアと旅行で向かうのも悪くありませんね。下調べをしっかりして、旅行の計画を立てた上で存分に楽しむ。
ああ、楽しむと言えば、今夜の羞恥プレイはどの様な内容にしましょうか? 彼女は可愛らしい服装が苦手ですし、師匠みたいにフリフリの服装を使って着衣状態でのも楽しめそうです。シルヴィアは意外と恥ずかしたがりですし、素晴らしい反応を見せてくれるでしょう。……あ痛っ!? どうやら口に出していたらしく、シルヴィアに抓られました。でも、この時点で可愛らしい照れ顔を見る事が出来たので大満足です。
「……馬鹿者が」
本当に彼女に恋をして良かった。シルヴィアを嫁に出来た私は誰よりも幸せ者ですよ。ですので早く終わらせましょうか。ゲルダさんは別の世界に泊まる予定だと師匠から連絡がありましたし、少し早めに楽しむのも悪くない。
「では……ほいっと!」
既にガーラの解析は済んでいるので、後は分体全ての位置を把握し、本体を滅するだけの楽なお仕事。既に各地に散らばった分体の捕捉は終わっていますし、元々肉体に結構な負荷を掛けるのでそれほど遠くには行けはしない。本能として体の動かし方を理解している訳では無く、鳥や魚の肉体を奪っても飛ぶのも泳ぐのも不可能。
ゴーラの方の解析に手間取ったのは……まあ、二次方程式を解くのに鶴亀算の解き方を試していたみたいなのが理由です。異世界の存在なのだから仕方が無いんですよ!
ガーラの全ての分体がニカサラに集まりましたので、賺さず拘束魔法を使おうとした時、アンノウンのパンダの目が輝いて上空にビームを飛ばしたので止めておきました。何かしたいみたいですし、自主性は大切ですからね。そのまま空を見上げれば、昼間にも関わらず光り輝く満天の星が光の線で結ばれてパンダ座を描く。
「スターライトパンダビィィィィムッ!」
星の一つ一つから降り注ぐ光はガーラの分体が乗っ取った肉体を次々とキグルミ姿にした上に、お尻に括り付けた風船で宙に浮かしている。……うーん、ちょっと派手にやり過ぎですね。関係無い人までパニックになっていますし、あのマッチョな鮭はレリックさんですよね? シルヴィアに叱られたばかりなのに悪戯をするだなんて……。
どうやら私も心を鬼にする時が来たらしい。厳しい罰を与えましょうか。
「アンノウン、三日間夕食後のデザート抜き(三時のオヤツは別)」
許して下さい、アンノウン。時に厳しい態度を取らねばならないのですよ。私が拳を握りしめてアンノウンから目を逸らした時、諸悪の根元が姿を現す。一体どれほどの血液を得たのか分からない程に膨れ上がった体を、下水口から水が逆流したかの様に現れました。そして中心部に現れたブラックホールに飲み込まれて消え失せます。ええ、楽勝でした。精々が最上級魔族より二段ほど劣る程度の存在など、片手間で十分でした。
「問題は此処からですね……」
本体が死んだとしても分体まで死にませんが、三日間も放置すれば死ぬでしょう。所詮は栄養源集めの存在ですし、それほど長時間活動するエネルギー等は与えられてはいませんから。只、襲われたから対処しましたが、魔族が無関係なら町の復興にはそれ程手が出せないのですよね。……町長が頼んで来たら面倒です。変な噂をされたくは無いですし。
「ねぇ、マスター。僕のキグルミ達を使えば良いよ。規定の範囲外だからさ」
「おや、それは素晴らしい。では罰則は無しにしてあげましょう。ですがレリックさんは降ろして差し上げなさい。キグルミも脱がすのですよ?」
「うん!」
素直に返事をしていますし、アンノウンは本当に良い子で助かりますよ。まあ、少し悪戯好きなのが困りますけど。
こうして異世界からの来訪者の起こした事件はゲルダさんの休暇中に無事に解決しました。キグルミ達に犠牲が出た近隣の復興の手伝いを任せ、私達は一旦別の場所に向かいましょう。誘拐事件に関しては何一つ進展していませんからね。……ミリアス様なら分かるのでしょうが、勇者が解決すべしって決まりが有りますから無理でしょう。
「ねぇ、あの少しワイルドな彼についてなのだけれど……」
ですが、よりによってこんな時にイシュリア様の登場です。折角帰って安心していたのに、口には出しませんがトラブルメーカーなポンコツ駄女神の登場に不安が隠せる自信が有りません。
「一体彼がどうしたのですか?」
「いやね、伝えるのを忘れていたのだけれど、勇者の仲間の選定のシステムの不具合で反応が無いだけで、彼が最後の一人だから」
「……はい?」
いや、そんな重要な事を伝え忘れないで欲しいです……。
「あっ、それとミリアス様が誘拐犯について独り言の体を取って話したのだけれど、その時は独り言だと思っていたから忘れちゃったわ。ごめんね」
「何をやっているんですか、このポンコツ駄女神ぃ!」
応援宜しくお願いします やる気の燃料をどうか!
アンノウンのコメント 仲間にならない初期案では死んでいたよ、彼 絵の発注で救われたね
次回八章! 番外編的なのの予定です




