先生
双子ちゃんと、感動しすぎて疲れ気味のルドを交えて会議を再開。
と、そのまえにメンバー紹介と軽い雑談をする。
メンバー紹介のリアクションは想像通り。いつものやつ。
なに!? 其方が造っただと!?
すごーい。口から卵産んだのー?
レイスの体……、だと?
こんな感じ。
まぁ管理者から直々に渡された能力だから多少はね。
にしても驚きすぎじゃないだろうか。特にルド。
フューリーが不死身だとか、死者蘇生できる天使がいるとか、レイスがいる限り死なない奴とか、虫を強制的に操れる、とかその辺教えたらリアクションが面白そうだな。
今度やってみよう。
「ところで皆さんはどうしてヒヒに襲われてたんですか? 視認できる場所にしか通路を繋げられないにしても、それをいくつも繋げて遠くに行けばいいじゃないですか」
「簡単に言うがな。あれは高度な術なんだぞ」
「でもファンさんはそうしてましたよ?」
「あれの十八番が《ゲート》だからな」
「ルドさんの十八番はなんなんですか?」
「儂は……、ない」
「ない?」
どういうこと?
「あっ、それはねー」
答えてくれたのはヴェスト・マウ。
そして説明はこんな感じ。
魔術の適性が魔法より厳密だということは知っていた。
魔法は適性がなくても使えないことはない。が、適性のない魔術は使うことさえ叶わないらしい。
そして適性のなかにもグラデーションがある。まぁまぁ得意、得意、超得意みたいに。
例えばルゥなら《ゲート》が超得意、結界が得意、魔力を樹上に伸ばす感知などがまぁまぁ得意。双子ちゃんは《障壁》が超得意で他は不明。
本来、魔術師は試行錯誤しながら自分の超得意を探していく。膨大な時間と労力を費やして初めて手にする魔術、それが超得意、十八番になる。
が、ルドは敬愛するル・マウがかつて使用していた魔術にしか興味がない。手を出す魔術が限定されているために超得意を発見するまえに得意やまぁまぁ得意を先に習得してしまった。
魔術師のなかでは珍しいケースらしい。さすがはルゥマニア。情熱が違う。
「ルドさんって本当にルゥが好きなんですね」
「生きる伝説、魔道の祖、最高の狩人。ル・マウはあらゆる魔術師の完成形だ。おなじ時代に生きている幸福を忘れ、下らん自己擁護のために彼を否定する魔術師共がいると考えるだけで腹が立つ」
「自己擁護?」
「ル・マウのやり方はもう古い、我々こそが正しいのだとそう主張している一派がいる。自らの理論の正当性を主張するためにル・マウを否定しているのだ」
「やり方とは?」
「魔術習得までの過程だ。ル・マウは知識を得、それを再現するためには、不断の努力と知への献身が必要であると説いた。が、新しい魔術の考え方をする一派は、より簡便に魔術を習得すべきだと主張する」
「簡単に出来るんですか?」
そりゃ朗報だ。俺も使いたい。
「やることはデ・マウと変わらん。精神を支配して、強制的に知識を詰め込み、他者から新しい価値観と魔術に必要な言語を与えられる」
「実績はどうなんですか?」
「自力で習得するよりよっぽど早い。が、そうやって魔術を憶えた魔術師は皆、感情の起伏が薄くなったり人格が変容する。その上、暴発事故も桁違いに多い」
へぇ、そんな集団がいるんだ。
なんかマトモな手段じゃなさそうだ。危険な香りがプンプンしてくる。そのうち会ってみたいもんだ。この目でみないと判断がつかん。
「なんか危なそうですね。で、話は戻りますが、どうして通路で逃げなかったのです? ファンさんみたいな使い方が出来ないにしろ、視認可能な範囲の高台などに逃げたらどうとでもなったのでは?」
「あぁそれはな、ヴェストとオストが障壁を張ってしまったからだ」
「障壁を張るとどうなるんです?」
「ヴェストとオストの障壁はあらゆるものを通さない。空気も、衝撃も、魔法も、魔術も」
なにそれ凄い。
「つまり障壁のなかにいたから通路を繋げることが出来なかった、と」
「情けない話だが」
「まぁ急に襲われたのなら仕方ないですよ。あのヒヒの群れに襲われて冷静に対処しろってのは無理な話だ」
障壁か。
かなり使えそうだが、タイミングを考えないとジリ貧になりそうだな。例えば怪我人とかが出た時に障壁に引きこもって治療したとする。物理無効、魔法無効の環境下で安全に回復できるだろう。しかし時間をかけすぎると障壁の周りを取り囲まれる。さっきのヒヒみたいに。するともう障壁は絶対に解けない。しかもあれってかなり目立つからな。攻めてくれって言ってるようなもんだ。
「オストが障壁しないと危ないよって言うからやったんだよ!」
「違うよ! ヴェストが言い出したんだ!」
はいはい、わかったわかった。
「ちなみにオストさんとヴェストさんはどうやって魔術を習得したんですか? 自力? それとも危なっかしいやつ?」
「あんなの使うはずないじゃん!」
「自力に決まってるじゃん!」
そりゃそうか。自力じゃなかったらルゥの再来なんて言われてないはずだ。
「すみませんでした。普通に考えればわかることでしたね。さて、紹介が終わったのでそろそろ作戦会議をはじめましょうか。皆さんにも参加して欲しいのですが構いませんか? 移動で疲れているのなら後日でも構いませんが」
「儂は構わん」
「「私も大丈夫ー」」
「では続きを。次は弓将ルベルですね。マンデイ、映像を繋げて」
「うん」
マンデイから伸びる魔力の導線に魔術師三人組がわかりやすく混乱している。
「あっ、これを繋ぐと映像がシェア出来ます。マンデイの能力ですね。痛くも痒くもないので安心してください」
「「はーい」」
「うむ」
納得してくれたみたいだ。
「ルベルはかなり卓越した――」
戦闘の映像を送る。と、双子ちゃんが騒ぎ出す。
「うわー凄いねオスト!」
「見て、矢が飛んできた! キャー!」
「あははははは」
「あははははは」
まったく賑やかだな。
真剣に話をしたいところではあるが、この双子ちゃんにとっては初めてのこと尽くしだもんな。ゆっくり慣れていって貰おう。
「マンデイを介すと自分がイメージした映像を送れます。例えばコレ。マンデイが生まれた時の僕の記憶です」
「いまと全然違うねー」
「そうだねー」
当時は全身真っ黒で、目も耳も存在してなかったからな。
「成長したんです。次、これはマグちゃんの卵です。で、孵化し、幼虫に。この頃は食べてるか眠っているかのどっちかでした。そしてこれが蛹時代。ゴマとハク用に造った犬タワーで蛹になりました。羽化は実に感動的でしたね。現在のマグちゃんみたいですが色が違うでしょう? ラピット・フライは成虫になる時に、色を獲得するのです。その個体が最も心動かされた色に。マグちゃんの色はこの花畑の色です」
「「うわーきれい」」
「僕とマクレリアは、マグちゃんに楽しい思い出の色になって欲しいと考え、不干渉地帯のなかをピクニックしたんです。他にもこんなのとか、こんなのとか候補があったんですよ?」
「「いいなー」」
「一段落したら不干渉地帯を案内します。僕たちが護衛するので安全です。もちろん最低限のルールは守ってもらいますがね」
「「楽しみー」」
「ル・マウが暮らす森か」
食いついてくれた。なんか嬉しいな、この場所に興味をもってもらって。
「この森は本当に豊かで美しい場所なんです。もちろん危険もありますがね。さてルベルの話に戻りましょうか」
「「はーい」」
なぜだろう。学校の先生になった気分だ。
「僕はリズさんのスーツを見破った弓兵がルベルだと考えていますが、リズさんはどう思いますか?」
「間違いないと思います。ファウストさんに攻撃していた人の弓を引き絞る音、足音はかなり似ていました」
「やはりそうですか。ルベルはかなり腕の立つ弓兵です。戦闘が市街地であったこともあり、熱源が多すぎてサーモグラスが役に立たなかった。立ち回りがうますぎてどこから攻撃してきているのかがわからない。
相性有利なのは矢を無効化できてかつ遠距離攻撃が可能なヨキさん、そもそも矢が通らないゴマ、弓の射程外から狙えるリズさん、樹状に魔力を伸ばす魔術で索敵しゲートで距離を詰められるルドさん、この辺でしょう。
不利だと考えるのが、近接戦闘を主体にするマンデイと僕、一撃もらったら怖いマグちゃん、遠距離で打点のないハク。この辺になります。
ルベルがいるだけで様々な角度からの攻撃の可能性を考慮した動きをしなくてはなりません。優先的に落としたい相手ですね。
このメンバーのなかで最も有利なのがリズさんです。敵より早く発見し、射程を押し付けることが出来れば、対処できそうではある。
ですが、逆にルベルが戦闘可能な状態でかつリズさんがルベルの位置を把握できていない状況であれば、恐ろしい集中力で確実にターゲットを仕留めるリズさんの強みは完全に消されます。その集中力故、周りが見えなくなり、遠くから飛んでくる矢に反応できないから。
ですので、もしルベルが現れたら、リズさんが優先的に対処してください。相手の位置の捕捉さえしていればリズさんが負けることはないでしょう。
さっき言った有利がとれているメンバーも積極的にカバーしてあげるように。そして不利だと伝えたメンバーも相手の位置がわかっていて、距離を詰めることが出来たら攻撃して構いません。ですが、くれぐれも安全第一でお願いします。無茶な特攻は絶対に許さないからね? なにか異論や意見がありますか?」
「……」
「なさそうなので次に――」
ん?
ヴェストが挙手してる。トイレかな?
「どうしました? ヴェストさん」
「ファウストさんのキャラが豹変したので困惑してまーす」
「あっ、いつもこんな感じです。聞き取りにくいですか?」
「もう少しゆっくり話してもらうと助かりまーす」
「わかりました。気をつけます」
次はウザ飛竜だな。




