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転生


 いつからか人生が変な方向に進み出した。


 理由もなく他人の視線が恐ろしくなって、誰かが近くにいると満足に息も出来ない。


 子供の頃はよかった。誰とでも仲良くなれるタイプだったし、勉強や運動も苦にならない、いわゆるクラスの中心人物のひとりだった。


 だが破滅の鐘の音は少しずつ近づいてきていた。


 最初は小さな違和感だった。


 クラスメイトの笑い声や視線、ペンがノートのうえを滑る音、そういう小さなノイズが、まるで車のクラクションとか雷鳴みたいに大きく響いて脳を揺らした。


 違和感は日に日に不快感へと変わっていった。


 気のせいだと思って様子をみた。しかしどれだけ時間が経っても改善せず、むしろ悪化していく。


 しだいに周囲の人間が俺を騙そうとしているとか傷付けようとしていると思い込むようになり、中学に入学した頃には自室のドアは重く閉じられてしまった。


 どこで間違ったのだろう。


 ドアノブにかけた革のベルトを眺めながら考えていた。どれくらい、そうしていたのかわからない。いくら考えてもなんの成果もあがらない。


 頭のなかで拍動する血管の音が嫌に響いていた。


 中学一年生の夏、親に連れていかれて精神科に通いはじめた。道中はなぜか売られていく奴隷の気分になった。いくつもの薬を試し、老いた医師と話をしたが、症状は改善しなかった。


 通信制の高校に入学した。ここから人生を変えてやるんだとポケットのなかで強く拳を握った。しかし次の日、俺はガタガタと震えながら布団のなかでうずくまっていた。


 漠然とした他人への恐怖が、俺の人生をぶち壊してしまった。普通の人たちが普通にこなしている日常が送れない。


 もういい、もう無理だ。


 ドアノブにかけられたベルトの輪郭が、テレビの青白い光を反射していた。


 くだらない人生が終わった。




 気がつくと光に包まれていた。なにも聞こえず、体があるという感じもしない。ただ光だけを知覚している。


 俺はうまくやったのかと思いながら、一番強く輝く場所を、ただなんとなくみつめていた。


 しかし不思議だった。


 俺はベルトを眺めていたし、いまからそれを首にかけようとしていたが、行動には移していなかった。


 いつ死んだんだろう。


 ふと光のなかから音が響いてきた。


 ノイズだ。


 チャンネルの合っていないラジオのような。


 次第に一つ一つの雑音がまとまっていき、声になった。


 ――あなた、の人生、は終わ、った。次、のステージが、はじま、る。


 もういいよ、そんなのはじまらなくていい。次なんてないんだ。


 ――あなた、の人生、は終わ、った。次、のステージが、はじま、る。


 だからもういいんだって。


 ――私は、あなた、の名もな、い世界、の管理者。神。あなた、は父、の世界の、不具合を修正し、なくて、はなら、ない。


 自分でやってくれよ神様。俺の知ったこっちゃない。


 ――私の罪、に対する罰、があなた、の再構成。あなた、の罪に対する罰、は労働。あなたは守、らなくて、はならない。約束を。友人、として。


 なんで俺が。


 そこで光が一点に収束していき、俺を支えていたなにかが外された。


 体が落ちていく。落ち葉みたいにゆっくりと。


 ――あなた、は、再構成された。彼、を止めなくて、はならない。約束、を果たさなくて、はならない。

 この小説をブックマークしてから腰痛が治り、妻が優しくなり、孫が懐くようになりました。しかも逃げていたペットの猫まで帰ってきたのです。ブックマークをして本当に良かった。


            (群馬県82歳 無職男性)



 このしようせつに、ぽいんとひようかをしたら、おとうさんとおかあさんが、けんかしなくなりました。どうもありがとう。


            (愛媛県7歳 女児)



 僕はこの小説に感想を書いてから大学の単位がとれました。そして「◯◯さんって頼りになる」と女性にももてはじめ、モデルの彼女ができました。ついでに大富豪の孫である事実が発覚し、遺産7兆円が転がり込んでくることに。最近は札束のお風呂に入っています。


            (京都府22歳 大学生)



 ※これは個人の感想です。

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[一言] ブクマするしかない
[良い点] 意味深な出だしで始まったと思ったら週刊雑誌のような広告風後書きで笑ったのでブクマしました
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