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時の段差

病院の帰りがけ・・・。

おばあちゃんの家の近くまで来て、夕食を買い忘れたことに気が付いた。


「夕飯の買い物するの忘れてた。ここからだったら、モールの方が近いかなぁ?」


山岡君に尋ねると、怪訝な顔をされる。


「モールって?」


「イモンだよ。イモンモール」


「イモン? この辺には無いよ」


えっ? 

そういえばイモンが出来たのって……そうか、私が高一の時だった。

出来たばかりの開店セールの時に、高校の通学用の自転車を買ってもらったっけ。

おばあちゃんには高校の制服を見せられなかったんだよなー、はぁ。



「だったら、マルヨシってまだある?」


「あるよ。うちの近く」


そうか山岡君の家って、おばあちゃんちの近くなんだな。



二人でマルヨシまで行って、そこで別れた。


別れる前に「うち、そこだから。なんか困ったら言って」と家を教えてくれた。

マルヨシより三軒先にある、洋風の家だった。

ありがたい。

事情を知っていてくれる人がいる。これってめっちゃ心強い。



買い物をしてからおばあちゃんちに帰った。

自分の家より、我が家みたいな感じがする。


お茶を入れて、ぼそぼそと買ってきたお弁当を食べた後で、元気づけに焼きプリンをほおばった。


「はぁー、どの時代で食べても、このプリンはおいしいわ」



どうするかな…………当座の生活費はできたけど、本当の目的は元の時代へ帰ることなんだよね。


でも今日は疲れた。

寝よう。それで明日考えよう。



お風呂を沸かすのが億劫だったので、大きなお鍋にお湯を沸かして、それで身体を拭いた。

おばあちゃんちに買い置きがあった新しい歯ブラシで歯磨きをする。 


そうして、寒いので早めに布団の中に潜り込んだ。

温めておいたコタツに足をくっつけて、天井を眺めながらいろいろと考える。



タイムトラベル……か、なんかきっかけがあるはずよね。

扉を開けるとか、凄い速度で時空の壁を超えるとか、変な匂いを嗅ぐとか……


こんなことならもっとSF関係の本を読んでおくんだったなぁ。

私は、今朝、何をしたっけ?


戸は開けた。ちょっと錆びついてた鍵が怪しい?

それとも古い蔵に入ったから?

うーん、ブレーカー? あれ、火花が散ったよね。

何がきっかけなんだろうな……


明日……明日、また一通りやってみよう。

それでも帰れなかったら……


ゾクリと背筋に震えが走った。

考えたくないけれど、そうなったら、この時代のお父さんとお母さんに助けを求めるほかないのか。


……寝よっ。考えてもしょうがない。

ようやく温かくなってきた布団の中で、由紀恵は徐々に意識を手放した。





********** 




うー、寒い! やっぱり朝は冷えるなぁ。

がらんとした家に一人でいると、部屋が一層寒く感じる。


「起きるか」


気合を入れて一気に布団をはぐ。


「やっぱ、寒いっ。今日も雪が降るんじゃないでしょうね?」


由紀恵はセーターを二枚重ねにして、上にはまた半纏(はんてん)を羽織った。



台所に行く前に、期待を込めて東側の勝手口から外を覗いて見る。


自転車、ないね……


由紀恵が夏の日の昨日、勝手口の近くに置いておいた自転車はない。

まだ帰れてないんだ……



しょうがない。ご飯を食べよう。


コーヒーを飲んで、昨日買っておいたパンを食べる。

そして疲れた時には、バナナとチョコレートだ。

おばあちゃんがよく言っていた、ビタミン満点のトマトもまるかじりする。


「よしっ。元気百倍!」


ビニール袋に食材を入れて、ピクニックに出発……できたらいいな。




外出する格好をして、昨日着ていた夏服が入った袋と、食べ物が入った袋を、二つ腕にぶら下げる。


まずは、昨日やった手順の反対をやってみることにした。

ブレーカーを落として、蔵の戸を開けて、閉めて、それから外に出て、錆びた鍵で鍵をかける。


……まだ寒い。


念のために、母屋の角を回って東側の勝手口を見る。


……やっぱり、自転車はない。



……………………


怖い。

怖いけどやるしかない。


身体中がどくどくと音を立てる心臓になったみたいだ。


東の勝手口で、自転車を止める格好だけして、物置小屋に鍵を取りに行く。

錆びた鍵を使って蔵の戸を開ける。

そして、狭い廊下を通って椅子に登り、ブレーカーのスイッチを一つずつ入れていく。

最後のスイッチを入れると、昨日と同じようにパチッと火花が散った。


ブーンという音がまたし始めた。



お願いです。

お願い、お願いっ。元に戻って!!


蔵の戸を音を立てて開ける。

雪は降ってない。


…………暖かい?


「暖かいよ。帰れた?!」



扉の外に一歩足を踏み出すと、何段かの段差を踏み損ねたようなヒヤッとした感じがした。

荷物を持っていたので、思わずたたらを踏む。


どういうこと? 

昨日はこんなことなかったよね。


雪が降ってることに驚き過ぎて、気づかなかったとか? 

でも、でも、さっきとは空気が違う。


帰れたんじゃない?!



由紀恵は勢い込んで母屋の角を曲がって、東側に廻った。



そこには、…………

由紀恵は帰れたのでしょうか・・。

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