32 自然の精霊神
俺は今エルフの国の王城地下に来ていた。
なぜそのような場所に来ているかというと、数十分前に遡る。
~~~~ 数十分前 ~~~~
魔物たちを倒した後、俺はトロスさんのいる食堂に向かった。
食堂に着きトロスさんに魔物を討伐したことを話すと、そこにいたエルフたちは絶望の顔から安心した顔になった。
トロスさんはすぐに何かを考えこみ、決意したかの顔でこちらを向き言い放った。
「ゼロト殿、今回の魔物の討伐ありがとう。そこで折り入って頼みがあるのだが良いか?」
「内容次第です」
「わかった。実はこのエルフの森は結界によって守られているのだが、最近結界の力が弱まってきておるのだ。そこでゼロト殿に結界を張ってもらいたいのだ」
「なんとなくは分かりました。ただ、どうやって結界を張ればいいんですか?」
「それについては、この城の地下の最深部に行けば分かると聞いたことがある。引き受けてくれるか?」
「せっかくですし引き受けましょう」
そして俺たちは地下の地図をもらって、地下へ向かうこととなった。
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そして今に至る。
ちなみについてきているのは知音、エミ、咲音ちゃん、レグレス、ロンさん、ベル、トロスさんである。
行く途中には分かれ道などもあったが、城のことをよく知っているロンさんたちのおかげで迷うことはなくしっかり進めている。
歩くこと更に数分が経ち、ようやく最深部に到着した。
そこにはトンネルがあり、その奥には緑色で輝いた光が見えた。
俺たちはその奥の光に向かってトンネルを歩いた。
トンネルをぬけると、そこには大きな空間があった。
そして、その真ん中には緑色に輝いたクリスタルが浮いていた。
あまりの美しさに見とれていると、
「ここに何の用でしょうか」
「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
突如どこからか声が聞こえた。
するとクリスタルが光、形を変えて人間のような姿になった。
しばらく沈黙の空気が続いたが、その空気を破るかのようにその人物がしゃべりだす。
「私の精霊神の一人、自然の精霊神。宜しく。それでここには何しに来たの?」
「実はエルフの国の結界の力が弱まっております。再び結界を張ってもらいたくここにきました。」
精霊神の質問にトロルさんは丁寧に返した。
それを聞いた精霊神はしばらく考え込み、何かを思いついた顔をしてこちらを向いた。
「だったらさ、そこにいる人間⋯⋯⋯南鳥零斗だっけ?僕と契約しようよ
⋯⋯⋯⋯はっ?契約?何のことかサッパリわからん。いや、そんなことよりも⋯⋯⋯⋯
「なんで俺の名前を知っている!」
「それは……まぁ、契約したらわかるよ。それでするの?しないの?」
「ゼロトさん……」
ベルが見つめるようにこちらを見てくる。
「わかったするよ」
「よし、少し待ってね」
そして自然の精霊王はクリスタルに戻って俺の体の中に入ってきた。ゆっくり入ってきて、すべて入りきると、体に違和感を感じた。このあふれてくる力は何なのかと考えていると、
「これで契約成立ですね。それでは自然の精霊神からこの場にいる九つの生命に祝福がありますように」
そう言いながら精霊神は祈るように手を前に合わせながら言った。
その時、知音が不思議そうに周りを見ながら言った。
「あのー、この場にいる生命を持つ人って八人じゃないですか?」
「確かに」
知音の指摘に周りを見ていると確かに八人しかいないのに九つと言っている。
みんな周りを見た後精霊神を見ると、精霊神は得意げな顔で言った。
「何言っているんですか、織本咲音さんの中にいる赤ちゃんも合わせて九人じゃないですか」