31 魔法合成
「ま、魔物たちがこの国に!?それで今はどこに!」
「森の真ん中あたりです。あと一時間程度でこの国に着くかと」
「森には結界が張ってあったはずだが、結界はどうなっている!」
「破られているかと⋯⋯⋯」
トロスさんが焦っているのが分かる。
他のエルフたちも焦っていた。
そんな中、僕は出された料理を食べていた。
「ゼロト殿、のんきに料理を食べている場合ではありません!!早く逃げてください!」
「なんでだ?」
「あなた方娘の恩人です。そんな方を危険なこの国にはおいていられません!!」
トロスさんは俺達のことを思ってか熱心に言ってきた。
しかし俺にとってはこの国を救うほうが優先だった。
「すみません、トロスさん俺も戦っていいですか?」
「それはこちらも頼みたいんですけど、あの森では水魔法と風魔法のみを使用となっているので、炎魔法では戦うことができないのです」
確かに俺がベルを助けた時は炎魔法だったか炎魔法しか使えないと思い込むのも無理はない。
実際炎魔法で試してみたいことがあったが仕方ない。
「わかりました。水・風魔法で戦います」
「本当ですか。お願いします」
これで俺も戦いに参加できることになった。
後の問題は⋯⋯⋯
「お待ちくださいお父様、私たちはいいですが他のエルフたちがゼロトさんたちを見たらどうなるか⋯⋯」
ベルは俺が思っていたことと同じ事を考えていたらしい。
俺もそこのところは大丈夫なのかと思いトロスさんを見ると、トロスさんはニッコリ笑顔で
「大丈夫だ、考えがある」
そう言って食堂を出てそのまま戦場へ向かった。
騎士や冒険者の格好をしたエルフたちは門の前でたまっていた。
トロスさんが着くと敬意の目が向いていたがすぐに殺気へと変わった。
「なんで人間がここにいる!?」「我々エルフ族を奴隷にしたがるクズの種族が!」「もうこのエルフの国はおしまいよ」
などと罵声を浴びまくった。
そして、エルフがどれほど人間を嫌っているかが分かった。
たくさんの罵声が飛んでくる中トロスさんは大きく息を吸い、
「きけ!!エルフの民たちよ!!ここのいる人族、ゼロト殿は我が国の王女、ベルム・マトリナを盗賊どもから救った英雄だ。この場は彼が引き受けてくれるらしい。俺はこの男にこの国の運命を託そうと思っている。どうだろうか!?」
その声を聴いて、エルフたちは、
「国王様が言うなら⋯⋯⋯」「俺は国王様を信じるぜ」「国王の判断は俺達の判断、みんなそうだろ」
「「「「「「「「「オォォォォォ」」」」」」」」」
「決定だ。ゼロト殿後は頼む。」
「割ったけど木は切ってもいいのか?」
「それは問題ない」
その言葉を聞き、俺は早速、能力創造を使った。
それで造ったスキルは魔法合成。
魔法合成⋯⋯⋯自分の他属性を合わせることができる。イメージすればするほど思った魔法を造れる。しかし、詠唱不可欠。
とりあえず造ってみるか。
イメージは風によって強固を増した水の刃。
イメージしまくった結果できた魔法は【ウォータースラッシュ】。
この魔法は武器に風、水、風の順で発動させて、更に、水の中に小さくて強大な風を収入させ、武器を振るう時に、水の中に仕込んだ風を爆発させ、水の威力と速さを上げ、風の威力がつきるまで水を飛ばすといった、簡単なこと魔法だ。
しかし、俺はとあることにきずいた。
今、武器を持っていないことに。【ウォータースラッシュ】は魔法を重ねがけするため、武器に相当な負荷がかかる。それに耐えられる武器を今持っていなっかった。
どうしようか迷っていると、すぐ後ろに黒い気配を感じる。
そこにはレグレスが立っていた。
「どうしたのじゃ?旦那様?」
「レグレス、ちょっと剣になってもらってもいいか?」
「良いが、ちゃんと呪文は言えるんじゃろうな?」
「任せろ」
そう言って俺は、レグレスを装備するための呪文を唱え始めた。
「【我は力を求めし者、汝は闇の魂源なり、汝、我を主と認め、汝の力を貸したまえ】装備、魔剣レグレス」
そして俺は魔剣になったレグレスを装備した。
「ゼロト殿、魔物たちがそこまで来ている。そろそろ戦い始めてくれ!!」
「わかった」
そう言って俺は詠唱を始めた。
「【水風よ我が剣にやどい全てを切り崩せ、ウォータースラッシュ】」
そして剣を一振りするとその目の前では水の刃が、とてつもないスピードで魔物たちを切っていき、いつの間にか魔物たちは全滅していた。