30 夜這い
「せ、先輩。起きていたんですね⋯⋯⋯」
咲音ちゃんは何かがっかりそうだった。
アルダナは俺の部屋に人が来るといっていたが、それが咲音ちゃんだったなんて思ってもみなかった。
「こんな遅くにどうした?」
こんな夜遅くに来るということは夜這いかと思ったが、さすがに咲音ちゃんが夜這いに来ることはないと思った。
しかし、その考えは次の言葉で砕けた。
「そ、その⋯⋯⋯、よ、夜這いに⋯⋯⋯」
驚いた。あの咲音ちゃんが夜這いに来るなんて思っていなかったからだ。
「咲音ちゃんにしては珍しいね」
「そ、そうですか?」
「うん。だって咲音ちゃんが夜這いに来るなんて思ってなかったからね」
「や、やっぱり駄目ですか?」
咲音ちゃんはだんだん涙目になってきた。たぶん鳴きそうになるのは俺を怒らせてしまったと思ったからだろう。
俺はすぐに否定した。
「別にダメってわけではないんだけど⋯⋯」
「じゃあいいんですか?」
さっきまで泣きそうになっていた咲音ちゃんに顔が一気に明るくなった。
咲音ちゃんが望むなら別にしてもいいと思っている。
しかし、
「でもどうして俺としたいと思ったんだ?」
どうしても理由が気になった。
すると咲音ちゃんは、
「実はアルダナ様から『私はゼロト君とキスしたことがある』と自慢されて、その時、私はショックでした。だけど、お姉ちゃんにこの世界は一夫多婦が認められていると聞いて、零斗先輩の貞操はまだ大丈夫だと思ったんです。でも、このままだったらいつかお姉ちゃんかエミさんに取られてしまうと思ったら、私耐えられないと思ったんです。」
「だから夜這いに来たんだね」
「はい」
俺はこのとき驚いた。
今まで勇気を振り絞れなかった咲音ちゃんが、今は勇気を出して俺を襲おうとしていたことに。
このとき俺には、咲音ちゃんが可愛い後輩ではなく、勇気を振り絞った、一人の女の子として見てしまった。
ベットに座っていた俺は、目の前に立っていた咲音ちゃんの腕を掴み、自分のほうに引っ張ってキスをした。
「私のファーストキスを奪った先輩には、責任を取ってもらいますからね」
声は怒っているように聞こえたが、顔は今までにないほどかわいらしい笑顔だった。
俺は咲音ちゃんを自分の膝の上に座らせて、ハグをしあいながら何十回もキスをした。
しかし、咲音ちゃんはキスだけでは足らないらしく、
「先輩、先輩はまだ童貞でしたよね?」
「そうだけど?」
「なら、先輩の初めてを私に下さい。代わりに私の初めても先輩に上げますから」
そう言われて俺は自分の理性を抑えきれなくなり、ついに咲音ちゃんをベットに押し倒してしまった。
咲音ちゃんはまだかまだかという目をしながら待っていた。
そして俺はついに、咲音ちゃんの処女(初めて)を奪い、俺の童貞(初めて)を咲音ちゃんに捧げた。
そのまま一時間したら、俺と咲音ちゃんは眠りについた。
翌朝、俺が目を覚ますと俺と咲音ちゃんは裸の状態で抱き合ったまま寝ており、目の前には寝息を立てながら咲音ちゃんが寝ていた。
咲音ちゃんはすぐに起きた。
「おはよう、咲音ちゃん」
「おはようございます、零斗先輩。チュッ」
咲音ちゃんは俺にキスをしてきた。
咲音ちゃんは頬を赤く染めながら離れていった。
「それじゃあ先輩、私部屋に戻って着替えてきます」
そう言って咲音ちゃんは昨日の服を着て部屋を出ていった。
しばらくしたらメイドさんが食事の用意ができたことを教えてくれた。
僕はすぐに食堂に行った。
行く途中に咲音ちゃんと会い、一緒に行った。
食堂に着くと、知音たちは先に来ており、俺達が最後だった。
俺達は席に着き出されたご飯を食べていた。
その時、エルフの騎士が慌ただしい様子で走ってきた。
「国王様!大変です!!」
「どうした!?」
トロスさんは声を荒げて聞き返した。
「ま、魔物たちがこのエルフの国に進軍し始めました。」
その瞬間、エルフ全員の顔が真っ青になった。