26 エルフ
「いったいここはどこだ?」
俺達はダンジョンから転移して外に出ることができた。しかしダンジョンによる転移だったので行先は設定できなかった。その結果、現在森の中で迷っている。
「それにしても暗いですね」
エミは楽しそうにいった。さすが邪神と言うべきか。
「せせせせ、先輩。腕に抱き着いてもいいですか?」
咲音ちゃんが涙目で言ってくる。なにこの子、めちゃくちゃ可愛い。
「いいよ、咲音ちゃんは暗いところ苦手?」
「はい、とても苦手です。⋯⋯ご迷惑をお掛けしてすみません」
「気にすることはないよ。咲音ちゃんはもう俺の嫁なんだから」
「先輩」
「咲音ずるい。ゼロト君私のことも、俺の嫁、って言って」
「ゼロ様、私にも言ってください」
「妾にも言ってくれぬかの~」
「とりあえず森から出たらな」
そう言って再び歩き始めた。しばらく歩く人影が見えた。
「おい、きりきり歩け!」
どうやら何かもめているらしい。近づいてみると、
「このエルフ、自分が奴隷になることわかってんのか?」
「もう、逃がして⋯⋯⋯くだ⋯⋯さい」
五人の男たちが女の子一人を囲んでいる。女の子は怯えているようだ。
(これは助けたほうが良いんじゃないか?)
そう思っている間に男たちが女の子を殴ろうとしていた。
「おいやめろ!」
いつの間にか俺は飛び出していた。
「なんだお前。ガキは引っ込んでな」
「断る。そもそも女の子を殴ろうとしている奴の言うことを聞く気なんてねーよ」
「だったらここで死ね!!」
一人の男がナイフで襲い掛かってきた。
「はぁ、死ぬのはお前だ。【ウィンドカッター】」
そう言って俺は魔法を使って男の首を飛ばした。
「「「「えっ!?」」」」
他の男たちが驚いた顔をしていた。
「ボ、ボスがやられた。逃げろ!」
「逃がすかよ」
そう言って俺は逃げていく男達を殺していく。
「こ、殺さないでくれ~!」
最後の一人が逃げていく。
「無理、大人数で女の子を殴ろうとした奴は生かしておく理由がない」
そして俺は最後の一人を殺した。その後、俺はみんなの所へ戻った。さっきの女の子は傷がなくなっていた。どうやら回復魔法で治したらしい。
その時だった、
「人間、姫様をどうする気だ!!」
どこからか声が聞こえた。聞こえた先を見てみると鎧を着た兵士が何人も立っていた。驚くことにみんな耳がとんがっていた。簡単に言うとみんなエルフだった。
(それにしても、姫様って誰だ?)
俺がそんなことを思っていると、
「皆様、落ち着いてください」
男達に捕まっていた女の子が声を上げた。
どうやら彼女が姫様だったらしい。
「しかし姫様、我々エルフの国の姫が攫われたのです。早く姫様を攫った人間を捕まえなければ」
「その人間たちはここにおられる方が殺してくれました」
「本当ですか。しかし、人間が人間を殺すなど本当か信じがたい、そこの人間、その殺した人間はどこだ、答えろ」
とても失礼な態度からエルフがどれだけ人間を嫌っているのかがわかった。ここは機嫌をそこねないように、
「この森の少し奥に死体があります。嘘と思うなら確認して下さい」
「なるほど、おい、誰か確認してこい」
そう言われエルフの一人が確認に行ってすぐ戻ってきた。
「隊長、死体が確かにありました」
「わかった。人間、この度は姫を救ってくれて感謝する」
「私からもお礼を申し上げます。この度は救っていただきありがとうございます。よろしければ今からわが王国、エルフの国にいらしゃいませんか?」
「姫様!?いくらなんでも人間を我が国に入れるなど⋯⋯⋯」
「例え人間と言えど私の命の恩人、何もお礼をしなければ我がエルフの国のはじになります」
「それもそうですね。分かりました。しかし、妙な真似をしたらすぐに追い出します」
「ありがとう。それで貴方がたには悪いのですがエルフの国まで来ていただけないでしょうか?」
どうやらエルフの国にいけるらしい。みんな喜んでいくことになった。