14.5 少女達の決心
「ついにやったな」
「ああ、これで、フフフ⋯⋯⋯」
「やっと、あいつがいなくなった」
そんなことを言っているのは、
霧島、岡村、山口の三人だ。
「でも本当にばれないかな⋯⋯⋯」「確かに、俺ら男子が一番最後に上がって来たら、さすがにばれるだろ⋯⋯⋯」「もし、⋯⋯⋯ばれたら⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「お前ら、なに弱気になってんだ。この案を出したとき、お前らものりのりだったじゃねーか」
そう言って、霧島はまわりにいる他の男子達を黙らせた。
「で、でもよ、さすがに殺す必要はなかったんじゃねーか?軽く痛めつけて、脅せばよかったんじゃ⋯⋯⋯」
「それは、元の世界でもやったが、あいつは全然聞かなかったんだよ。」
霧島は面倒くさがるように答えた。
彼らの言っているあいつというのは、ダンジョンの底に落ちていった南鳥 零斗のことである。
彼ら勇者達は、ダンジョンから帰ってきた今日、国王に今回起こったことを報告し、夕食を食べ、今にいたっている。
「それに、お前らだってあっただろ、嫉妬や恨みが」
「まぁ、確かにあったけどな」
「ならいいじゃねーか、今回のことは俺達だけの秘密ってことで」
そう言ったとき、いままで恐れていた男子は『俺達は正しい』という、雰囲気になっていった。
「だけど、俺らの高校のTOP10に入る程の美少女の織本まで底に落としたのは少しいたいな」
いままで目をつぶって黙り込んでいたイケメンの光輝が口を開いた。
「しょうがねーよ、だってあの女、あいつから離れなかったんだから」
「それに、誰かが一緒にいても殺すって言ったの光輝じゃねーか」
「そうだったな。それじゃもう遅いから皆自分の部屋に戻ろうか」
そう言われ、男子は自分たちの部屋に戻って言った。
彼らは『このことは内緒だ』と言い合って戻っていった。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯このやりとりを見ていた者がいると知らずに。
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「うぅ⋯⋯⋯、ひくっ⋯⋯⋯」
「南鳥君帰ってきてよ~、えぇーーーーん」
「もう、ゼロ君に会えないんだ、⋯⋯⋯⋯⋯さみしいよぉ、帰ってきてよ」
そう言って、泣いているのは、美子、真奈美、亜沙子の三人だった。
彼女達はいま、零斗の使用していた寝室の中にいる。
彼女達にとって今日は最も辛い一日になろうとしていた。そのとき、ドアを開けて姫乃が息を上げて部屋に入って来た。
「もしかしたらゼロ、男子達に殺されたかもしれない」
「「「えっ」」」
「実は、さっき――――――――」
姫乃は男子達の会話で聞いたことを話した。
「私、今から男子達に文句を言ってくる」
「やめなさい」
「でも――――――」
美子が反発しようとすると、ドアが再び開いた。そこには、第2王女のユリスが立っていた。
「皆様、どうしたのですか?」
「王女の方こそどうしたんですか?」
「私は、スキルを使うためにここにきました。」
「ここに来たって、ここ零斗君のいた部屋ですよ」
「ええ、存じています」
「私のスキル、愛人探索は探す人の住む部屋でないと発動できないんです。このスキルは私が好きな人の半径5メートルの温度をわかるようにする能力です」
「それで生きているかわかるんですか?」
「はい、ですが、一応覚悟していてください。」
そう言って、ユリスはスキルを発動した。
「えっ」
「どうしたんですか?」
「最初はなかったのに、急にゼロトの温度がでてきたんです。しかも3つの体温が」
「じゃあ⋯⋯」
「はい、ゼロトは、生きています」
部屋にいる彼女達は喜んだ。
同時に今度こそ守りたいという感情がわきだしてきた。