10 ダンジョンの下へ
僕は今、ケルベロスと戦っている。
近くで倒れていた織本さんも、起き上がったようだ。
「織本さん、早く逃げて。」
僕は織本さんも近くに行き、背を向けたまま、声をかけた。
さっきの、ケルベロスの恐怖で走って逃げると思った。
しかし、帰ってきた言葉は、予想外の言葉だった。
「ボクも一緒に残るよ。南鳥クンだけを残すことはできないよ。」
僕は一瞬、動揺したがすぐに正気に戻り、
「死ぬかもしれないけど、いいのかい?」
「別にいいよ。南鳥クンと一緒なら。それに⋯⋯⋯⋯もう、あまり離れたくないから。」
最後のほうは小さくて、聞き取れなかったけどその、その顔はなにか決意した顔に見えた。
「なら織本さんは、どんな魔法がつかえる?」
「ボクは、炎魔法が一番得意かな」
炎魔法か、ちょうどいい。
「だったら、織本さんはそこの壁から魔法を使って注意を引きつけて。その間に、僕が攻撃するから。」
「わかった」
織本さんは、走って壁まで走った。
「よし、それじゃあはじ――――――」
そのとき、どこからか魔法が飛んできた。
ケルベロスは魔法が飛んできた場所を見ていた。僕も、魔法が飛んできた方向に顔を向けた。そこには、何人かの人影が見えた。その後、僕は織本さんのほうを見ると、織本さんは僕のそばまで来ていた。
グガガァ―――――――
どこからかそんな音がした。音のした方向を見ると地面が割れていた。
「織本さん早く逃げて。」
「いや!!」
「逃げないと、織本さんまで下に落ちてしまう。だから早く逃げて!?」
「それでもいや!」
「どうして?」
「ボクは南鳥クンと一緒にいたいから!!」
そして、地面は崩れ、僕と織本さんは一緒に落ちていった。