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第四話「明日の闘争の為に、今日から始めること」①

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 第四話「明日の闘争の為に、今日から始めること」①

 ---Kurogane Eye's---

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 魔王様に匹敵する存在――

 その上でわたし達の心強い味方となったワイズマン様。

 

 彼の来訪から、1週間ほど経っていた。

 今やワイズマン様は魔王軍戦略戦術統括顧問と言う役職に収まっていた。

 要するに、魔王様の軍師的なポジションで、権限的には魔王様に次ぐ権限をお持ちになっている。

 

 皆、密かにこの人だけは敵に回しちゃダメって思ってたから、言ってみれば身内になってくれた事は大いに歓迎だった。

 中には色仕掛け使ってでも籠絡……とか、考えてた娘もいたとかいないとか。

 

 けど、色仕掛けって……わたし達がそんな事やって、ひっかかるのって、結構特殊な趣味の人だと思う。

 

 とにかく、ワイズマン様は特殊な趣味の人じゃなかった……わたし達的にはちょっと残念。

 あ、別に特殊な趣味の人が好みとかじゃないからね?

 

 まったく女扱いされないと言うのは、それはそれで乙女的に悲しいのですよ……。


 まぁ、礼儀をわきまえてる人だから、ちゃんとした1人のレディとして扱ってくれますけど……。

 そもそも、わたし、中身は19歳の大人なんですからねっ!

 

 それはさておき、結局、あの日予定されていた魔王城の外界浮上はワイズマン様の助言で急遽中止となった。

 

 地上への浮上には様々な条件があって、本来ならば浮上シーケンスに入ってからの中止は色々リスクもあったみたいなんだけど。

 

 容赦なく無期限延期! ……と相成った。

 

 温泉とか色々楽しみにしてたんだけど……なにせ、あのまま浮上していたら、10万にも及ぶ大軍勢とわたし達だけで真正面から籠城戦を戦うと言う……まさに絶望的な状況になるところだったのだ。

 

 なぜそうなったかは解らない……何らかの外界からの工作だろうとワイズマン様は説明してくれた。

 

 ワイズマン様はそれを阻止するために、危険を犯して次元の狭間を超えてきた……あの突然の来訪はそういう事だった。

 ちなみに、次元の狭間を生身で渡るなんてのは、魔王様に言わせても「正気の沙汰じゃない」……との事。

 

 なんでも、軽く100年くらい時空の狭間を彷徨いながら、何千、何万分の一の確率で魔王城と接触する機会を待ち続けていたらしい……時空の狭間は時間の概念がないので、ワイズマン様にとっての100年はわたし達にとっては、ほんの数日程度だったらしいのだけど。

 

 ワイズマン様から、わたしにとって解りやすい表現として「筏に乗って潮流任せで太平洋横断みたいなもんだろうな」と説明されたのだけど。

 ……正直、手の込んだ自殺にしか思えない話だった。

 

 そして、外界への浮上を止めた代わりと言っては何だけど、わたし達は次元間往還ゲートというモノを使って、外界と自由に行き来出来るようになっていた。

 

 ……本来は魔王城を浮上させないと、外界に干渉できなかったのを、わずか4人づつと非常に少人数ながらも、わたし達を外界へ送り込むことが出来るようになったのは非常に大きい。

 

 ワイズマン様の次元の狭間を渡る秘術……それと魔王様の使える長距離転移ゲート、これら異なる技術の融合。

 その結果、外界と魔王城の中を限定的に繋ぐ次元間往還ゲートが出来上がったのだ。

 

 とにかく、魔王様が長年やりたくても出来なかった事がワイズマン様と言うファクターにより、容易く実現できてしまったのだ。

 

 そして……わたしはその次元間往還ゲートを渡り、魔王城跡地……つまり、今もわたし達を待ち構える大軍勢が居座る大平原にやってきていた。

 

 久しぶりに吸う外の空気……草の匂いと土の香りがなんとも懐かしかった。

 

 見上げると、半分ほどのお月様……記憶にある日本の空に浮かんでいたそれと比べて大きい……1.5倍ほどはあろうか……もちろん、うさぎの模様なんかなくて、妙にのっぺりとした感じに見える。

 

 なんでも、もう一つ……黒い月と呼ばれる小さい月がこの月と入れ替わりに出てくるらしいのだけど、そっちは明るいというより、むしろ暗くて満ち欠けもせず、夜は殆ど見えず、昼間にぽっかり黒いのが浮かぶというヘンテコな光景を醸し出すらしい。

 

 振り返って、背後……北には大きな岩山がそびえ立ち、なだらかな裾野を形成している。

 その山の裾野と麓の平原の境に緩やかな丘になっている地形があり、その丘の上は不自然にまっ平らにならされていた。


 その広さは実に500m四方……ここにかつては魔王城があったと言う話……つまり、今のわたし達が居る雑草だらけの丘がそう。

 

 南側には5キロ四方ほどの広大な草原が広がっており、複数の丘や窪地を形成している。

 某XPなOSのデフォルト壁紙みたいな風景……といえば解る人には解るかもしれない……と言うかまんまアレ。

 

 その向こうには20mほどの幅の川を境に広大な原生林が広がり、地平線を遥かに超えてこんもりとした緑の稜線が続いている。

 そして、平原の中心には東西に蛇行するように街道が伸びている。

 ……けど、街道自体は長らく放置されていたようで、瓦礫や岩が少ないと言うことで、そこに道があるのが分かる程度には、荒れ果てていた。

 

 東の方は、林のようにまばらに木が生えていて、緩やかな稜線へ街道が続いている。

 西の方は開けていて、地平線の向こう側まで続いているようだった……大きな岩や灌木がポツポツと並ぶ大草原……そんな中を一本の街道が地平線の彼方へ向かって伸びていた。

 今は夜だから、月明かりでうっすらと見えているだけだけど、昼間だともっと詳細な地形が解るだろう。

 

 そして……街道跡を中心にいくつもの篝火が見える。

 夜の闇の向こう側……時折、篝火に照らされる人影に、風にたわんで揺れる数えきれないほどの天幕と数々の旗。

 投石機、バリスタ、破城槌、そして車輪のついた高い塔のような――攻城塔。

 そのような攻城兵器の類がいくつも林立していた。

 目が慣れてきたようで、月明かり照らされたそんな情景が浮き彫りになる。

 

 耳を澄ませば馬の嘶きやザワザワとした人の話し声も風に乗って聞こえてくる。

 そして、手前1kmくらいを境にこちらへ近づく気が無いのか、唐突に天幕の群れが途切れ、なんとも不自然な空間が空いていた。

 

 けれど、そこから先は地を埋め尽くすほどの10万人の大軍勢。

 

 ……わたしは今、そんなものと対峙していた。

 久しぶりに外へ出たと言う感慨も、目の前の大軍勢と言う衝撃的なもの前には霞んでしまった。

 

「す、すさまじい数の軍勢なんですね……想像以上……これ凄いなぁ……」

 

 とにかく、圧倒されてしまい……そんな言葉しか出て来ない。

 思わず馬鹿みたいにぼんやりと立ち尽くしていた事に気づき、慌てて座り込む。

 こっちから見えているということは、向こうからも見えるのだ……ここはもう戦場……しっかりしないと。

 

「大丈夫ですよ……くろがねさん。あの人達、私達ほどには夜目は効かないみたいですし、篝火の明かりの中にいると、暗闇を見通す事は出来ませんわ。なので……夜の間は、そんな緊張しないで楽にしてていいですよ」

 

 隣にいた淡い灰緑の三つ編みお下げの素朴な感じの娘……翡翠が、安心させるように笑いかけてくれる。

 ちなみに彼女、今はマントで隠してるけど、背中に羽が付いてて、空を飛べる……風の魔法と根術の使い手。

 いわゆる魔法戦士的な感じの、何かと生真面目なしっかりもの。


 やっぱり背はちっちゃいんだけど世話好きなオカン属性持ちな上に、羽を広げると天使そのものと言うなんともあざと可愛い娘。

 

「まぁ……あんなの見たら、普通にビビるに決まってるよ。アレが一切に襲い掛かって来たら、僕達がいくら頑張ってもどうにもならないだろうからね。一応、僕らは先遣隊として、もう何回が外に出てきてるんだけど、こっちに近づいてくる様子はないから安心していいよ」

 

 こっちは翡翠の相方……琥珀。

 お聞きの通り、僕っ娘……双剣使いにして、土の魔術の使い手。


 やっぱり、背中に羽が生えてて、ややくすんだオレンジ色のボブショートの元気っ子。

 この娘もちっちゃくて可愛い。

 

 もっとも……背丈については……ちっちゃいって言っても、要するにわたしといい勝負……なんだけどね……5cmくらいは大きい。

 

「そっか、二人共……何度か先発隊として外に出てるから、さすがに落ち着いてるね。話には聞いてたし、ある程度想像はしてたんだけど、10万人の兵隊……実際に見るとこりゃ圧倒されるわ……昼間見たらもっと凄そうだね……」

 

「これをくろがねにも一度見ておいてもらいたくてね……実際に外に出て戦場を見とかないと解らないことって多いと思う。それと、くろがねから見て……この二人の装備や夜間偵察における問題点って何かありそう? 一応、偵察隊の皆で城内で色々と準備はしてたんだけど……。本格的に偵察を開始するに至って、特命訓練教官くろがね先生の意見を聞いてみようって話になったので、今回現場にお招きしましたぁ」

 

 なんか楽しそうにしろがね。

 そう……わたしは彼女の言うように、ワイズマン様からそんなお役目を仰せつかっていた。

 もちろん、そんな大役ご遠慮させていただこうとしたのだけど。

 

「隠密行動ならスナイパーの基本スキルだろ? くろがねなら出来ると私は信じてる。それに、この作戦は入念な事前偵察に加え、作戦決行まで敵に見つからないと言うのが大前提になる。作戦自体もこちらが圧倒的少数である以上、隠密スキルは必須だし、夜間の無音連携行動くらいは出来なきゃ話にならない……。 いわゆる特殊戦って言えば解るかな?」


 特殊戦……残念ながら、一発で解った。

 グリーンベレーとかSAS、スペツナズ……少数特殊部隊による隠密作戦の事。


「そりゃ……解るけどさ。少数精鋭のコマンドーでしょ?」


「ははっ、それだけで解る時点で君が最適って事さ。それにこの作戦の戦略についても色々とよく解ってるみたいだからね。……むしろ、現場の作戦指揮を任せてもいいくらいなんだ。階級もしろがねの補佐……第4席って聞いてるから、申し分ない。どうだろう? 戦闘は他のものに任せていいから、君は現場で私の右腕として動いて欲しい」

 

 そう言われてしまえば、さすがに断れなかった。

 おまけに、魔王様や事実上の指揮官たる鋼姉様や黄金姉様までもが、異論なしと言う事で……もはや、選択の余地はなかった。

 

 かくして、今の私には「特命訓練教官兼現場総括指揮官補」なんて、長ったらしい役職名が付いている。

 

 もはや、なんのこっちゃか解らんよっ!

ついにくろがねちゃんと敵の大軍勢のファーストコンタクトてす。

新キャラも出てきましたね。


個人的には翡翠ちゃんとか割りと好みなんすけどねぇ。

当初キャラ案には、翡翠…緑天使一号としか書いてませんてした…ひどい。

ロリおかん設定…実に良い。

キャラデザ的には、緑色っぽくなったDQⅤのビアンカに羽生えた感じです。

第二部とかで、少しは活躍させてみようかな?

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