第二十五話「負けられない!」②
--------------------------------------------------
第二十五話「負けられない!」②
---Hari Eye's---
--------------------------------------------------
地上へ続く長い螺旋階段を登る……時々敵兵が現れるけど、先頭を切るあたしが片っ端から切って捨てる!
「あたしは、魔王軍第5席の玻璃だ! 死にたいヤツからかかってきな! こちとら急ぎの身でね……悪いけど、容赦しない!」
もう何度目かの敵兵の集団に遭遇する。
一際デカイ奴が先頭に出てきて、立ちはだかる!
「ならば、この俺が相手になろう! 我が名は聖騎士バゴス! 貴様のような子供を斬るのは心苦しいが……戦場に出てきたことを後悔させてくれるわっ!」
一応、名乗り口上だけ最後まで聞いてやって、水晶剣を顔めがけて投げつける。
ほぼ透明な水晶剣を見きれるはずもなくバゴスとやらは、顔に水晶剣を食らって、呆気なく崩れ落ちる。
急所がら空きで某立ちとか馬鹿か? こいつ。
「悪いね……そっちこそ、後悔はあの世でしな……次は誰? もう面倒だからまとめて始末するよ? 死にたくないやつは道を開けなっ! いちいち死体どかして登るのもいい加減うんざり!」
そう言ってあたしが構えると、バゴスの後ろに居た兵隊たちが一斉に我先に逃げ出す。
「バゴス様がやられたー」とか叫んでる様子から、どうも、そこそこの使い手だったらしい。
そういや聖騎士とか名乗ってたっけ……鎧とかも立派だし、なかなか良いご身分だったみたい。
時間があれば、ゆっくり遊んでやっても良かったけど……恐らく、猶予があるとすれば、今夜一晩限り。
帝国軍が突破されたら、早ければ夜明け前にでも市民軍への強襲があるはず……。
その前に、ケリを付けて戻る……そうしないとエドワーズ達は全滅だ。
もっと早く進入路を見つけられていれば良かったのだけど。
敵もさるもの、王都の外へ通じる連絡路や通路が片っ端から塞がれていた。
やっとの思いで見つけたのが、このはるか昔にに作られた地下水道遺跡。
そこですら敵の手がまわっていたのだから、文字通り紙一重の差だった。
地上へ通じる扉……けど、この分だと外で間違いなく待ち伏せされてる。
「柘榴! 扉を爆破して……失敗すんなよっ!」
「おっけー! さすがにここでヘマはしないって! ファイアブロゥ!」
柘榴が炎を纏った拳で扉を叩くと、盛大な爆炎が扉を焼き尽くして、外へと広がっていく。
……外では幾人かの火達磨の人影が踊り狂う……そんな光景が見えた。
ざっと見渡すと、どうやら城の中庭に出てきたようだった。
時間帯は月の位置からすると、おそらく深夜三時ごろ……思ったより、手間取ってしまったが。
夜明けには間に合いそうだった。
辺りにはいくつもの篝火が焚かれ、100人余の兵が完全武装で待ち構えていた!
ファイアブロウを放ったそのままの勢いで柘榴が先頭を切って突撃!
「数はざっと100! 一人20がノルマ! 速やかに殲滅! かかれっ!」
あたしがそう叫ぶと、瑠璃ちゃんが恐ろしい勢いで矢を放ち始め、バタバタと敵兵が倒れる。
紅が巨大な水晶のハサミを錬成するとそれ振り回しながら突撃! 次々と惨殺死体を量産していく。
紫も水晶の弓矢を錬成すると次々と撃ちまくって、敵兵をなぎ倒す!
屋根の上に多数の弓兵がいたので、あたしも水晶剣を飛ばして、始末していく。
弓矢が雨あられと降り注ぐけど、こんな兵六玉……当たるような間抜けはいない!
5対100……けれども、この勢いだと狩り尽くすのも時間の問題だった。
周囲を警戒しながら、時折迫ってくる敵兵を斬り刻む!
さっきの聖騎士とやらと同じ鎧の奴が向かってきたので、その首を問答無用で飛ばす!
気がつくと、あっという間に半数以上を始末したようで、さすがに敵兵も逃げ腰になる。
「オラオラ! どうした……まだ半分くらい残ってるんだろ? もっと応援呼んだっていいんだよ? 死にたいヤツからかかってきな! そいや、お前らにとっては聖戦で、死んだら神様のとこに行けるんだってね……。いいぜ……片っ端から神様んとこに送ってやるから……100人で行けば、寂しくもねぇだろ?」
中庭も屋根の上も死屍累々……増援も止まった様子から、今いる敵兵がこの城の戦力のすべてのようだった。
100どころではない数だけど、思ったより少ない。
1000くらいの軍勢との戦いを覚悟してたのだけど、エドワーズ達の決死の攻撃のおかげだろう……。
反乱軍もどれだけの犠牲が出たのか解らないけど……その犠牲は絶対に無駄になんかしないんだからっ!
「玻璃……瑠璃はもうノルマ達成余裕……もう寝てていい?」
空気を読まない瑠璃ちゃんが、やる気なさそうに呟く。
「寝るのは、ラスボス倒してから……でしょ? もうちょっと頑張れ!」
「そだね……けど、奥の方……謁見の間に居るやつ、多分手強い……魔力が尋常じゃない。くろがね並かそれ以上かも……ヤバイね……こんな雑魚共に無駄な力使わないほうがいいと思う」
瑠璃ちゃんの冷静なその言葉になんだか殺る気スイッチの入っていたあたしも冷静になる。
くろがね並……となると、使徒とか言う連中……ド本命って事か。
……今のあたしに勝てるかな? いや、ここは勝つしか無い……。
もともとあたしらは、その使徒って連中と戦う事を想定してるって魔王様も言ってた。
瑠璃ちゃんたちだっている……弱気になるな自分っ!
「そうなると、ますますこいつらに邪魔されるわけにもいかないね……紅、紫! 融合魔術「円無斬」で全部まとめてブッた斬る! 運がよけりゃ、そいつもお陀仏だろうさ! 柘榴と瑠璃ちゃんは上空に上がって、屋根の上や二階のバルコニーの残敵を一人残らず殲滅……おっけ?」
全員が頷く……あたしらはチーム。
それだけで、通じる程度にはこの一月ほど一緒に戦ってきてた。
戦闘経験と言う意味ではあたしらは魔王軍のトップチーム!
紅と紫、三人で背中合わせで手をつないで円陣を組んで、魔力回路を連結した上で魔術式を構成!
すぐさま、中庭一面に超巨大な魔法陣が生成される。
敵兵は逃げ場もなく、何が起こるのかすら解らず、かと言って近づいたらどうなるか……身にしみて解っているようで、向かっても来ない。
屋根の上の弓兵はあらかた殲滅したし、残り物も瑠璃ちゃん達が始末している。
この調子だと邪魔は入らないし、この魔術……三人がかりとなるけど、発動のスピードは早い。
すでに、準備は完了していた!
「「「発動! 融合魔術「円無斬」!」」」
あたしらがコマンドワードを唱えると、わたし達を中心に高さ1mほどの位置に巨大な円盤状のガラス板が出現する。
極めて薄いそれは文字通り、何もかもを切断して、周辺100mにも及ぶ超巨大なもの!
倒れていて気絶してる奴や座り込んで頭を抱えてた運のいいやつが数人居たみたいだけど。
それ以外のやつは、何が起こったのか解らないまま、胴体から横一文字で真っ二つになった。
ガラス板が割れてパリパリと音を立てて砕け散ると、敵兵は全滅していた。
切り裂かれた大理石の柱がずれると、倒壊する……。
中庭の周囲の建物も、円無斬で斬られたために同じようにガラガラと崩れる。
そんな中……場違いなパチパチと言う拍手の音が響く。
あたしらは、一斉にその拍手の主を見る!
今日は、体調不良で午後から活動開始。
それに伴い、アップ遅れました。
さて、ついにボスキャラっぽいのが出てきたー!
なとこで引きです。(´・ω・`)




