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第二十五話「負けられない!」①

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第二十五話「負けられない!」①

---Hari Eye's---

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 その時、あたしは地下水道跡で石巨人との死闘の真っ最中だった!

 その数、凡そ16体! 3メートルもある大きな石巨人たちがあたしらの前に立ちふさがる。

 

 むやみやたらと硬い上に、パワー、スピードどっちもなかなか……厄介な相手だった!

 

 連撃を仕掛け、関節の間にある球体を打ち砕くと、音を立てて片腕が外れる。

 

「弱点はそこだろっ! うらぁっ! さっさと砕け散れっ!」

 

 叫びながら、胸の中央にある宝石に水晶剣を突き立てる!

 その一撃が決め手になり、宝石が砕け散ると石巨人は動きを止め、バラバラと崩れ去る!

 

 やっと一体撃破!

 

 コアストーン……命なきものに命を与える石。

 これと同じようなものがあたしらの身体の中にも内包されている……言わば、ご同類ってとこだ。

 

 すかさずもう一体が立ちはだかり、その巨大な拳が唸りをあげて、迫る!

 あたしは、その拳を足で蹴とばすと、そのまま大きく後ろに飛んで、その衝撃をいなす!

 

 まったく、キリがない! 地下深くの古代の水道遺跡なら、こっそりと侵入できると思ったのだけど。

 敵もしっかり、守りを固めていた……と言うわけ。

 

「みんな! そろそろ、準備できたでしょ! 大技! 決めちまえっ!」


 そう言って、巨人共を足止めしていたあたしは、振り向きながらバーツ王国攻略隊のメンバーに声をかける!

 

 紅と紫が生成、制御し……瑠璃ちゃんと柘榴が魔力提供を担当……4人がかりの融合大魔術。

『飛晶・きわみ』……超巨大な水晶柱……それを叩き込む準備が出来たようだった!

 

 大きさはこの地下水道のトンネルの幅いっぱい近くもある幅約4m……長さは10mにも及ぶ巨大な奴。

 

 そいつがねりねりとゆっくり、背後から迫ってくる。

 

 あたしは、素早く通路の端っこに寄って、それを回避する。

 この通路自体、5mくらいの幅と高さがあるのだけど……。

 そうなるともう50cmくらいしか隙間がないので、横向きで壁にへばりつくような感じ……。

 

 それを見て、石巨人共はスクラムを組んで、止めようとしている感じだった。

 

「きししっ……総重量400トン!! こいつの前進を止めれるものなら止めてみなっ!」

 

 敵兵なんかも混じってたのだけど、迫りくる巨大水晶を見て狂乱状態になっているようで悲鳴が聞こえる。

 

 30秒ほどかけて、あたしの前を水晶が通過……。

 さっきまで戦ってた石巨人は、スクラムごと押されていったらしい。

 

 けど、この先は行き止まり。

 鉄格子付きの1mほどの狭いトンネルになる。

 

 やがて、ガゴンなんて鈍い音がして、水晶の動きが止まり、敵兵の悲鳴も止まる。

 どうやら、押し切ったようだった。

 

 けど、それでも石巨人共はまだ動けるようだった……ズガンズガンと言う音と共にわずかながら押し返されている!


 まったく、しぶといっ!

 

「まだだよっ! みんな、がんばれっ! もうひと押しっ! このままぶっつぶせ!」


 あたしの掛け声に応えるように、押し返されかけていた水晶が少しさがって、勢いをつけて前進!

 

 そして、それを二度三度繰り返し、更に回転をつけてゴリゴリと前進!

 

 やがて、バゴガギゴシャッ! なんてややこしい音がして、完全に水晶の前進が止まり、回転も止まる。

 水晶は行き止まりの3mほど手前で完全に停止したようだった……今度はもう押し返されたりしない。

 

「よし……ここまで押し込めば、全部潰れちゃったでしょ……みんな、お疲れぃ!」


 あたしがそう声をかけると、それぞれの役割を果たしていた4人は一斉に座り込んで肩で息をする。

 

 水晶に細かくヒビが入り、バラバラと崩れ消滅すると、行き止まりのところには岩やら何やらが混ざった残がいの山が出来ている。

 

 なんとも身も蓋もない攻撃だったが……これで敵も全滅! 地下水道の攻略完了!

 

「まったく……玻璃も少しは手伝ってくれてもいいじゃん……こんな融合大魔術……さすがに疲れた。」


 瑠璃ちゃんが不満そうにそう言う。

 

「そう言わないでよ……あたしだって、一人でゴーレム軍団と敵兵の足止めしてたんだからさ!

 あの数全部まともに相手にしてたら、もっと面倒くさかったと思うよ!

 さぁ……ここを上がれば、敵の本拠地! これからが本番! 行ってみようか!」

 

 そう言って、あたしは瑠璃ちゃんの手を取ると、立たせてやる。

 

「そうですよ……お姉様一人に戦わせちゃってたんですから……。私達もこれくらいやらないと……。」

 

「そうだっ! 瑠璃ちゃんって二言目にはめんどう臭いっていうんだもん!」


 紅と紫が瑠璃に言い返している……この二人もよく頑張った!


「あはは……瑠璃の姉貴、言われてるぞ!」


 柘榴にまで笑われて、瑠璃ちゃんが仏頂面をする。


「はいはい……結果的に楽できたと思うことにするっ! 玻璃……さっさと行こう! 先頭は任せた! こんなめんどくさい戦争なんて、とっとと終わらせよう。」

 

 次はいよいよ、バーツ城内へ侵入。

 外では、反乱軍による王都攻略戦がすでに開始されており、激しい攻城戦が繰り広げられているはずだった。


 元々……王都攻略戦は、包囲するのみにとどめて、じっくりと時間をかけて、国内を平定……その上で王都の市民たちや、残った軍勢に離反工作を仕掛け、内側から王都の城門を解放……。

 

 王城自体はまともな防御もない立派なお屋敷程度のものなので、その時点で勝負あり。

 

 国王達には退陣してもらい、その代わりに反乱軍の指揮官……第二王子のエドワーズを国王に据えて、名実ともに東方同盟の一国とする……これが帝国の描いたシナリオだった。

 

 これは王都の被害を最小限にした上で、犠牲も最小限に済ませると言うことで、多少回りくどいながらももっとも平和的な解決方法と期待されていたのだけど。

 

 数日前に飛び込んできた帝都への奇襲攻撃と、それに連動したような隣国ダルワール公国の挙兵、バーツ王国領内への侵入と言う知らせを受けて、あたしらも王都攻略を強行せざるを得ない状況となっていた。

 

 一応、ダルワール公国の救援部隊自体は、すかさず出撃した帝国の魔王領駐留軍が足止めしているようなのだけど。

 それに加え、西方軍の増援部隊が来援し、敵兵力は4万の大軍にまで膨れ上がっていた。

 

 対する帝国側は、帝都奇襲の混乱で完全に後手に回っており、帝国側の増援部隊は間に合わないのが確実……兵力に劣る魔王料駐留軍が突破されるのは、時間の問題らしかった。


 駐留軍が撃破されて、背後を突かれる形になれば、反乱軍なんてあっという間に蹴散らされる。

 

 なにせ、反乱軍と言っても実態はくわすき、斧なんかで武装した一般市民と二千騎程度の帝国義勇軍だけ。

 数自体は万単位の大勢にはなっているのだけど、装備も練度も話にならない……正面から正規軍と戦っても勝ち目はない。

 

 元々、西方と東方の話し合いの末、魔王様と言うバックを得た東方が強引に押し切る形で、バーツ王国の動乱については、表向き双方不干渉とすると言う条約を結んでいたのだけど。

 

 西方は帝都を奇襲して甚大な被害を与えると言う戦果を得て、東方との全ての条約を破棄、あたしら魔王軍とも戦う覚悟で戦端を開いたのだった。

 

 はっきり言って、番狂わせも良いところ……なにやってくれてんのさっ!

 

 だからこそ……あたしらが王城に直接殴り込んで、この国の国王達を倒し逆転の一手とする……それしか方法がなかった。

 もちろん、あたしらだけでこの国に残った一万近い兵の相手なんて無理がある。

 

 だから敵の残党を引きつける陽動の為、反乱軍による正面からの攻城戦も並行して行われていた。

 

 これは……相当な犠牲が予想されたのだけど……もはや、そうせざるを得ない。

 その程度には、あたし達には時間が無かった。

 

 これまでのバーツ王国軍残党との戦闘は、あたしら魔王軍の6人と精強な帝国義勇騎兵隊が正面に立つことで、反乱軍にほとんど犠牲を出さすに済ませてきたのだけど。

 

 エドワーズ達反乱軍側の強い要望もあり、結局……犠牲覚悟の攻城戦となってしまった。

 囲んでわーわー威嚇してる程度じゃ、陽動の意味が無いから……決死の全力攻撃!

 

 ……けど、それにも関わらず、状況は芳しくなかった。

 攻城兵器の類もその場の有り合わせの物ばかり、練度も低く、戦意の割には実戦経験も足りていない。


 先程も、日没前の総攻撃が撃退されたとの連絡があったばかり。

 

 攻城戦なんて、それこそ……あたしらが正面に立つなり、玉四姉妹あたりを連れてくれば速攻終わるんだろうけど。

 

 現状、帝都の戦いで大暴れした勇者とか何とか言うやつが、くろがねと魔王様を標的にしたと言う話で、目下魔王城の守りを固める必要があり……増援どころか、こちらも取り急ぎ黒曜をくろがねのガード役として魔王城へ帰したくらいだった……。

 

 ……黒曜については、うちのメンバーでもあたしに次ぐ実力者なので、はっきり言って戦力的に手放すのが惜しかったのだけど。

 くろがねが負けたと言う話を聞いた本人が泣きながら行かせて欲しいと懇願するので、ご希望に添わせた。

 それに……何だかんだであたしもアイツの事は心配だった。

 

 アイツは……戦場に立つには優しすぎるやつだから。


 ……と言うか、黒曜って……前々からくろがねにおネツだったんだよね……。

 つまり、あたしの妹たち……あたし以外全員そっち系だった……もう意味わかんないよっ!

 

 一応、言っとくけど……あたしには、そっちのケは無い……色恋沙汰とか、興味ないからねっ!

 あたしは、正義に生き、正義に死すのだ……ふふんっ!

 

 そんな訳で、現状はなかなか厳しい状況で……ワイズマンからも、もはやどうもならないので、撤退するよう促されているのが実情だった。

 

 けれど、ここまでやって反乱軍を見捨てて逃げ帰るなんて、あたしの信念……正義への裏切り行為だ。

 だからこそ、この起死回生の決戦は、あたしらだけで挑む……そういう流れだった。

 

 正直、犠牲を出さすにパーフェクトゲームでの完勝を狙っていただけに……無念極まりないのだけど。

 ……予定が色々狂ってしまった以上仕方がなかった。

 

 あたしらは絶対に負けられない……負けたら、バーツは西方の後ろ盾を受けて復活……当然、次は魔王領を舞台とした泥沼の戦乱が始まる。

 けど、あたしらが勝てば……ダルワールも西方も大義名分を失い一旦引くしかなくなる。

 

 まさに、ここが正念場だった!

そんな訳で、不退転の決意と共に玻璃ねーさんは決戦に挑みます。


彼女は、くろがねと正反対みたいな感じですが、目指すところは同じだったりします。

先の温泉回では、くろがねに強制露出プレイとか、色々やらかしてくれましたけどね。(笑)

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