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第二十四話「シグリーズの森の戦い」②

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第二十四話「シグリーズの森の戦い」②

---3rd Eye's---

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 絶望的な戦力差の中、突然現れて石巨人をあっという間に粉砕した黒いヘッツァーの登場!

 

 ロドニー達もその光景を呆然と眺めるだけだった。

 

「た、隊長……あれは……あのエーリカ姫様と互角に戦ったって言う魔王軍の……。それに……北の軍勢の兵器……戦車とか言うやつです! 味方……なんでしょうか!」


 サエリのつぶやきにロドニーも我に返る。

 

「お、おうっ! 良く解らんが……俺も回廊の戦いでアイツを間近で見たから知ってるっ! 魔王軍のエース、くろがねって奴だ……ちんまいクセに化物みたいに強い奴だ……! 良く解らんがあの戦車って化物を手懐けた……ってのか? だが……要するに、あれは俺達の味方って事だ! おいっ! こうしちゃおれんぞ! 敵が陣形を崩した今がチャンスだ! こうなったら、俺達も前に出るぞ! あんなチビ助共を矢面に立たせて、森のなかで縮こまってるとか帝国軍人の名折れだ! 全軍! 前へっ! 突撃開始っ!」

 

「りょ、了解! そういーんッ! とつげーきッ!」

 

 サエリの通信魔法で、帝国軍第78独立歩兵大隊の全兵士へ突撃命令が下った!

 ロドニー達も一斉に森から出て、突撃を開始する!

 

「えっと! 帝国軍の皆さんもごめんなさい! そこでストーップ! 近づかれるとむしろ危ないんですっ! これっ! 戦いはそこまでーっ! 西方軍の皆さんも、直ちに武器を捨てなさぁいっ! あくまで戦うと言うのならっ! まずは、わたし達魔王様の下僕が相手になります! それっ、ハチゴロウmkⅡ! 威嚇射撃、ファイアーッ!」

 

 くろがねがそう言って、右腕を振り下ろすと、応えるようにヘッツァーが砲撃っ!

 

 帝国軍の兵士達も含めて、その場に居た誰もが反射的に固まってしまった程の轟音が轟く!

 

 その砲弾は一瞬で西方軍の頭上を飛び越え、彼らの後ろの方へ着弾……盛大に爆発する!

 その轟音で落ち着きかけていた馬が再びパニックを起こし、暴走が始まる。

 土埃と爆風の残滓を浴びることとなった後方に居た兵士たちが一斉に武器を投げ出して、逃げ惑う。

 

 更に黒曜が黒曜石のナイフを次々と錬成すると、あっという間に100本近いナイフが辺りを威嚇するように飛び交い始める。

 

 しろがねもエトワールを構えて、騎兵隊の中心、司令官と思わしき者の乗る馬の足元へ威嚇射撃!

 

「待てっ! 解った! は、話し合おうじゃないか! お前たち! 逃げるな! その場で待機っ! これは命令であーるっ!」 

 

 しろがねに撃たれた男が喚く。

 西方軍は頼みにしていたゴーレム軍団を粉砕された上に、この一連の威嚇射撃だけで、もうグダグダだった。

 

 次から次へと逃亡する兵が続出していた……。

 下士官達が懸命に踏みとどまらせようと各所で怒鳴り声を上げているが、あまり効果は無かった。

 

 誰もがこの唐突に現れ、石巨人をたやすく粉砕した鋼鉄の怪物を前に、こんなモノ……どうにかできる訳がないと理解していた。

 

 この部隊は、言わば前衛部隊にすぎないのだが、左右に展開していた別の部隊からも、この情景は見えているらしく、彼らもまた固まったように動かなくなっている。

 

「えと……あなたが一番偉い人……将軍さんですか?」


 そう言って、くろがねがにこやかに笑いかけると一際飾りのいっぱい付いた兜をかぶった指揮官風の男が頷く。


「そ、そうだ……私がこの第12突撃歩兵師団指揮官のウッドラー二等少将である……貴様……魔王の手のものか! だが、そんなコケ脅しで我ら西方軍が屈するとでも思っているのか! どこからでも、かかってくるが良いっ! このわし自ら叩き切ってや……わぼぶっ!」

 

 何やら勇敢な口上を述べようとしていたようなのだが……最後まで言う前にその兜だけが吹き飛ぶ。

 兜のあご紐だけを狙ったしろがねの超精密射撃だった。

 

 ウッドラー将軍は弾が掠めた顎に火傷でも負ったらしく、顎を抑えながら落馬すると「アヒーッ!」なんて情けない悲鳴を上げて転げ回っている。

 

「くろがね……次は当ててもいいかな? 指揮官を一人づつ狙い撃ちするだけで、軍勢なんてあっさり壊乱するからね。狙撃兵の常套手段……手慣れたもんだよ? 皆、頭に目印付いてるから、片っ端から狙い撃てる」


 流れるような仕草で次弾装填しつつ、しろがねがあっさりそう答える。


「えっと、しろがね……一応、撃っていいって言うまで、ダメだかんね? あー、その……ウッドなんとか将軍さん、次あたりは顔にぽっかり風穴が空くかもしれないから、よく考えて返事してね。わたしも、このヘッツァーで虐・殺! デスッ! なんてちょっと嫌だし……弾がさすがに足りなくなりそう。 一人で決められないなら、もっと偉い人を寄越して欲しいんだけどさ! ねぇねぇ……オジ様、お・ね・が・い! お話し合いをしーましょっ!」

 

 そう言って、ヘッツァーの上で笑顔で両手を合わせてウインクなんかするくろがね。

 一応、こう見えてオジ様へおねだりする小悪魔的美少女を気取ってみたつもりなのだけど。

 

 漆黒のヘッツァーの上で夕日に背後から照らされた逆光状態の為、もはや小さな闇の魔王の如く……と言った貫禄。

 

 可愛らしいように聞こえて、実は物騒極まりないセリフも相まって……もはや、ただの脅し文句でしか無かった。

 

 一方、間近でその可愛らしい仕草を見て、ちょっとどきまぎするしろがねと、恋する乙女みたいな熱視線でくろがねを見つめる黒曜。

 

 実は、この二人……ここに来るまでタンクデサント状態で、ヘッツァーの屋根の上で延々口喧嘩してたりする。

 

 どちらの言い分も要約すると……「「くろがねは私の嫁、お前要らない!」」……と言った感じ。


 ……くろがねモテ期到来であった。

 

「くっ……ま、魔王の兵よ……解った……と、とにかく、我々も一旦引く……。だから、今の奴で後ろから撃つのだけはやめてくれ! じ、時間をくれっ! わ、わしも前線の一指揮官にすぎんのじゃ……本陣の総司令官と相談くらいさせてくれ!」

 

「おっけー! 承った! うんうん……まずは、平和的に話し合いよねっ! 帝国も殴り合う前に話し合うのが基本って話だしっ! じゃあ、いってらっしゃい……ウッドマン将軍だっけ? いい返事を期待してますからねっ!」


 満面の笑顔で手を振るくろがね。

 なお、名前を間違えているのは、人の名前をいまいち覚えないくろがね的にはガチで間違えているだけで、別に悪気はなかった。

 

「おのれっ! 魔王の兵め! 調子に乗りおって! あと、わしはウッドラーだっ! お、覚えておるがいいぞーっ! あ、こら待て! なんで、わし一人になっとるんじゃっ! 貴様らっ! わしを置いていくな!」

 

 そんなテンプレなセリフを残して、馬を捨てて走って逃げるウッドラー将軍。

 手下の兵たちは、これ幸いとばかり全員逃亡済みだった。

 

 こうして、西方軍の第一陣第12突撃歩兵師団はまとも一戦も交えること無く撃退された。

 

 恐る恐ると言った様子で、くろがね達に近づいていた帝国第78独立歩兵大隊の兵士達もお互いの顔を見合わせると、棚ぼた式に舞い込んできた勝利に、お互い抱き合って喜び合う!

 

 ロドニー中佐とサエリも例外ではなく、お互い抱擁しあっていた事に気付いて、慌てて離れる。

 そんな光景を見て、周囲の兵士も囃し立てる。

 

 くろがねも良く解らないなりに、お熱い二人なのね……とちょっと羨ましくもなったり……。

 

 かくして、西方軍4万の軍勢は先鋒のウッドラー隊一万が為す術無く壊乱撤退した事で、なし崩し的に敗退。

 

 彼らの予定では、日没前に帝国軍を粉砕……一気呵成に夜襲で反乱軍を撃破……と言う心づもりだっただけに、こんな形での敗退はまさかの事態だった!

 

 帝国軍魔王領派遣軍も全滅ギリギリの所でくろがね達に救われる形となり、大勝利!!

 

 かくして「シグリーズの森の戦い」と呼ばれる一連の戦いの初戦はこんな形で終わりを告げ、その決着は持ち越されることとなった。


戦車 VS 戦国時代レベル(火縄銃抜き)の軍勢なんて勝負ですからねぇ。

しかも、ドラゴンと一騎打ち出来る怪物剣士と、ファンネルX100のお化けアサシンのデサント兵付き。


無理ゲー!!(笑)

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