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第二十四話「シグリーズの森の戦い」①

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第二十四話「シグリーズの森の戦い」①

---3rd Eye's---

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 バーツ王国、王都ダントワース南部の森の中。

 シグリーズの森とも呼ばれる大森林地帯。

 

 そこは、帝国軍と西方軍との戦いの最前線だった。

  

「いよいよ……我が大隊の出番が回ってきたようだな……そうなると前衛の部隊は突破された……そう言うことか。サエリ上級陸尉……味方の戦況と王都の攻略戦の状況はどうなっているか?」

 

 帝国軍第78独立歩兵大隊隊長のロドニー中級陸佐はそう副官に告げる。

 時刻は間もなく夕刻……傾きかけた茜色の日の光に照らされながら、前方に集結しつつある西方軍の圧倒的な数の兵に思わず気圧される。

 

「はっ! 中佐殿……残念ながら付近の味方はすでに潰走し、最終防衛ラインたるこのシグリーズの森に配置された我が大隊を残すのみ……です。派遣軍本部では、残存兵力を再集結させた上で戦力の再編成をしているようですが。装備や馬の消耗が激しく、また怪我人がほとんどで戦力的にはあまり多くを望めない状態であり、再編成もこのままでは間に合いそうもありません。我が大隊が突破されたら、もはや敵の王都への進軍を阻む術はないかと思います……。また王都の反乱軍による攻城戦の状況は芳しくなく、先程本日三回目の総攻撃が撃退されたとの事です」

 

 鉄兜と胸甲姿の一般兵と違いローブ姿のサエリ上級陸尉が速やかに状況を説明する。

 彼女は大隊きっての腕利き戦闘魔術師でもあり、通信士としての役割も担っていた。

 

「そうか……どのみち敵が目の前に来たと言うことは、そう言うことだよな……。攻城戦はやはり駄目か……所詮は一般市民の寄せ集めだからな。だが、そっちは陽動で本命は魔王軍のチビ共らしいからな……なんとか打ち勝ってほしいものだ。本国の援軍はどうか? パーラミラ国防軍と本国の緊急展開部隊が出撃したはずではないのか?」


「やはり、皇都襲撃の混乱が続いており、せいぜい先遣隊の千騎程度の兵力しか間に合いそうもないとの事です。一応、魔王軍からも数人援軍を出したと言う連絡もあり、援軍が敵の後背を付く形にはなりそうなのですが……。如何せん、兵力差がありすぎるので、さしもの魔王軍の精鋭と言えど、どうにもならないかと」

 

「相手はダルワールの二万に加え、西方から二万の増援を受けて、合計四万だからな。こちらも一万程度の兵力でよくここまで粘ったものだよ。それに……あの西方の新兵器……石巨人とか言うデカブツ……あんなもんあれだけ出されちゃ、こっちの装備じゃ刃が立たん。攻城兵器か、戦闘魔術師くらいしか対抗手段が無いのでは厳しいな。あれですっかり戦の流れが変わっちまった……ったく、ふざけやがって……。以前の奴は、ちょっとデカくて硬いだけの人間サイズだったから、どって事なかったが……。向こうも新たな技術を導入したって事なんだろうな……こっちも試験中の大砲でもありゃなぁ……。サエリ……ここはもういい! 君は支援部隊の者や使えなさそうな怪我人共を連れて、後方へ下がりたまえ……」

 

 それだけ言うと、ロドニー中佐はスラリと剣を抜き、周囲を見渡す。

 数人の司令部付きの兵と目が合うと、誰もが面白そうに笑いながら、二人の様子を見守っていた。

 サエリ上尉は副官としては、相応に長い付き合いになるのだが、死出の旅路にまで付き合わせる気にはならなかった。

 

「はぁ……隊長、そう言って私だけ、仲間外れにするんですか? 司令部の紅一点だからと言って、特別扱いとかやめてください。私もこう見えて、魔術院の主席クラスの戦闘魔術師なんですよ? 一騎当千とはいきませんが百人力程度にはなります。どうせ後方といっても、ここを突破されたら市民軍と運命を共にするだけです。どうせ死ぬなら、これまで苦楽を共にした仲間や隊長と共に戦って散った方がいいです」

 

 そう言って、サエリ上級陸尉は微笑む。

 ロドニーとしては、日頃から堅物な副官としか見てなかったので、なんだこいつ、こんないい女だったのか……等と思う。

 

「困るなぁ……サエリ君、軍隊において上官の命令は絶対なのだぞ? 抗命罪って知ってるか? 西方だったら、それだけで首が飛ぶ……要するに死刑モノの重罪なのだ。だが、俺達が全滅したら結局そうなるから、これは俺の自己満足に過ぎんのか。解った俺の負けだ……野郎ども……スマンが、サエリ上尉のお守りもついでに頼むぜ」

 

「了解です……サエリのアネさんのお守りなら、いつもの事です。俺達もアネさんにはさんざお世話になったんで、その方が俺達もやる気出るってもんです。それにしても隊長……ここで、超強い味方が現れて、あの有象無象を蹴散らしてくれたりとかしないですかね」

 

 ロドニーの隣にいた兵がぼやく。

 確かに、そんな展開になったらそいつに全財産くれてやっても良い……そんな風に思う。

 

「そうだな……もしそんな奴が来てくれたら、最高だな。そん時はとっておきの酒でも振る舞ってやるさ! だが、残念ながらそこまで都合は良くないみたいなだな……さぁ、おいでなすったぞ! 野郎ども、歓迎会を始めるぞ! 帝国軍人の意地を見せてやれ! 日暮れまで粘れば俺達の勝ちだっ!」

 

 ロドニーの言葉に、周囲の部下たちが勇ましく掛け声を上げる!

 

 それに応えるように、地響きと共に3mはある石巨人共を先頭に敵軍が雪崩を打って突撃してくる!

 

 森の中での乱戦に持ち込む腹づもりとは言え、ロドニー達は元々大隊規模……たかが千人足らず……敗残兵と合流したので、1500人程度まで増強されているが……。

 

 対する敵の前衛は、石巨人以外にも軽く一万はいる……もはや、大隊レベルの戦力で対処出来る数ではなかった。

 

 けれど、ロドニー達も一歩も引くつもりはなかった!

 この先、守りやすい地形はもうない……増援も期待できない以上、ここで食い止めるしか無かった。

 

「帝国軍人とは、如何なる時も如何なる敵にも怯まず立ち向かう! ……例え相手が万の敵だとて、最後の一兵まで戦い抜く! 帝国万歳っ!」

 

 ロドニーがそう叫ぶと、周囲の兵達が帝国万歳と唱和する!


「全くもって、頼もしい奴らだ! なぁに、地の利はこちらにある……あのデカブツだって、こんな森の中じゃ、上手く立ち回れまい……おまけにトラップもてんこ盛りだ! 簡単にここを通れると思うな……西方の蛮族共がっ!」

 

 ニヤリと笑って、覚悟を決めるロドニー!

 

 けれど、その一万の軍勢の先頭を切って進む石巨人の上半身が突如、轟音と共に文字通り木っ端微塵になり、しばらく下半身だけで歩いていたが、ピタリと動きを止めてそれっきり沈黙する。

 

 そして、バァーンと言う樹を割ったような音が轟くとともに、石巨人に続いていた騎兵の兜が吹き飛び、落馬する!

 

 更に石巨人が爆発し沈黙する!

 

 一拍置いて、更に爆発! 爆発! 爆発!

 

 石巨人が標的にされているようで、次々とその巨大な身体に大穴を開けられ粉々に砕け散っていく!

 

 一体仕留めるのに、兵20人の犠牲は必要と言われた強力な石巨人が謎の轟音が響く度にあっけなく破壊されていく。

 

 流れ弾がその後に続く騎兵隊の目前に落ち、至近弾の爆炎に一斉にパニックを起こしたらしく、騎兵隊はその突撃陣形を崩し、各々好き勝手な方向へ走り出し、勝手にぶつかり合う。

 

 もはや、それだけで壊乱状態だった。

 

 更に後方から続いていた歩兵の一団も、騎兵隊の壊乱に巻き込まれ、たちまちパニックが連鎖する!

 

 勝手に乱痴気騒ぎを繰り広げる西方軍を尻目に、何処からともなく巨大な黒い箱のような物体が騒々しい音を立てながら、ロドニー達と西方軍の間に割り込むように走ってきて、その場でぐるりと旋回して止まる!

 

 その物体には、二人の小さな人影が乗っており、更に中からもう一人の小さな人影が出てくる。

 

「ふっふーん! あんた達、動かないでよっ! ……そっちのゴーレム軍団はあらかた始末したから……次は、あんた達に真正面から当てる! 言っとくけど、徹甲弾と違って榴弾だから、そんな密集陣形……まとめて100人は吹き飛ばせるよ!」


 ヘッツァーの上で腕組みをしつつ、そんな事を叫ぶ……くろがねだった!

はい、初っ端戦場クライマックスです。(汗)


カヤ様ゆる回、外伝回と来てこれ。

カヤ様と愉快なロザリオ隊がホットケーキ食ってほのぼのってる裏で、バーツ王国ではこんな激戦が!


今回のラストは、ドンデンドンデン…で始まる「ガンバスターマーチ」とかどうよ?(笑)

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