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閑話休題その1「温泉に行こうっ!」①

 ※今回は、外伝です。

 …本編とは関係ないこともないけど、あまり関係ない感じのお気楽話シリーズです。

 

 時系列的には第一章と第二章の間くらいのお話です。

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閑話休題その1「温泉に行こう!」①

---3rd Eye's---

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 魔王城の背後にそびえ立つ最高標高2500mほどもある「ウラニウス山脈」

 

 この山の中腹には、人知れず湧く温泉があった。

 魔王城浮上後、周辺探索してこれを見つけた魔王軍の少女たちはこれ幸いと、それを天然温泉として活用する事にした。

 

 泉のように岩の裂け目からお湯が湧いてくるところへ地面を掘り返して、岩を並べて、湯船に仕立て上げた程度のワイルドな代物で、目隠しの類も一切無し……なのだけど。


 その効能はいわゆるアルカリ泉と言うやつで、お肌がスベスベになって素敵な感じになると言うアレである。


 おまけに森林限界を超えたところにあるので、展望は抜群!

 

 魔王様やエーリカ姫様も話を聞いて、早速利用しすっかりお気に入りになってしまい……魔王様に至っては魔王城からの直通転移ゲートを作ってしまったほど。


 おまけに、帝国軍も最初はエーリカ姫様のお供が数人付き合わされた程度だったのだが。


 彼女達を震源とした口コミで噂が広がり、帝国軍の女性士官や兵士もやってくるようになり、更にその知り合いの民間人と……連日、東方各地から温泉目当ての人達があつまるようになってしまった。

 

 なのだけど……現状、この温泉、女性限定となっている。

 

 男性諸君も「俺達も温泉とか入りたいよ?」と言うのが本音だったのだけど。

 

 男性も……となると、仕切り作って覗き対策とか色々面倒なので、利用者一同一致の意見で山自体を男子禁制とすると言う事になってしまった。

 

 男性諸君涙目状態なのだけど。

 山の上の素晴らしい景観と開放感が良いのであって、それを仕切りとか無粋なもので覆ってしまうのでは魅力半減。

 要らない事を忘れてのんびり湯に浸かって、おまけにお肌もピッカピカ……。

 

 こればっかりは譲れないよねー! と言うのと、元々魔王軍は女の子ばかりなので、初めから男になんかこれっぽっちも配慮する気なんて無かった。

 

 温泉自体も元々は湯船の上を屋根代わりの布で張った程度のお粗末なものだったのだけど。

 帝国軍女性陣の有志達が資材を担いでえっちらおっちら山登りを繰り返して、登山道を整備したり、本格的な山小屋を作り上げてしまった。


 湯船の方もちゃんと底も縁もヒノキ造りの立派なものにアップグレード!

 

 その辺は、女性と言えど軍人ばかりなので、力仕事に男手なんか借りなくてもあまり問題なかったし、筋トレやダイエットにもいいよね? って事で、誰もが士気旺盛!

 

 その上、魔王軍の面々も全面協力だったので、もはややりたい放題だった。

 

 更に山の中腹には、帝国軍女性陣有志達による監視所が何箇所も築かれているので、出歯亀野郎はもれなくシャットアウト。


 なんだか、本業そっちのけ状態になっている人達も多いのだけど……。

 軍籍上彼女達には「ウラニウス山警備中隊」と言う正式名称が付いていた。

 

 真面目で有名な将軍さんが「あのさ、君ら仕事しようよ……」と言うごもっともな意見を述べたのだけど、エーリカ姫がドヤ顔で突き返した回答がそれだった。


 元々魔王領駐留軍の女性士官や休暇でやってきていた女性兵士達が、覗き騒ぎをきっかけにボランティアで始めた事だったのだけど。 

 こんな風に、エーリカ姫様が堂々と正式に部隊として発足させてしまっては、上の方も完全に諦めモードにならざるを得なかった。


「どんな時も、自重しないエーリカ姫様。私達に出来ないことを平然とやってのける! そこにシビれる憧れるぅ!」


 そんな調子で、エーリカ姫様は帝国では絶大なる女性からの支持を受け、やたらと逞しい女性達を量産していた。

 

 ……何と言うか女性ってのはいつの世も逞しいものなのだよ?

 でも、少しくらい自重したっていいのよ? エーリカ姫様。 


 さて、本日のこの通称「魔王様の湯」と呼ばれる温泉のお客様は「くろがね」と「玻璃」。

 

 この二人は、つい先程まで魔王城の訓練室で、訓練というより死闘レベルのガチバトルを繰り広げて、その直後なのだけど……和気あいあいで仲良しな調子で……要するにいつもの事だった。

 

「いやぁ……こんちくしょーっ! 今日も勝てなかったぁ! くぁあっ! お湯が染みるぅ!」


 一瞬、肩まで浸かりながらも、すぐさま立ち上がって仁王立ち状態になる玻璃。

 毎度のことなんだけど、手加減無用モードのくろがねに今日もボッコボコにやられて、気絶するまで戦ったくらいなので、あっちこっち打ち身だらけ、擦り傷だらけ……そんな有様だった。

 

 当然、色々なとこが丸見え状態なのだけど、湯気も立ってる上に今は夜。

 月明かりと湯気の巧みな効果で、ビジュアル的にはセーフだった。

 

「玻璃ちゃん……ダメだよ……ちゃんと座らないと色々丸見えだよぉ……。わたし、どうもこの露天風呂って、慣れないなぁ……。確かに景色とか凄いけど、なんか裸で外出歩いてるような気になって……って言うか、実際歩かされたしっ! 皆、恥ずかしくないのかなぁ……」

 

 そう言いながら、くろがねは口元まで湯に浸かって、半ば沈んでる有様。

 ちなみに、周囲には下の方と違って、木もなく茂みもなく、申し訳程度の草がチョロチョロと生えている程度で視界は極めて良好。

 

 いつもはタオル軍艦巻き状態で、ガチガチにガードを固めているのだけど。

 今日に限っては、玻璃にタオルを剥ぎ取られてしまいちょっと離れた脱衣場から、フルオープンな感じなところを全裸強行軍させられたのだった。

 

「あはは……大丈夫だっての! 帝国軍の人達のおかげで、この山自体が男子禁制みたいになっちゃったからね! って言うか、くろがね……お前もそんな恥ずかしがるなよぉ……むしろ、堂々としてなっての……。だいたい、お前さぁ……帝国軍の間でも超有名人なんだぜ……エーリカ姫と互角に戦った猛者ってことでさ!」

 

 だって、恥ずかしいものは仕方がないじゃない……そんな事をブツブツ言いながら、体育座り状態でますます沈み込むくろがね。


「そうですよー! くろがねさん! 今も私達の仲間が夜通し監視所で見張ってますから! 見られたとしても、どうせ同じ女性なんだから、そんな恥ずかしがらないでくださいよっ!」


 くろがね達の会話が聞こえていたようで、近くにいた3人組の帝国軍の女性士官の一人がそう答える。

 

「今日も、3人ほど出歯亀未遂のバカを捕縛いたしました……帰りに監視所でも寄って行かれては? いつもどおり、磔の刑に処したんで、見世物としては悪くないですけど……ちょっと刺激強すぎるかも?」

 

 別の少し真面目そうな女性士官が応える。

 

「大丈夫なんじゃない? 今日の連中は皆お粗末だったし!」


「あんたこそ、何言ってるのよぉっ! やだもーっ!」


 キャーキャーと三人が嬌声をあげながら、お湯を掛け合う。

 若い女性が三人も集まると、10人くらい居るように聞こえる……もっともな話だった。

 

 ……この山に入り込んだ出歯亀野郎の末路……。

 それは彼女達、帝国レディース隊に山中を追い回され、運悪く捕まってしまうと袋叩きにされた挙句、監視所の横で24時間全裸磔の刑に処されると言う無残なものだった。

 

 おまけに、体中に落書きをされて、「私は破廉恥極まりない愚者です」と書かれた看板を首にかけられる。

 お情け程度の腰布と目隠し。

 それとトイレくらいは許されているのが、彼女達の優しさの現れだった。

 

 尚、将官だろうが貴族だろうが関係なし……この山自体が男子禁制。

 その法を犯したものは、誰であろうが処刑されるという噂は帝国軍では周知の事実だった。

 

 実際……帝国の英雄にして大貴族の子息でもあるダイン将軍も、覗きチャレンジの末、捕まって処刑されたと言う噂すら流れていたのだけど。


 たぶん、これは普段の行いが悪いだけ。


 本人は意外にも「覗きカッコ悪い! やるなら堂々と正面からだろう?」とカッコイイのか、馬鹿なの? みたいなセリフを吐いて、正面から堂々と強行突破し、結構いいトコまで行ったのだけど、運悪く鋼と黄金にばったり遭遇。


 いつぞやの再現フィルム状態になった。

 

 とにもかくにも、その恐るべき警備体制は、帝国軍では誰もが知る承知の事実だったのだけど……。

 男の浪漫とやらを実践すべく無謀な試みにチャレンジングする若者たちは後を絶えなかった。


 一応、倍率のいい望遠鏡とかで麓から見れば、人影くらいは見えるのだけど。

 もっと近くで! より鮮明に! とか考えちゃうのが、男の浪漫。

 

 そして、今日もまた一人……若きロマンチストの断末魔が木霊する。


 ……なんて言うか……若いっていいよね? 馬鹿なの?


 実は、ここだけの話。

 ……魔王領の偵察に来た西方の密偵も少なからずこの監視網にひっかかってたりする……。


 優秀な西方情報軍の獣人密偵ですら、彼女達の監視網を突破出来ていないので、まさに鉄壁の守りと言えた。


 そこまで厳重に監視しているなら、その先に重要機密があるに違いない……と色々勘違いしちゃった西方もなんだか躍起になって、次々密偵を送り込んでいるのだけど……。

 

 実際は、出歯亀と同一視された挙句、一緒に処刑されると言う有様で……全く無意味な犠牲だけが積み重ねられていた。


 と言うか、どっちもそろそろ気づけよ。

 

「くろがね……いい加減、のぼせるぞ……そんなじゃ! うりゃあっ!」


 そう言って、玻璃はくろがねを羽交い締めにすると、思い切り立ち上がる。


「う、うにゃあああっ!」


 久々の……くろがねうにゃあ絶叫!

 

 なんもかんもフルオープン状態で、振りほどこうと足をバタバタやるので、湯気がなかったら完全アウトな情景だった!

 

 温泉の湯気って奴は実に困ったもんで、こんなビューティフォーな情景も完璧にナチュラルガードしてくれる。

  

 そんな調子で全裸フルオープンを強制されたうえに、きっとたまたま……だと思うのだけど、くろがねの足の間に玻璃が太ももを滑り込ませた。

 一瞬、ビクッと身体を震わせたくろがねはたちまち真っ赤になると、本気モード特有のキッとした目付きになり、残された唯一の反撃手段を実施!


 思い切り勢いを付けた後頭部からのヘッドバッド!

 

 バコーンと言う鈍い音と共に、いい感じでヘッドバッドが入った玻璃は、そのまま白目を剥くと、倒れ込んで温泉にブクブクと沈み込む。

 

「わああああっ! 玻璃ちゃーん! ごめーん! しっかりしてーっ!」


 全く騒々しい、入浴客であった。

えっと、本当にやらかしたサービス温泉回。

しかも、まさかの前後編です。(笑)


テコ入れ? サービス? なんかの伏線?

いや…まぁ、全部です。(笑)


うん、こんなお気楽回を待ってましたって人も多いかもしれんですね。

この話が好評な感じだったら、別キャストでまたやりますw


一応、捕捉。

「魔王様の湯」は白馬鑓温泉はくばやりおんせんみたいな感じのとこです。

詳細はググるべし。

猿倉ってとこまでは、電車とバスで行けるのでそっから4時間ほど延々登山。

いわゆる山ガールに大人気スポット。

つい、10年位前まではフルオープン混浴だったらしいけど、今は自重したらしく水着OKになったらしい。

たまに自重しない人がいるとかいないとか。


まぁ、私には登山とかもう無理なんで、別世界のお話です。(笑)

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