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第二十三話「カヤ様のホットケーキパーティ」①

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第二十三話「カヤ様のホットケーキパーティ」①

---Kaya Eye's---

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「さぁっ! 皆さん! ホットケーキパーティを初めますわよっ!」


 わたくしが、そう言うとぞろりと居並ぶ、ロザリオ隊の100人の兵士達はポカーンとしています。

 

「あ……あの、カヤ様? 言われたとおり、全員集めましたけど……。ホットケーキパーティってなんですか?」

 

 わたくしの隣に、跪く猫耳、猫尻尾のクリスさんがそう答えます。

 

「クリスさん、語尾はにゃーです」


「あ、はい! ホットケーキパーティって何ですかにゃー!」


 さて……ここに至るまでの経緯ですが。

 わたくし達は、西方最北の街……「サザンカルマ」と呼ばれる街に戻って来てます。

 

 わたくし達もてっきり、軍部にでも拘束され、しばらく不自由な生活を余儀なくされる……そう思ってたのですが。

 意外にあっさり解放され、わたくし達の家に一旦戻ることになったのですが。

 

 街中に、護衛と称する情報軍の一個中隊がおりまして……。

 

 コソコソと見張ってるのがバレバレで気分悪かったので、片っ端から捕獲して、我が家の前に連行して……。

 中隊長……クリスさんを捕獲したので、彼女に命令して全員かき集めた……と言ったところです。

 

 それにしても、クリスさん……わたくしの奇襲に気付くわ、物凄く素早いわで……このわたくしとした事が危うく逃げられるところでした。

 

「ホットケーキとは、小麦粉と重曹と砂糖を混ぜ合わせて、卵と牛乳で溶く! そうして作ったホットケーキミックスをフライパンで焼けば出来上がり! あとは、バターを乗せて、はちみつをかけるだけの簡単スイーツです! とっても美味しいのですよ? せっかくなので、お近づきの印って事で皆で一緒に食べましょう!」


 そう言って、わたくしはクリスさんに笑いかけます。

 

「は、はい? そんな事の為にあんな執拗に追い掛け回されたのですか……私……にゃ?」


 クリスさん、呆然。

 執拗に追いかけたのは、クリスさんの逃げっぷりが半端じゃなかったからです。


 わたくし……相手に逃げられるとつい、どこまでも追いかけたくなってしまう性分なのです。

 

「まぁまぁ……良いじゃないですか。別にカヤ様も取って食おうとか思ったわけじゃないですから。クリス二等少佐……一応、私からの命令って事にしときましょうか?」

 

「アリー二等上佐殿! いえ、えーとお気遣いありがとうございます」


 アリーさんの方が上官にあたるせいか、クリスさんが一気に大人しくなりました。

 階級ってのも、便利なものなのですね……。

 

「それにしても……こうして集めると、普通の人間より獣人の方のほうが多いのですね。西方連の軍隊でもこんな編成……珍しくないですか?」

 

 獣人の方自体は、ここサザンカルマでも珍しくないのでわたくしも見慣れているのですが。

 100名中、半数以上が獣人と言うのは比率があまりに高いです。

 それに女性も多いようです……そもそも隊長が女性と言うのもなんともレア。

 

 それによく見ると、猫系獣人がやたら多いような気がします。

 おまけに、人里では滅多に見かけない二本足で歩く巨大猫と言った風体の方すらいます。

 

 彼らは聴覚や気配の察知が抜群に上手いので、わたくしの隠形術すらも見破ります。

 と言うか、実際そうでした……腕は確かと言うのは認めざるを得ません。

 

 わたくしも猫をいっぱい飼ってたので、彼らの鋭敏さは良く解りますからね。

 猫はいいです……暖かくて、ふわふわで柔らかで……。

 

「ロザリオ隊は、情報軍でも対特殊戦に特化した部隊ですからね。敵の間者や特殊部隊を相手にすることを想定しています。そう言う手合を相手にするには獣人ほど当てになる連中はいませんからね。もっとも、東方への潜入任務には全く使えないので、要は暇だったんでしょうね」

 

 アリーさんがそう付け加える。

 なんでも、東方は獣人差別が酷いらしくて、差別の少ない西方に皆、追い出されるように移住してしまっているので、東方を獣人が歩いていると、速攻で捕まったりするそうです。

 

 何処の世界にも差別と言うものはあるのですが……このクリスさんのように愛らしい人だっているのです。


 こう言うところも、東方や帝国の無粋なところです。

 

 おまけに、拳銃を突きつけて仲良くしようとか、偽善じみた侵略行為を繰り返したり。

 悪の帝国の名に恥じない……まったく、倒し甲斐がある国ですね。

 

「アリー二等上佐殿! 暇だったとか人聞き悪すぎます! その辺は適材適所と言うことで……カヤ様もひとつお願いします。それとも、我々の護衛では不満なのでしょうか」

 

 クリスさん、尻尾が倍くらいの太さになってます。

 これは……怒ってますね。

 

「うーん、そうじゃなくて……カヤ様やアオイ様に護衛が必要なのかな? って純粋に思いまして……」


「まぁまぁ、アリーさん。要するに、クリスさん達はわたくし達の直属の護衛隊ってところなんですよね?」

 

 そう言って、クリスさんに話を振る。

 ちなみに、クリスさんは、本名は伏せてるそうなので、わたくしが主要メンバーにコードネームを命名しちゃいました。

 

「はい、所詮は情報軍こちらの都合の押し付けでですからね……。本来は影ながら護衛と言う話でしたが……。こうして、あっさりバレてしまったのなら、もう逃げも隠れもしません! こうなれば、あなた方を上官と思って、誠心誠意護衛任務をさせていただければと思います! 使い捨ての特攻任務でも、我々は喜んで引き受ける所存です!」

 

 なんて言いながら、耳はパタリと倒れ、尻尾がしなしなとしなだれてます。

 

 この辺、ヘタレモードの猫ちゃんと一緒。

 何と言うか、とっても可愛いです。

 

「じゃあ、まず最初の任務を申し付けますね。」


 そう言って、わたくしは微笑みます。

 

「に、任務ですか! かしこまりましたにゃーっ!」


 そう言うとクリスさんはなんだかワクワクと言った様子で、敬礼をします。


「では、このメモの材料を買い揃えてきてください。100人分ともなると、それなりの量になりますので、一人じゃ面倒くさいです。それと大きな鉄板とかあると便利なのですが……」

 

 そう言って、クリスさんにメモを押し付けます。

 

「了解しました……にゃー! ところで、この語尾ににゃー付けろってのは何なんですか? 言われたのでやってますけど……。私達……確かに猫系獣人ですが猫なんかとは全然違いますよ。確かに皆、魚とか割りと好きですけど、火が通ってないと食べれませんし、別ににゃーとか鳴きませんよ?」

 

「可愛いですよね?」


「え、あ……はい」


「クリスさん可愛いので、今後はそうやって、語尾ににゃ~と付けてください。命令です……解りましたか?」

 

 そう言って、わたくしはニッコリ微笑みます。

 

「はいですにゃー!」


 クリスさん、ビシっと敬礼。

 

「では……糧食班長! それと主計の! こっち来るにゃー!」


 クリスさんがそう言うと、デッカい猫みたいな獣人と大人しそうな普通の人間の女性の方が前に出ます。

 人間の女性の方は確かこの中隊の士官の一人で、わたくしがコードネームを付けた方です。

 カレンさんと命名しちゃいました。

 

「糧食班長には、野戦調理装備一式の設営とカヤ様のお手伝い! 会計のカレンは、適当に10人位引き連れて、市場でこのメモに記載された材料を調達! 復唱の要なし! ただちにかかれーっ! にゃーっ!」

 

 クリスさんの号令一下、キビキビと各々の仕事に取り掛かるロザリオ隊の面々。

 

 クリスさん自身は動かず、隊のメンバーに次々と命令していく感じで……なかなかの練度だと言うのは容易に見て取れます。

 

「なんだか皆、張り切ってるねぇ。私もホットケーキとか久しぶりだから、楽しみだよ。と言うか、この世界でも材料揃っちゃうんだ」

 

 アオイ先輩が嬉しそうに一言。

 

 こう見えて、わたくしは抜かりない女。

 その辺は前々からちゃんとリサーチしていました。


 何と言っても砂糖については、この街の特産品ですからね。

 

 材料が巨大アリマキなのはいただけないのですが……。

 共生関係にある巨大蟻の露払いとか、わたくし達も仕事としてよくやりました。

 

 ふくらし粉……重曹についても、近場に重曹泉の温泉があるそうで、パンを焼くのに使ったりしてるくらいなので、こちらも問題なし。

 作ろうと思えばケーキだって作れちゃいます。


 けど、ここまでちゃんと揃ってるのにスイーツについてはなんとも貧相なものばかり。

 いっそ、この街の名物にしちゃってもいいくらいなのですが……。

 

「カヤ様は……異世界の方なんですよね? 異世界の料理とか、結構楽しみですにゃー」

 

 だいぶ、クリスさんも緊張が解けてきたようで、嬉しそうにそんな事を言います。

 まぁ……少しくらい打ち解けてもらわないと、肩が凝りますからね。


「ふふ……クリスさんもきっと気に入りますよ」

 

 そう言って、わたくしもクリスさんに微笑みかけます。

 

 そんな風に和んだ所で、アオイ先輩がちょっと真面目な顔になります。

 

「ところで……結局、私らの働きでどれくらい情勢が動いたんだろね……。その辺の事って、クリスさんとか何か聞いてない? アリーさんとこにもあんまり情報降りてこないみたいなんで、イマイチ良くわからないんだよね……」

 

 アオイ先輩の言うことももっともです。

 情報軍は内輪にも必要以上の情報を漏らさないらしいのと、アリーさん軍人としてはあまり評価高くないみたいで、重要情報からはわざと遠ざけられてるきらいがあるのです。

 

「え? そりゃあ……まぁ、それなりに知ってはいますが。アリー二等上佐殿、二人への情報開示ってどこまで許されているのでしょうか。その辺、私はちょっとなんとも言えないんですが……にゃー?」

 

「ふふん、クリスさん……。この二人に信頼されたいなら、隠し事はなしにしましょう。どうせ上の方も、都合のいい情報だけ流して、良いように動かそうとかそんな風に考えてるんじゃないですかね。けど、西方の命運はこのおふた方次第なんですからね! もう知ってること、全部ぶち撒けちゃってください! 私の責任に於いて、許可します。」

 

 アリーさん、なんかカッコイイです。

 クリスさんも何だか諦め顔。

 

「情勢ですか……少なくとも帝都の被害は甚大ですね。行政と軍事の中枢としての機能は完全に麻痺状態……。帝国の主将たるダイン将軍が戦線離脱、帝国の雌狐姫も後始末で身動き取れない状況のようですね」

 

「へぇ、ダイン将軍ってあの金色のだよね? あれで死ぬとは思ってなかったけど……やっぱ、しぶといねぇ……。逆を言うと、やっぱそれくらいでなきゃね……絶対、今度こそ正々堂々正面から戦って決着付ける!」

 

 アオイ先輩がそんな感想を漏らす。


 けど、本気のアオイ先輩が倒しきれなかった時点で十分脅威。

 もっとも、戦線離脱と言うことは重度のダメージを受けたと言ったところでしょうか。

 

 考えてみれば、わたくしもあのしろがねに追い詰められて、アオイ先輩が来てくれなければ危うかったのです。


 あの加奈子にしたって、途中で完全に戦意をなくしてしまっていたようで、本気すらも見れていない。


 あの女の怖さは、状況や相手に応じて戦い方を最適化してくる柔軟性にあります……だから、上辺だけの装備や能力で戦力を計れるような相手ではありません。

 

 あのしろがねも見た目は小さな子どものように見えて、恐ろしいほどの手練。

 あの二人が組むとなると、正直わたくし一人では太刀打ちできないでしょう。

 魔王軍……思った以上に厄介な相手のようです。

01/02

アクセス傾向から割り出したブラバポイントその2!

こっちも全面改訂です。


正月でのんびりしてても良かったのですが。

気になって、やらずには居られなかった。

我に後悔なし。


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