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第二十二話「たたかいの後に」①

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第二十二話「たたかいの後に」①

---3rd Eye's---

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 帝国の被害は、犠牲者……民間人7368名、軍人2534名。

 約2600棟の建物が倒壊。

 

 民間人の大半は、空襲による火災とカヤによる爆撃の被害者。

 カヤの無差別爆撃は、教会や集会場と言った多数の民間人の避難していた施設も巻き込み、各所で手に負えない規模の大火災が発生し、それはパニックを誘発し大混乱を引き起こしていた……その為、多くの犠牲者が出てしまった。

 

 特に勇者とダインの交戦現場付近は被害が酷く、周辺1km以内では軍人も民間人も全滅と言う有様だった。

 尚、先の数字はあくまで死亡確認できた数であり、行方不明者は数えられていない。

 行方不明者と重軽傷者を含めるとこの数字は4倍程度にまで跳ね上がる。

 

 軍人は、爆撃に巻き込まれたり、西方軍との交戦での死者が半数。

 もう半数はカヤとアオイの二人と交戦した結果……その大半は、序盤の遭遇戦とくろがね達が取り逃がしたあとの追撃戦で返り討ちになった者だった。

 

 特に追撃戦での騎兵隊の被害が多く……これはカヤが退路に仕掛けていったワイヤートラップと長距離砲撃で、追撃した一個連隊規模の騎兵が壊滅したのが痛かった。

 

 エーリカは余計な犠牲が出るだけという判断で追撃を制止したのだが……帝都を焼かれ、民間人を虐殺され、復讐心に猛った軍人達を止めきれなかったが故の悲劇だった。

 

 皇城については半壊状態……皇族にも死者が出ており、もはや悪夢と言っていい程の被害だった。

 行政の最高機関としては完全に機能停止状態……エーリカと近衛師団が中心となり、臨時行政府を開設することで、かろうじて機能しているものの、復旧作業や通常業務で誰もが忙殺されているような有様だった。

 

 海軍は……海岸線の制海権を一時的に奪われながらも、全戦力を集結し、西方海軍との死闘を繰り広げ、西方海軍側の数隻のフリゲートを残して、壊滅させることに成功したのだが。

 

 その前のカヤとの交戦で戦列艦を三隻、フリゲート多数を失っており、それを含めると東方艦隊の6割を失うと言う凄まじい被害を受けていた。

 

 稼働可能な艦船の比率から言うと、凡そ8割……合計40隻あまりもの艦が戦闘不能となった。

 当面はまともな作戦行動どころか、海上警備行動もままならないとの事だった。

 

 西方軍は、出撃した艦隊30隻中2隻のフリゲートを残し全滅。

 炎上し沈んだり、降伏したり、座礁したりと……理由は様々ながら、一様に士気がやたらと高く、艦が沈むか全戦闘員が戦闘不能になるまで抵抗をやめない艦が続出し、東方側の被害拡大の一因となっていた。

 

 海軍の死者、行方不明者数は、双方艦船の被害が多すぎて、どちらも計上出来ていないような有様。

 

 西方側については、相手の事までは把握できていないのが実情なのだが……。

 まず、西方の飛行船は元々使い捨てだったので、全機未帰還。


 飛行船を曳航してきた飛竜は、野放し状態となり大半が行方不明。

 飛行船の護衛だった20騎ほどの竜騎兵は、圧倒的多数の帝国側の竜騎兵と戦い全滅。

 

 降下部隊は合計で100名程度だったが、事前に潜入していた情報軍の兵士も相当数戦いに参戦しており、合計で300名ほどの兵力だったと推測された。

 

 いずれも帝国近衛師団と治安部隊との交戦で全滅したのだが、これもまた西方軍の自爆攻撃や死にものぐるいの抵抗で、帝国側に大きな被害が出ていた。

 

 捕虜の数は、わずか40名ほど……それも自ら進んで投降したものは一人もおらず、全員重傷を負い動けない所を捕虜にしたと言った調子。

 

 他に……ダイン将軍は自力で地面から這い出てきた所で力尽き、そのまま昏睡状態となり今もまだ意識は戻っていない。

 

 魔王軍もくろがねが心理的ダメージからか倒れてしまい……しろがね共々魔王城へ強制帰還となった。

 

 この戦いの結果判定をするとなれば、戦術レベルでは敵を全滅させた帝国側の勝利なのは確かだった。

 

 東方海軍は壊滅的なダメージを受けたが、相手も似たようなもので、海軍同士の戦いは痛み分け。

 恐らく年単位で東西両海軍ともまともな作戦行動は実行出来ない……その程度には両者とも尋常ならざる被害を被っていた。


 帝国陸軍は兵力自体にはさしたる被害は出ておらず、軍事行動に支障はないとは言え……。

 相手の陸戦部隊も今回失ったのは、西方の第三の軍……情報軍が主力……全滅前提の作戦行動ゆえ、さしたる痛痒はない。

 そもそも、被害総数も500人に満たない程度。

 

 結局、西方軍で帰還できた者はアオイ達三人とフリゲート艦がたった二隻だけだった。

 

 海軍の戦場は沿岸部だったために、かなりの者が陸に逃れて、帝国の捕虜になったのだが。

 帝国側もカヤの攻撃で沈められた船の生き残りが相当数捕虜になっているので、これもお互い様。

 

 そんな有様なのだが、被害率のパーセンテージで言うと、帝国側の判定勝ち。

 

 しかしながら、西方は帝都に打撃を与えた事実があれば十分であり、全滅に近い損害は想定内。

 一方、帝国側は帝都を守りきれず最大の敵をまんまと取り逃がしたのは明らかな失態だった。


 もはや、誰の目にも帝国の敗北は否定出来なかった……。

 

「……帝国軍はなにをやっていたのですかっ! くろがね達は国賓扱いだから、危険はないと聞いていたのに、この体たらく! 皇都が最前線になり、国賓たる者達が戦場で戦い殺されかけた? ……こんなバカげた事が許される訳がないっ! おまけに、民間人にも甚大な被害を出して……! 守るべきものを守れなかった挙句、敵を取り逃す! 帝国軍は名ばかりの張子の虎の集団かっ!」

 

 お通夜状態の東方軍最高軍事会議で、被害報告をそれまで無言で聞いていた鋼が激高して立ち上がる。

 辛辣極まりない言葉だったが、誰もそれを咎めることは出来なかった……。


「抑えろ……鋼……気持ちは解るが……お前に発言を許可した覚えはない……二度は言わない……黙れ。そもそも、帝国軍もあの状況でよくやったと言えるだろう……この世界で史上初の空襲だったんだ。おまけにダイン将軍が敗れるほどの超級戦力……お前ですらあの敵には勝てない……そう言うレベルの相手だった。むしろ、この程度の被害で済ませた時点で、大したものだ……くろがねの件は、あいつに出撃を命じたのは私だ。エーリカ姫達は、むしろ我々に避難するよう言ってくれたからな……帝国の責任を問うのは筋違いだ」

 

 ワイズマンが強い口調でそう鋼をたしなめる。

 鋼も憮然とした表情を崩さないまま、椅子に座りなおす。

 彼女はくろがねとしろがねが帰還した代わりに、ワイズマンの警護役としてこの場に来ていた。


 魔王軍のナンバー2「鋼」

 

 くろがねを猫可愛がりしている彼女は、状況を知り真っ先に援軍としてゲート設営直後に来援したのだけど。

 結局、助太刀は間に合わず、彼女のフラストレーションは相当なものだった。

 

 報復として、グノー連邦の首都に単身殴り込むとか言い出して、ワイズマンも宥めるのに苦労したのだった。

 

 黄玉は、帝都の復旧作業と負傷者の救出作業に携わっており、まだ現場から戻ってこない。

 他にも魔王城から非戦闘員の桜達が救援隊として送りこまれており、紅玉はその取りまとめ役として、忙しく働いているようだった。

 魔王城については、しろがね達も戻しているし、黄金や翠玉もいるのだから問題ないとワイズマンは判断していた。


ここ数日、昔取った杵柄とばかりにイラスト描きとかやってます。

くろがねのSDイメージイラストとか、設定資料にアップしてます。

(他のキャラも作りたいとか、言っときながら、他所様の作家さんのキャラをイラスト化とかやってたのはナイショ。)


本編の方ですが、カヤ様達のせいで帝都にとんでもない被害が出てしまいました。

ドゥーリットル空襲どころの騒ぎじゃありません。

アオイ様もカヤ様も「悲しいけど、これ戦争なのよねー」状態なので、知ったこっちゃありません。


ちなみに、東京大空襲では死者だけで10万単位、被災者100万人規模と言う史上最大規模の被害が出てます…。


戦争ってやつはいつの時代も何処だってクレイジーなのだよ。


Q:この小説って萌え小説なのでは?

A:萌え異世界戦記物と言う謎ジャンルです。(笑)

 挿絵も充実させて、萌要素補完しようと努力のまっ最中なんだぜ。

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