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第二十一話「紅蓮の騎士」①

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第二十一話「紅蓮の騎士」①

---3rd Eye's---

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「しろがねっ! 待った! その女と……少し話をさせて……!」


 カヤとしろがねの間に、くろがねが飛び降りて間に割り込む。

 

「あら……あの縛めをどうやって……? 時間経過で自然消滅する以外に破壊なんて出来ないはずなのに……」


 追い詰められているにも関わらず、余裕の表情を崩さないカヤが訝しげに尋ねる。


「手足の一本くらい切ったってなんとかなる……悪いけど、あの程度でわたし達を足止めできるなんて大間違い! 言っとくけど、物凄く痛かった……死ぬかと思ったくらい! それより……今、名乗ったあなたの名前……シノザキ・カヤって……。さっきの投技だって、私知ってる……まさか、あの……「ウロボロス」のカーヤさん?」


「ウロボロス」のカーヤ。

 それは、カヤがガンフロでプレイヤーだった頃の名と、自ら長を務めていたギルドの名だった。

 その名を知る者など、この世界には居るはずもない……カヤもそう思っていた。

 

「……何故、その名を……貴女はわたくしを……知っているの?」


「あ、あの……わたし……カナ……そう言えば解る? わ、わたし……あなたに色々聞きたいことが……」


 くろがねとしては……彼女に聞きたいことは山ほどあった。

 自分が逝ってしまったあとの世界……何よりも、一人の少年の事が……気がかりだったのだ。

 

 くろがねの言葉にカヤは俯くと、両目を片手で覆い隠すとしばし、黙りこくる。

 

「まさか……こんな所で貴女に会うなんて……冗談……カナ……いえ、加奈子さんは病でお亡くなりになったはずでしょう……。わたくし……お墓参りにだって行って、はっきりとこの目で貴女の死を確認したのですよ……。そうなると、ここはあの世なのか、亡霊かなにかって事なんでしょうかね」

 

 酷く無感情な声だった。

 けれども、くろがねはその言葉を好意的に受け止めたらしく笑顔を浮かべる。

 

「あはは……ここは、お墓参りありがとう……とか言うべきなのかな……なんか、シュールだけど。詳しくは省くけど、色々あってこっちで第二の人生みたいな感じになってるの……カヤさんもそんな感じ? それより、カヤさん……あなたはリアルであの子の知り合いだったんだよね? だったら、あれから……どうなったのか教えて……お願いっ!」

 

 くろがねの懇願にカヤはしばし無言になる。

 ブツブツと何か呟いているようだったが、その声はくろがねに届かない。

 

「……けるな……」


 静かに……短くカヤは呟く。

 

「……な、何が……?」


「……ふざけるなっ! お前は……自分が何をしたのか……どれだけあの人を苦しめたのかっ! 勝手に死んで居なくなって……貴女はそれで終わりだったのかもしれないっ! けど……残された側はどうなったと思ってるのですかっ! いいわ……解りました……これはチャンスですわよね……死人相手にどうする事も出来ないと思ってたけど! もう一度、貴女を殺す……わたくしはその為に、この世界に呼ばれた……きっと、そういう事なんですね。神様なんて、わたくしは信じてませんけど……なんとも粋な計らいをしてくれますわね……。ならば……絶対に、確実に、わたくしの手でもう一度死なせてあげますよ……!」

 

 そう言って、流れる血を拭おうともせずに、顔を上げたカヤはまるで能面のような無表情だった。


 重心を落として、身体を斜めに向けて、両手をだらりと下げた独特の構え……全くスキのない古武術の構え。

 

 その放たれた殺気の凄まじさと敵意にくろがねも思わず後ずさる。

 

「ま、待ってよっ! カヤさん……なんで、怒ってるの! 話を……話を聞いてよっ!」


 くろがねにとっては、カヤに恨まれる理由なんて、見当もつかなかった。

 自分の死後の事なんて、解るはずもないのだから。


「くろがね……もう下がって……。くろがねはこんな奴の相手なんてしなくていい。私が殺すから……こいつの技は見切った……だから、もうここで終わらせる」

 

 暗く無感情な声と共に、しろがねが一度は下ろしていた銃口を再びカヤに向ける。

 

「あら……しろがねちゃん、私も混ぜてよ……」


 そう言いながら、現れたのはエーリカだった。

 ……彼女もくろがね同様、自らの足を切断することで、縛めを逃れていた。


 自己修復では時間がかかると言うことで、くろがねの身体錬成回復魔術で回復してもらったのは良いのだけどれど……。


 くろがねは他人に使うのは始めてだった為、死ぬほど痛かった上に、神経接合などに問題があったようで、実は歩くのがやっとの有様。

 

 なのだけど……その辺はド根性で耐えて、決して顔には出さないエーリカ姫様……流石と言ったところだった!


「くろがねちゃんの事情はイマイチ良く解らないけどさ……この女には落とし前を付けさせないと……。このまま、無事に帰したとあっちゃ帝国の威信に関わる問題だからね。けど、これでまた3対1……あんたのやり口はもう割れてるから、さっきみたいに簡単にはやられないわよ。確かに、貴女の強さは認めざるをえないけど……。強力なのはそのインチキ臭い糸であって、貴女自身の身体スペックは人並み程度なんじゃない?ネタが割れれば、対処なんていくらでも出来るわ。なんなら、降伏でもする? 西方との交渉材料って意味じゃ、是非そうしたいところなの。西方の特攻作戦なんて、無謀な作戦に付き合わされてお気の毒に……結構頑張ったんじゃない? ここらで白旗上げたって、誰も文句言わない……それに……」

 

 彼女は、一旦言葉を区切ると上空を見上げる。

 

 そこには2m程の巨大な異形の騎士の姿があった……特徴のあるシルエットだから、すぐに解る。

 積層装甲と多数のスリットで構成された異形の鎧……。

 

 随分苦戦したようだったがあの姿……戦闘形態のダインに間違いない……そうエーリカは確信する。

 

「うちの旦那もそっちの相方を打ち倒したみたいよ? つまり、あなたが最後の一人って訳。ダイン……お疲れ様……あなたにしては、随分手こずったのね!」

 

 エーリカの呼びかけに返事もせずに、その異形の騎士は……腕組みをしながら、ゆっくりと降りてくる。

 

「……ダ、ダイン……?」


 シルエットや姿形は、ほぼ同じなのだが……近づくにつれ、その全身のカラーリングが金色ではなく炎のような真紅だと言うことにエーリカは気づく。

 

「アオイ先輩……遅いですよ……わたくし、危うく殺されるところでした」


 思わず黙りこくってしまったエーリカの代わりにカヤが口を開いた。


「ゴメンゴメン……すっかり遅くなっちゃったよ。悪いね……アイツ、物凄く手強くてさ……まさか、私の同系統の敵だなんて予想外だったよ。ファーストステージが色違い同キャラ対決とか反則だっての……。でも……カヤちゃんの絶体絶命のピンチに間に合ったんだから、許してよ……。あれだ、ヒーローってのはヒロインのピンチ、ギリギリにやってくる……それがお約束って奴っしょ!」


 カヤの傍らに降り立ったその紅蓮の騎士……アオイが放った言葉に、くろがね達は言葉を失う。

 ダイン将軍の色違いのようなその姿にも驚愕を覚えたのだけど、アオイがここにいると言うことは……。


 それは……最強と謳われたダイン将軍の敗北を意味していた!


さて、しろがねの本気の前に追い詰められたカヤ様!


現れたのは、まさかの勇者アオイの本気モード!!

真打登場と言った風格です。


次回、決着です。

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