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第十八話「嵐の前の静けさと」①

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第十八話「嵐の前の静けさと」①

---Kurogane Eye's---

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 他人のフラグを自らの手でへし折るのは、なかなか痛快なんだなって……。

 そんな事を思いながらわたしは、勇敢に戦い撃沈したワイズマン様の額に濡れタオルを乗せてあげた。

 

 ……何があったかと言うと。

 

 わたし達がワイズマン様達の部屋に入った所で、紅玉さんがワイズマン様を押し倒して、いわゆるマウントポジションを取った場面にばったり遭遇。

 

 チャンスとばかりに、ワイズマン様が紅玉さんにヘッドバッドをかますと言う……なんだか、デジャヴを感じる光景を見せつけてくれて、紅玉さんとワイズマン様は仲良くダブルKOとなった……と言う訳。

 

 現在、黄玉さんが紅玉さんをお説教中。


 部屋の隅っこで正座させられて、黄玉さんが珍しくキレッキレになってる。

 末っ子にお説教される長女ってどうなんだろうって思うけど……。

 紅玉さんもその剣幕にはもうタジタジで、黄玉さん……実は結構強かった。

 

 なんか、紅玉さん……「ワイズマン様の妻です!」とか何とか言ってたけど。

 いかにも頭の中のどピンクな妄想で暴走しちゃってた感じで……そう言うのなんか見覚えあった。


 あの古武術使いのヤンデレ女とそっくりだった……名前はカヤとか言ったっけ。

 

 何の因果か……あんにゃろーは、PKギルドのボスなんかやってて、わたし達の側はPKカウンター……PKKギルドに協力してた関係で、彼女達とは何度も戦う羽目になったのだけど。


 なんかやる事なす事いちいちメチャクチャな上に、おまけに、同じくらい強いカンフー女みたいなのといっつもコンビ組んでて、アイツらの相手は本当に大変だった。


 よく解かんないけど、リアル武闘派だとかでどっちもSランク級、とんでもなく手強かった……けど、あのコ達とのギリギリの攻防は……ちょっと忘れられない。


 今となっちゃ、あれも向こうの世界のいい思い出……もう二度と会えないだろうけど。

 あの二人……あっちで元気でやってるかな。

 

 それはともかく、解った事。

 紅玉さんはヤンデレ。

 

 ほんと、面倒くさいんだよね……この手の人達って。


 姫様はワイズマン様が紅玉さんに手を出したとか何とか言ってたけど。

 この人、そんな無節操な人じゃないしね。

 

 ワイズマン様って、真面目ぶってるけど、あちこちでフラグ立ててるから、密かに人気あるんだよね……。

 翠玉さんとか、なんかチョロイン状態だし……翡翠なんかも恋する乙女みたいな感じで色々語ってたし……。

 

 けど……好きな男の子と二人っきりとかなって、色々暴走ってのはわたしも昔やらかしたけどね!

 女の子だって、やる時はやるんだ! 女は度胸って言うじゃない。


 けど、その手の暴走って大抵、爆発したり、第三者の介入とかでベッキリヘシ折られるもんなんだよね。

 

 だから、今のはもう必然……紅玉さんも少しは反省して欲しい。

 あと、ワイズマン様も……もうちょっと毅然としないと駄目っしょ……まったく。

 

「やれやれ……くろがね、すまんかったな。ナイスタイミングの介入だった!」


「いえいえ、わたしも何となくこんな事になってるんじゃないかなぁって思ってましたから!」


 そう言って、わたしはワイズマン様へ笑いかける。

 うん、なんかわたしってば、上機嫌。


「で……、その様子だと何か頼みごととか、そんなところだと思うんだが……何があった?」


 ワイズマン様復活。

  

 ちなみに……あれから、姫様に見せてもらったのは……なんと戦車っ!

 

 もっとも、真っ黒焦げで内装までこんがりなんて、スクラップ同然だったんだけど……。

 帝国はそんな戦車やロボット兵みたいなのを次々繰り出す敵を相手取って、大苦戦中らしいのだ。


 話によると、帝国軍も万単位の損害を受けるボロ負けっぷりで、最前線にあたる最北端の国に至っては、完全に蹂躙されて、一国まるごと失ったような有様らしいのだ。

 

 銃火器開発に躍起になってるのも、そいつらに対抗するためで、もはや総力戦体制に突入しているようだった。

 西方との戦いに消極的だったのや、わたし達との同盟関係を望んだのも、その敵の存在のせいらしかった。

 

 そんな訳でわたしは、帝国の状況とその戦車軍団について、ワイズマン様へ説明する。

 その上で、義のために一戦やらかすべきだと力説する。

 

「なるほど……帝国に恩を売れて、かつその無作法なバカをとっちめると。ついでに、お前は戦車やら銃やらをブン捕って、ウハウハとそう言うことか!」


 さすが、ワイズマン様……鋭いっ!

 確かに、戦車もコピー錬成出来そうだったし、戦車の中から銃火器の残がいを見つけちゃったから、ぶっちゃけ今すぐにでもその敵のところに殴り込んでいって、ブン捕ってきたい……そう思ってたりもする。


 実は、姫様には内緒にしちゃったけど、銃火器の燃え残りに一丁だけ無事な拳銃……ルガーP08なんてのを見つけちゃって、こっそり持ってきちゃった……。


 別に、その程度……教えてあげても良かったんだけど……国と国の信頼関係に絶対なんてない。

 近代銃なんて、オーバーテクノロジーを軽々しく渡して良いものか……正直、迷ってしまったので保留にした。

 

 それに……なんか、帝国って防諜関係が甘いんだよね……実際、先の戦争でも偵察し放題だったし、蒼玉さんが湖作っちゃったとこだって、やられたら補給断絶する重要拠点なのに、警備もなんもなし。

 

 この皇城の警備とかも外からの侵入者対策とかは、かなり厳重みたいなんだけど、中ははっきり言ってザル。

 わたしがその気になれば、城中どこだって自由自在に動けると思う……。

 それに使用人とか買収されたら、情報とかもだだ漏れだろうし……その辺、あまり対策してないような印象だった。

 

 何と言うか……良くも悪くもお人好しな国って感じなので、色んな重要機密情報……西方なんかにだだ漏れなんじゃって気がする。

 なんとなく、日本に似てる国って思うんだけど……こう言うとこまで一緒なのはなんでなんだろ。


 行きがてら、お忍び馬車に乗ってる間も街中で変な視線感じたし……わたし達がここにいる事もバレてるような気がする。

 まぁ……バレたからって、どうこうされるとは思えないんだけどね……。


 とにかく、帝国と情報共有するのもいいけど、帝国の敵に情報が漏れる可能性は留意する必要があった。

 

「ブ、ブン捕りとかそんなのは、ついでですよっ! ついでっ! わたしも、もうすっかり魔王軍のエースとか呼ばれちゃってますからね! 破壊と恐怖をバラ撒く血塗られた魔王様の剣として、その本領を発揮しちゃいます!」


 とりあえず、話を戻す。


「まぁ……別に本領発揮とかしなくてもいいんだが、別に止める理由もないな……。ただ話を聞いた限りだと、敵の正体についてはちょっと心当たりある……。だとすれば、少し厄介な話になるかもしれんな……」

 

 ……ワイズマン様は敵の正体に心当たりあるっぽい。

 

「もしかして……姫様と同じような使徒だったりとか……そんななんですか?」


「確証はないが……第7使徒「混沌の戦車カオスオブチャリオッツ」って奴だと思うな。無人の陸戦兵器群を使ってくる辺り、あいつだろうな……。ただ、その場合、少し問題があってな……そいつ、我々の側の使徒なんだ。つまり、魔王様と私……それとお前……「黒の節制」と同じ陣営ってことさ。そうなると、姫様やダイン将軍のいるこの帝国を敵とみなしてるのは当然だな。まぁ……奴のやり方は色々問題あるのは解っているんだがな」

 

 はぁ? なにそれ……要するにわたし達の仲間って事?

 普通に性根の腐った外道だと思うんだけど! そんな仲間要らないよ!

 

 そもそも、その陣営ってなんなのさ? 魔王様の側って意味じゃなかったの?


 それに、わたしと姫様は、その陣営って視点から見ると敵対関係っぽいけど、ちゃんと仲良くなれたんだよ?

 拳を交わして、死線ギリギリの中、培った友情はもはや魂の絆ってところ。

 

 そんな外道が仲間とか、納得できないし、仲良くなんて出来そうもないんだけどさ!

 

「そうすると、ワイズマン様は……手出し無用って言いたいんですか? わたし……そのなんとかチャリオッツってのに、すっごいムカついてるんですけど! 一国滅ぼして、民間人とか平気で虐殺するような奴なんですよ! でも、一応、言っときますけど……別にそいつ、ぶち殺しとかしませんからね。わたし、人殺しとか絶対嫌ですからっ! せいぜい、ぶっ飛ばして持ってる武器全部ブン捕って、土下座させて反省させるだけにします! あの世で殺した人々に侘び続けろーっ! とか言いたい所ですけどね……泣くまでグーで殴る程度にします」

 

 断言してもいいけど、この手のやつって本人割りと弱っちい。

 でも、グー殴り一発で死んじゃうような虚弱児だったら、どうしよう……。 


「まぁ、お前ならやっぱりそうなるよな……「黒の節制」も殺さずは徹底してたしな。「黒の節制」が出てくると、もはや戦争にならんってのが通例でな。なにせ敵味方問わず、争う奴は全員半殺し、強制武装解除。たまにやりすぎて虫の息にしちまったりしても、回復魔法みたいなので治してたからな……お優しいんだか、酷いんだか……。私としちゃ毎度、大迷惑な話だったんだが……まぁ、それはいい。お前がアレのオリジンだったと知った今となっちゃ全部納得できる……なんとも複雑な気分だがね」

 

 なるほど……さすがわたし、歪みねぇ。

 

 殺し合いも争いも嫌だから、武器を全部叩き壊して、やる気のあるヤツは全員叩きのめす。

 やりすぎちゃったら、アフターケアで治療するとか……それってどうなの? って思わなくもないけど……。

 

 ……結果的に平和的解決の道が開かれる?


 確かに……結果だけを見れば、そうなっちゃう気がするんだけど……。

 

 って……何、その力づくなゴリ押し平和主義……。

 平和主義者クラッシュって言って、ぶん殴って大人しくさせるのとどう違うの?

 

 半死人もあっさり治すって、ひょっとしてあのめっちゃ痛い身体錬成回復?

 あの感じだと、即死さえしてなきゃ、どんな重傷でも回復できるっぽいし……他人にも使えるって事なのか。

 

 けど、あれって損傷した箇所を瞬間的に切除して、コピー錬成した新品と入れ替えるって超乱暴な回復だから、他人様に使って良いものなのだろうか……。

 人間って、痛すぎてショック死とかだってするんだけど……。

 

 けど、「黒の節制」の戦い方は……わたし的には間違ってないような気がする。

 誰も殺さずに戦いだけを止めて、ぶっ潰す! となると、やっぱ、そうなるのか……な?

 

「まぁ、どうせ「混沌の戦車」は我々と連携するとか、共に戦うつもりなんてないだろうな。アイツはそういうやつなんだ……。それに魔王様の方針としては、基本的にお前らの好きなようにさせたいって事なんだ。使徒同士の戦いとか、そんなのは400年前に終わっちまったようなもんだ……。私自身も要するに助っ人枠みたいなもんだから……別にお前に使徒同士の戦争を強制するつもりはない。そんな訳で、お前の言うように帝国に手を貸すってのは、問題ない。……今、帝国に倒れられても、こちらとしては困るからな。ところで、支援はいるか? 使えるコマとしちゃ、ここにいる全員ってとこだな。どうだ? お前ら……話は聞いてたと思うけど、くろがねはご覧のようにやる気満々なんだが……」


 ワイズマン様が、三人に問いかける。

 しろがねは当然のように頷いている。

 

 紅玉さんも黄玉さんも、問題なしとの答え。

 

 紅玉さんは……「ワイズマン様のご命令とあれば!」とかめっちゃ気合入ってる。


 この人も……歪みねぇ人だよね……ヤンデレ属性の人って皆そうなのかな?

 けど、そうだからヤンデレになるんだろうね。


「それじゃあ……ワイズマン様も魔王様も、わたしの好きなようにして構わないって事なんですか?」


「その辺りは、魔王様からもはっきりと言われてるからな……好きなようにやらせてみろってな。それに、お前……こうと決めたら、人の話なんて聞かないだろ」

 

 うーん……言われてみれば。

 ガンフロの仲間たちからも頑固だの、言い出したら聞かないって言われてたなぁ……。


 まぁ、いずれにせよ……わたし達の方針は決まった!

 好きにしていいって事なら、最初にやる事は敵と戦えるだけの戦力の拡充。

 

 これは……敵地強行侵入の上で分捕りだね!

 

 戦車の一台でも分捕れれば十分……おまけに近代小火器類ゲットでわたしの火力も大幅強化できる……。

 弾丸もコピー出来ちゃうわたしなら、補給の問題もクリア!

 

 軽くひと暴れでもすれば、敵戦力も削れて、一石三鳥くらいにはなる。

 戦えば戦うだけ、強くなる……それがわたし。

 

 ふふん……黒鉄の女王……「黒の節制」……出撃ですっ!

 

 なぁんてねっ!

そんな訳で、話は戻ってくろがねサイド。


くろがねが前世の思い出って事でカヤ様の事語って、その上で新たな敵と一戦! と言った調子なんですが。

完全に「くろがねちゃん! 後ろーッ!」状態ですね。

そんな余裕かましてる場合じゃない…。


次回は、スットコ中佐ならぬ、アリーさんのスニーキングミッションです。

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