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第十六話「新しいちから」③

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第十六話「新しいちから」③

---Kurogane Eye's---

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 そんな訳で、射爆場のど真ん中で帝国技術陣によるしろがねの銃の品評会のようなものが始まってしまった。

 しろがねの……「エトワール」って銘付きのは、特殊すぎて参考にならなさそうだったので、わたしがコピー錬成した方を貸してあげている。


 ちなみに、この「エトワール」……弾道特性から、わたしは最大射程で1000m、5-600mが有効射程と判定していた。

 はっきり言って、普通に現代銃並み。

 

 ベースになっているのはベイカー銃と呼ばれるイギリス製の初期のライフル銃のようなのだけど、明らかに元々のスペック以上の性能だった。

 

 この銃……なにやら匠の技か何かで魔改造されたようで、銃口内部や線条の加工精度がグラインダーで削ったみたいにツルツル……。

 要はオーパーツ級のチート改造銃なのだ……素材も銀みたいで銀じゃない謎素材。


 わたしがコピーすると、素材は普通の鉄になるのだけど……この差は良く解らない。

 比べた感じだと、しろがねのはちょっと軽い上に、明らかに命中精度が高い。

 なにこれ? 


 黄玉さんによると、未知の魔術強化が入ってるとか何とか言ってた。

 ひょっとして……しろがねの錬成ってわたしの上位互換とかそんな? ずるいっ!

 でも、しろがねならむしろ頼もしいって考えれば良いのか。

 

 だって、しろがねは……わたしのナイト様なんだもん……。

 

 さっき、気付いたんだけど。

 しろがねって、前世男の子の可能性が高いんだよね……。

 

 色んな話から推測するに、しろがねは……フランス帝国のナポレオン配下……それも親衛隊クラスの超精鋭だったっぽいんだよね。

 で……当時の軍隊って、女性兵士なんて皆無。

 将軍格の愛人とか、男装の麗人が混ざってたって話もあるみたいなんだけど……そんなの極少数。

 

 そうなると、しろがね=イケメン銃士様……と言う図式が成り立つわけで……。

 そんなしろがねと抱き合って寝たり、お風呂で触りっことかイチャラブしてたんだよ?

 

 乙女としては、そりゃあもう色んな妄想があれやこれやで……思わず、頭が沸騰しそうになりました!

 

 もちろん、今はしろがねは女の子……けど、その心はイケメン銃士様。

 アリですよ! アリっ! めっちゃアリですよっ! わたし的に!

 

 それに、紫と紅だって、女の子同士でも愛があれば大丈夫って言ってた。

 しろがねサマぁ……これからもわたし達は一緒だよ? ふふっ……。


 なんて、色々妄想に浸ってると、技術者の人たちの唸り声に我に返る。

 案の定、技術者の皆様は一様に「この線条が弾丸に回転を与えるのか!」とか「弾丸を布で包むのは溝と銃身との密着性を上げる為……」とか割と的確にキモの部分を理解している様子。


 それにやっぱり銃身内部の加工精度に目が行ったようで「これは……ここまで磨き上げるとか、どうかしてる!」とかなんとか言ってるけど、それ多分、変態職人の仕事だから、真似できるとか思わないほうがいいよっ!


 それにしても、わざわざ説明するまでもなく、現物を見ただけで未知の技術を理解する……この人達、実は結構凄いんじゃないだろうか。


 で、案の定……「これなら一方的に撃たれない」……だの、「これは、あの敵と戦える武器だ!」……みたいな事も言ってる。

 

 やっぱり、「あの敵」ってのがキーワード。

 

 敵……マスケット程度では射程が足らず撃ち負ける……となれば、少なくとも4-500mクラスの長射程の銃火器を使う軍勢……そんなのを相手にしてるという想像が成り立つ。


 レベルとしては、幕末物とかに出てくるスナイドル銃とかドライゼ銃……もっと進んでる可能性もある。

 

 そう考えると、銃火器開発に心血を注ぐ理由も納得が出来る。


 銃火器装備の軍勢と中世レベルの騎兵中心の軍勢じゃはっきり言って勝負にならない。

 相手が機関銃とか装備してたら、文字通り薙ぎ払われておしまい。

 

 現実でも騎兵が活躍できたのはいいとこ日露戦争辺りまで……それだって、実際は馬から降りて歩兵として塹壕戦って……なんて調子だったから、それ騎兵じゃないよね? 状態だったと言う……。

 

「……姫様、帝国って何と戦おうとしてるのかな?」


 とりあえず、直球な質問を投げてみた。

 しろがねに銃の構えとかを教えてもらってた姫様が、ドキッとした感じで振り返ると苦笑する。


「あはは……さすがに、そうなるわよね……これはもう見てもらった方が早いわよね。……ケルビン教授……この娘達に例の物を見せてあげてくれる?」


「よろしいので? あれは、我が国の最高機密に属しております……さすがに、それは……」


「私が許すつってんのっ! 文句ある? だいたいこの銃……うちの最先端の長銃身フリントロックより、50年は先を進んでる銃なのよっ! 性能だって、はっきり言って桁違いじゃないの! こんなの見せられたら、うちの立場ないじゃないっ! どうせあんたらなら、物を見ただけでも結構得るものあったんでしょ? それもたった今、作り出せたばかりなんて……貴重な代物をついこないだまで戦争してた相手にポーンと貸してくれてんのよっ! だったらこっちも機密だなんだの、けち臭い事言ってらんないでしょっ!」


 さすが姫様。

 ケルビン教授以下、技術陣も全員一斉にシュタッと敬礼。


 しろがねカスタムのベイカー銃については……。

 錬成解除しようとしたら、なんかすっごく名残惜しそうにしてたので、どうせ一時間位で消えちゃうから、分解とかしてもいいって事で、しろがねからもちゃんとOKを貰った上で、技術陣の人たちに預けることにした。


 なにせ、この銃はしろがねが作った銃なんだからね……わたしもコピー品を使わせてもらうけど、あくまでこれはしろがねのもの。


 なにせ一応、こっちも姫様の拳銃パクった借りがあるし、この人達なら次の段階、弾丸自体を加工するミニエー式ライフル、更には現代の銃にも通じる後装式ライフル銃にも、割とすんなり到達するような気がする。

 と言うか、ミニエー銃以降の銃火器って、工業力の進歩に伴って、爆発的に進化するんだよね……。


 元々の基礎的な工業力や技術力もあるのだから、段階を踏めば第一次世界大戦レベルまで数年程度で到達するんじゃなかろうか……。


 そうなったら、またパクらせてもらうって事でいいかな。

 なんか大砲とか迫撃砲とかも作ってるらしいし……と言うか、迫撃砲なら鉄パイプなんかでも作れちゃうから、帝国の雑貨屋とか巡るだけで、材料とか手に入りそう……わたしでも作れそうな気がする……。

 

 さすがに、我が魔王軍にもガンスミスなんて人材いないから、銃火器開発は帝国技術陣に恩を売って、わたしの知識も惜しみなく提供して、その成果をこっちにも流してもらう……。

 

 そんな持ちつ持たれつの関係でも作れれば、わたしとしては最高!


 けど、その前に帝国の銃火器開発を急ぐ理由もちゃんと把握しておかないと。


 ……少なくとも他国との軍事的優位性の確保の為とか、そう言うのじゃないだろう。

 結果的にそうなっちゃうとは思うけど……。

 

 掛け値無しでこの国はこの世界最強の国家……技術開発、文化、経済……どれを取っても一流、歴史と風格を備えた洗練された国。


 おまけに物騒な覇権主義とか世界統一の野望とかとも縁がなく、強大な軍事力を持ちながら、それを背景にした話し合いと融和を重んじる理知的な平和主義。

 

 帝政を敷いてると言っても、独裁国家みたいな感じじゃなくて、皇帝陛下は最後に承認の判子を押す係。

 ……話を聞いた感じだとそんな印象を受けた。


 こんな感じの国……どっかにあったなぁ……と思ったら、わたしの母国……日本だ。

 今の日本がもっと強大な軍隊を持ってたとすれば、多分こんな風になる。


 なんだ、いい国なんじゃないか……。

 わたし達みたいな明らかな異物も平然と受け入れる度量と言い……必要以上に喧嘩売らない平和主義といい……。

 姫様とすっかりお友達になってしまったのもあるけど、なんか……この国が好きになりつつあるな……わたし。


 けど、そんな国が相当な無理して、リソース注ぎ込みまくって、それまで存在すらしなかった銃器を開発するなんて、尋常な事じゃない。


 おそらく敵は、近代兵器だのオーバーテクノロジーを所持するチート国家とかそんなのじゃないだろうか?

 転生者なんて、魔王軍のほぼ全員だそうだし、姫様やらダイン将軍とかも似たような感じらしいし。

 

 現代知識を使って、どこかの国を乗っ取って世界征服とかバカなこと企んじゃうヤツとか絶対いそう。


 見ればすべて解る……そう姫様は言ってたけど。

 この調子だと、たぶんわたし達も巻き込まれる……けど、むしろ率先して介入すべきじゃないだろうか。


 わたし達は、この世界に飛び込んできた強烈なイレギュラー。

 ある意味、安定していたこの世界のバランスをひっくり返した以上、力ある者としての義務や責任と言うのが必然的に生まれる。


 それに……わたし達の戦いの結果もこの世界にとっては大きな波紋となっていた。


 東方とわたし達魔王軍は事実上の同盟関係となってしまったのだけど。

 

 世界のもう半分……西方がこのまま大人しくしているとはとても思えなかった。

 わたし達の世界でも、こんな風に巨大勢力同士がかち合って、一方的な勝ち戦なんてのはほとんどない。

 

 軍事技術なんかも一方だけが突き進んでも、諜報活動や兵器鹵獲などで相手に漏れて、一時的に優位が作れたとしても、いつのまにか対抗されてしまったりする。

 戦争ってのはそういうものなのだ……。

 

 だから、わたし達のような強烈な戦力が出現した以上、必ず対抗戦力と呼べるものが現れる。

 これはほぼ間違いなかった。

 

 姫様やダイン将軍の話だと、西方は回廊の戦いの大敗と、バーツ王国を見捨てた事が大きな軋轢となっていて、分裂の危機にあると言う話だった。


 そうなると……死にもの狂いの起死回生の一手を打ってくる。

 

 軍単位ではどうにもならないと言うのは向こうも思い知っただろう。

 けれど、強力な個人……姫様クラスの強豪……そんなのが出てくるとしたら、話は別。

 

 超強力なボスキャラみたいなモンスターとかだって出てくるかもしれない。

 

 それに、帝国が戦っている敵だって……どれくらい強力なのか全く見当もつかなかった。

 

 戦いと強敵の予感……。


 気を抜いてる場合じゃなかった。

 わたしも……姫様の時は誰も殺さずに済んだけど……この先はもう解らない。

 

 殺さずに……勝つためには……。

 強く……もっと強くならないと駄目なのだ……わたしは。

くろがねちゃん、どピンク妄想爆裂中です…この娘、基本的に腐女&喪女ですから…もうデレッデレです。


実はパワーアップイベントと言いつつ、しろがねがパワーアップ→くろがねもパワーアップと言う図式でした。

ちなみに、銃火器装備により純粋な戦闘力で言うとしろがねの方がかなーり強くなってます。

くろがねは、敵に合わせて戦闘中に強くなるとかそう言う手合ですんで、実はあんまり強くないです。


余談ながら、ガンフロの方で、アオイ様とカヤ様の現実世界でのショートエピソードを公開中です。

ガンフロもぼちぼち再起動しますんで、そっちもよろしく!


彼氏彼女のガン・フロントライン!! 外伝「篠崎さんと杜若さんの帰り道」

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