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第十四話「帝都」①

そんな訳で……第一部につづいて、第二部となりますが。

一応、注意事項がありまして……。


最初、結構地味です。

ついでに、第二部は鬱展開とか重めの展開が増えてくるので、そう言うの嫌いな人は適当なとこでスキップ推奨。


その上で続編の「今日から、私も魔砲少女っ! あれ? なんか字、間違っとらん?」でも先に読んでください。

第二部飛ばしても、違和感なく話が繋がると思います。(笑)


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第二部 帝国編 第十四話「帝都」①

---3rd Eye's---

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 暖かな春の日差しの中を馬車が進む……黒塗りの大きく立派な無紋の4頭立ての馬車。


 ディエルギス帝国、帝室関係者御用達のお忍び馬車……なのだが。

 本日、この馬車は多くの重要人物達を乗せていた。


 進行方向逆向きで右奥に座っているのは帝国第三皇女エーリカ、そしてその膝の上で眠りコケているのはくろがね。


 ダイン将軍はしろがねと黄玉の二人に窓の外の風景……帝都各所について解説中。

 なんとも楽しげで微笑ましい風景だった。


 エーリカの向かいにはワイズマンと紅玉。


 なお、魔王軍の面々についてだが、全員普段と違う服装だった。


 帝国皇帝陛下の表敬訪問に向かう代表が、メイド服や書生のような姿じゃ駄目だろうと言う事で、それぞれ魔王様のデザインした軍服姿になっていた。

 

 ちなみに、魔王様の趣味のひとつに、実はコスチュームデザインというものがあった。

 今回のコンセプトは、軍服風それでいて魔王軍にふさわしい感じ……らしかった。


 ワイズマンは黒基調、肩から胸への金の飾り紐、金糸の縁取りの将校服。


 紅玉と黄玉の二人は、白基調の将校服、それぞれ赤と黄色のアクセント……肩の徽章と飾り帯が入り、足元はタイトスカートとロングブーツと言う姿だった。


 髪型も二人揃って、いつものツインテールではなく、シニヨン風にまとめており、いつもより落ち着いた雰囲気になっている。


 くろがねは、例の「黒の節制」のミニバージョンの服装を着込んでいる。

 

 実物をディフォルメしたようなその姿は、むしろ可愛らしく結構好評だった。

 デザイン的にフォーマルで通じるもので、くろがねも至って気に入った様子。


 しろがねもくろがねとお揃いを希望して、同じ格好の色違いバージョンを着込んでいた。


 こちらは青基調で銀糸の縁取り、くろがねと違って「ⅩⅦ」のローマ数字が刺繍されていた。

 くろがねも数字の意味をワイズマンに聞いたのだけど、教えてやらないとはぐらかされてしまった上に、しろがね自身もあんまり気にしてなかった。


「お久しぶりね……ワイズマン、戦場以外であなたとこうして向かい合うことになるなんてね……」


 膝の上で寝息を立てるくろがねの髪を優しくなでつけながら、エーリカが口を開く……その声はひどく優しげだった。


「そうだな……君の名はなんと呼べばいいかな? 帝国第三皇女のエリシエル・フォン・ディエルギス姫かな? それとも「女帝エーリカ」か? それとも……」


「あら、相変わらず情報通なのね……エーリカ姫でいいわよぉ……。もう今や、そっちの名前で通ってるし、使徒って事もとっくに知れ渡ってるし……。わたしは、エリシエル姫でもあり、使徒エーリカでもある……だから、あなたの知る「英梨香」とは少し違うかもしれないけどね。けど、私は私……根っこのところは何も変わっちゃいないわ。きっとあなたもなんでしょうけどね……タカヒロ」


 エーリカがワイズマンの本名を呼ぶと、ワイズマンも口元を綻ばせる。

 そして、無言で見つめ合う二人。

 

 敵対しあう二人にも様々なドラマがあった……幾多もの世界で幾度にも及ぶ戦い。

 お互い相対し、殺し合った事も幾度となくあった。

 

「そうだな……君は変わっちゃいないな……私も……あの頃と変わってないのかもしれんな。まぁ……今はそちらさんとは、争うつもりもないからな……お互い、束の間の休戦って事でいいよな?」


「そうね……私達としても、現状魔王軍とは仲良くしたい所だからね。……使徒としての立場なんて、とりあえず脇に置いちゃいましょう」


「やれやれ、軽く脇に置いて良いもんじゃないのだがな……本来は。そういや、お前ってさ……西方の奴らからは、帝国の女狐とか呼ばれてるらしいじゃないか。なかなか言い得て妙なあだ名で、ちょっと笑ったぜ……なんなら、女狐姫とでも呼ぼうか?」


 そう言って、ワイズマンが笑うと、エーリカはふくれっ面で返す。


「なによそれっ! それとさっきから、聞きたかったんだけど。その隣の赤いチビ女は何なのよっ! さっきから人の事、すっごい睨んで来るし! 今もこれ見よがしに馴れ馴れしく腕絡めたりなんかして、ワイズマン……いよいよ、あんたロリコン趣味にでも目覚めたの?」

 

 そう言って、エーリカは立ち上がると、ワイズマンの隣で、幸せそうな顔でその腕を抱きしめる紅玉をドンッと指で指す。


「あら……私の事ですか? 私、こう見えても、ワイズマン様の妻……ですの……。先の戦いで無事帰還したら、結婚を申し込むつもりでしたの……でも、色々忙しくて、申しそびれてしまって……。けど、これはすでに決まったことなのですわ。この先もずーっとずーっと私は、ワイズマン様のお隣にいますの……。お邪魔虫はみーんな、この私が松明みたいに燃やし尽くして差し上げますわ……ふふふっ! ふふふふふ……」


 もじもじとしながら、ほわーんと、夢心地でそんな事を言うと指先にポウッと火を灯す紅玉。

 ……その目はなんか据わっていて、何とも言えない迫力があった。


 けれど、その発言はワイズマンとしても、寝耳に水の爆弾発言だった。


「あの……紅玉さん? 私は……初耳なんだが、結婚って……なんの話だ……?」


 呆然と返すワイズマン……。

 実は彼自身の「お前は私の嫁か」発言とそれに続く激励の言葉が紅玉の中で色々と反芻された挙句、こうなってしまったのだけど。

 

 そんな些細な出来事がここまで事態を悪化させていたなんて、ワイズマン自身思ってもいなかった。


「嫌ですわ……ワイズマン司令……。私の事、紅玉さん……なんて、そんな他人行儀で……私はいつだってお慕いしておりますの。お前呼ばわりで、十分ですわ……どうか、これからもいっぱい可愛がってくださいませぇっ!」


 言いながら、全身全霊でワイズマンに抱き着き、その胸に顔を埋める紅玉。

 いつもなら、この辺で翠玉辺りが対抗心で止めてくれるのだけど、彼女は魔王城防衛隊の指揮官と言う役目をこなしてもらっていた。


 連れてこなかった時点で、紅玉を止められるのはくろがねとしろがねくらい……そのくろがねもエーリカの膝の上で寝こけてる。

 

 黄玉は……基本的に紅玉には逆らわない……割と良識のある方なのだけど。

 お姉さまがどれだけめんどくさい人なのか、黄玉自身も良く知ってるのだ。


 しろがねについては、別に紅玉を止めるような理由はなかった。

 しろがねはくろがねがいれば幸せだったし、ダイン将軍に少しだけ興味はあるのだけど、ワイズマンについては、理解ある上司……その程度だった。


 ワイズマンと紅玉のあからさまに温度差のある様子を見て、エーリカも何となく事情を理解したが……。

 あまり深くツッコんだり、余計なことを言うのは危険と察し、何とも言えぬ複雑な顔をすると、顎に手を付いて、遠い目で窓の外を見る。


「ま、まぁ……いいんじゃないの? お二人ともお幸せに……。ところで、蒼玉さんの件……関係者を代表して、お礼を言わせてもらうわ」


 色々、察したらしいエーリカは話題を変えた。

 彼女は出来るコ……くろがねとの決戦が出落ちだって、帝国の女狐なんて呼ばれる西方関係者から、ビビられる程には切れ者のお姫様なのだ。


 それに……実のところ、紅玉さんを止められるような者などあんまりいない……。

 歩く戦略兵器にまともに喧嘩を売れるのは、魔術師キラーのくろがね達くらいだろう。


 エーリカ姫的には、くろがねの寝顔が可愛かったので起こしたくなかったのと、紅玉の敵意を買ったら、絶対面倒くさいことになる上に、良いことナシなので、ここはスルーの一択とした。


 と言うか、「この紅玉さんってヤンデレ?」と極めて正解に近い回答を即座に出した末、彼女は戦略的撤退を選んだ。

 彼女は聡明な女性なのだ。


 他に紅玉を止められそうだった蒼玉さんは……途中まで一行に同行していたが、パーラミラに自らこさえた巨大湖の後始末の為、途中下車いただき、そのまま現地に留まってもらっていた。


 彼女の作った巨大湖のお陰で、パーラミラの国内は割と甚大な被害を被っていたのだが、戦争が終わった以上、そのまま捨て置くのは駄目……きっちり後始末してこいと、そういう事だった。



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