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第十一話「あらたなる使徒」③

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 第十一話「あらたなる使徒」③

 ---3rd Eye's---

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「女帝」の最終兵器「禁鞭」……それが振るわれることへの絶望感に支配されていた魔王城司令室の面々だったが。

 誰もが予想すらしなかったくろがねの変貌に、誰もが驚愕していた。

 

「……新たなる使徒の誕生の瞬間……ですか。あの姿は……第十四使徒「黒の節制」……そうか……彼女の始まりは、ここだったのか……。どおりで400年前の戦争でも、この世界に姿を見せなかった訳だ……今、この瞬間が彼女の原点だったから……そういう事か。魔王様……あなたはこうなると……くろがねが使徒になると予想していたのですか?」

 

 伏目がちに、ワイズマンが告げる。

 彼にとっては「黒の節制」は同じ陣営に属する使徒同士なのだ。

 

 もちろん、知らないはずがなかった。

 

「あれは「黒の節制」と言うのか……なるほどな、あやつの有りようを体現したような名ではないか。いつかはこうなるかも知れんと思ってはおったよ……これでもわしは本気で使徒共と戦い抜く所存であったのだからな。当然、あやつを含め、誰もが使徒となりうる可能性の高い魂を厳選した……その上であやつは強さを示しよった。元々、使徒たる資格は十分あった……それはお主も理解する所じゃろう……? それにしても「女帝」……ヤツはどう言うつもりなのかのう……。ニューフェイスの誕生をわざわざ手伝ってくれたようにしか見えん……勝とうと思えばチャンスはいくらでもあったのに……。あやつは戦争に勝つつもりがないのかのう?」

 

「あの女にとっては、いつもの事ですよ。戦争の勝ち負けなんぞどうでもいい……その過程をただ楽しみたい……お遊びのようなもんなんですよ……アイツにとっては……。今この瞬間も勝敗の見えないギリギリの状況にさぞ歓喜してる事でしょう……。相も変わらずなんだな……エリカ……お前は……」

 

 そう言って、ワイズマンは寂しげに微笑む。

 そんないつにない様子に魔王様は興味深げにしていたが、敢えて何も返さない。

 

「正直、アイツが「禁鞭」を持ち出してきた時は、もはや魔王城の浮上と出陣をお願いするしかないと思ってましたが……。くろがね……いや「黒の節制」が出てきた以上……私にも結果は読めません……。それとも、いっそ、魔王様も助太刀と言うことで出陣されますか? 正直……あまり、オススメはしたくありませんが。あいつは敵味方見境なく、武器を取るもの全てをなぎ倒すってヤツなので……」

 

「わしの助太刀なぞあやつには不要じゃろう……それに、お前が言ってるのは、お前が知る「黒の節制」とやらの話じゃろ。おそらく、今のあやつとは別物ではないのかな? それにこうなれば、わしはもう半分引退じゃ……この世界の最後の使徒と言うことで、これまで気張っておったが。後を任せられるもんがいるなら、わしの出る幕なんぞあるまい……わしはこれまで通り、あやつらの主として、その成長を見守るとしよう。どうせ、貴様もおるしな……この調子でわしの娘達には、次々と使徒デビューしてほしいものじゃ」

 

「やれやれ……本気の「女帝」がどれだけの難敵か解ってますか? ……くろがねが勝てる可能性はあまり高くないですよ……実際、禁鞭なしでも一方的だったじゃないですか。いかに「黒の節制」の力があっても、くろがねは使徒に成り立て……どう考えても無理がある」

 

「……まぁ、なんとかなるじゃろう……くろがねは戦闘の天才じゃ……確かに最初は圧倒的な実力差があったが……。あやつ……戦いながら、敵の技や武器を盗んだり、戦い方もコロコロ変えていって、みるみる化けよった。……わしにはむしろ、くろがねが押しとったように見えたぞ……。ああ言うやつが敵に回ると一番厄介なのじゃよ……まったく、楽しませてくれるのう。それに……敵に頼るのもなんだが……あのお人好しがなんとかしてくれるかもしれんな……。しかし、相変わらず、奴だけは手に負えんのう……よもや、黄金と鋼の二人がかりで勝てんとは……あやつらは無事なのかのう。それにしろがねも……どうも、奴に囚われたように見えるのじゃが……」

 

 そう言って、魔王様はモニターの一角を指差した。

 そこにはしろがねの反応と、敵を示す表示が隣り合わせにくっついていた。

 

「黄金も鋼も……無事と言えば無事のようですし……しろがねも無事なようで……しかも、奴に助けられたようです……まったく。「至天のゼロ」……ヤツもまた殺さずでも気取っているつもりなのでしょうかね」

 

「……かも知れんな……元々ヤツは……最強の使徒のくせに、どうも甘いところのある奴だったからのう……敵ながらなんとも憎めんやつじゃ。……今回の奴は、それに更に磨きがかかっておるようじゃ。この400年……人として、この世界で転生を繰り返すうちに、何か思うところがあったのかもしれん。奴は奴なりに、この戦争を終わらせたいのじゃろう……とりあえず、お主もこの戦争の終わらせ方を考えておけ」

 

「やれやれ、御意でございますよ……魔王様。ひとまず……くろがねのバックアップに入ってる連中はいったん下がらせます。使徒同士の戦いの巻き添えで死なせていいような連中じゃあないですからね……」

 

 魔王様が鷹揚に頷き、桜達オペレーター要員から、現場へ指示が送られていく。

 

 けれど、先程までの暗い雰囲気は払拭されていた。

 何故なら、魔王様がくろがねの勝利と皆の無事な帰還を確信していたから……。

 

 魔王様の言う事なら間違い無し……それはワイズマンも含めての共通認識だった。

久々な感じの魔王様。

見守る側の人々にもドラマがあります。


場面構成上、区切りましたんでいつもより短め。


続きは夜にでも。

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