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第十話「「女帝」の本気」④

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 第十話「「女帝」の本気」④

 ---Kurogane Eye's---

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「ちょっ! 素手で弾丸はたき落とすとか非常識な真似やった挙句、人の拳銃、迷わずぶん取って、ぶっ飛ばすってどんだけよっ! しかも、今、本気でやったでしょ、殺す気満々だったわよっ! おまけに重力操作みたいな事もやってたでしょっ! 自分の体重をトン単位まで引き上げてブチかます? なんじゃいそりゃあっ! 相手がどうなろうか知ったこっちゃないって感じに満ち満ちてるんですけどっ! ねぇっ! 苦悩する心優しき子猫ちゃんはどこ行ったのよっ! 躊躇いなさすぎっ! 見てこの鎧の有様っ! これって鎧がなかったら即死級よ? くらぁっ! 聞いとんのか! ワレェ!」

 

 さすが姫様、言うだけあって結構頑丈。

 胸甲がベッコベコになったようで、ガッシャンと放り投げ、頭に土やら草やらを乗せたまま、がに股でドスドスと歩み寄ってくる。

 なんか、身体のあちこちから煙みたいなのを吹いてるけど……リジェネレーション全開発動中って感じらしかった。

 

「ふふふっ……姫様ぁ……駄目ですよぉ……相手の視界内で真正面からのヘッドショット狙いなんて……。そんなの避けてって言ってるようなもんですから。頭に当たる弾丸って、飛んで来るのがバッチリ見えるんですからね。そんなもの叩き落とすなんて……ハエ叩きよりも簡単ですって、えへへ……」

 

 言いながらも、ついつい顔がニヤけてしまう。

 悪い事やっちゃったってのは解ってるんだけど、なんか嬉しくて、ニヤニヤが止まらないよぉっ!

 

「ぐぬぬ……そ、そう言うもんなのね……正直、侮ってたわ。でもさ……悪いんだけど……そんなアホな話当たり前のようにしないでよっ! 弾丸をハエみたいに言うなっ! この銃作ってくれたうちの技術者だって、泣いてるわっ! って、聞いてる?」

 

「よしよしっ! これさえあれば、後は色々自己流で進化改良を重ねて……。火薬も黄玉さんが作ってくれたから、そっちの改良も進めて……うっわ、夢色未来広がりングだわ……これ……。とりあえず、短銃身の拳銃型とか使いにくいから長銃身のマスケットへ改良して、更にお次はライフリング式のミニエー銃を作る。……ミニエーなんて、銃身に線条入れて、弾をミニエー弾加工するだけだから、技術的にもよゆーオッケ! ふふふ……銃の進化系統の図式は頭に入ってるから、きっかけさえあるなら、もうどこまでもいくらでも行けそうな気がしてきたっ!」

 

 たぶん、傍から見たら夢見心地って感じだと思う。

 わたしはそんな風にマニアックな独り言を重ねる。

 

 姫様がなんか言ってるけど、あまり聞いてない……ごめん、今はこの喜びを噛み締めたい。

 

 Sクラスキリングスナイパーくろがねのレジェンド! 今、始まるっ! ここが伝説の始まりだっ!

 

「あー? もしもし、黒猫ちゃん? 話、聞いてる?」

 

「あ……その……姫様……思いっきりブチかましといてあれですけど。姫様がこんな素敵なモノをお持ちだったなんて……あの……わたし姫様の事……たぶん、愛してます……。なんか、とても素敵に見えてきました。ふわぁああ……これを手に入れるのは、わたしの念願だったのです……。ほんっとうに嬉しい……帝国って素敵な国なんですね! 姫様、あ……あの……お礼にわたしの初めてあげちゃいます! もういっそ結婚しましょうっ!」

 

 姫様にそう返すと思わず、その銃身に頬ずりする。

 あーうー、なんかわたし、ぶっ壊れてるっぽい……何口走ってるのか良く解かんない。

 

 と言うか、この姫様がなんか愛しく見えてきちゃった……これってひょっとして愛っ?!

 

「……こ、これだけ何一つ、心に響かない求婚なんて初めてよっ! ……誰がするかっ! こんボケェッ! お願いっ! 黒猫ちゃん……戻ってきてーっ!」

 

 なんか、姫様が頭をガリガリ引っ掻きながら、喚いてる……。

 でも、わたし……聞いてない。

 

 頬ずりしながら、しっかりとその構造を目に焼き付け、材質もきっちりと把握する。

 

 うん! これなら、きっとイケる! イケる!

 

「錬成イメージ固定完了、構造解析、元素構成式よし、錬成条件オールオッケー。さあ、黒き鉄よ我が心の命ずるままに、その形をなせ……いでよ新たなる我が力っ!」

 

 詠唱錬成で精度を上げながらの錬成。

 ……空中に浮かんだ霧のような塊から、ズルズルと取り出せたのは、まったく同じ形をした帝国式フリントロック式拳銃。

 

『帝国式フリントロック式拳銃錬成が可能になりました!』

 

 テロップなんか出ないけど、出た気がした!

 いえーいっ! 一発でコピペ錬成大成功! これでわたしはこの銃をいくらでも使えるって事!

 

 しかも、ご丁寧に弾丸装填済み……そっか、詰め込んだ火薬や弾も一緒にコピーしちゃったんだ。

 

 あれ? わたしの錬成って……なんか、すごくね?

 

 ……それにしても、姫様のとこの帝国って銃火器なんて開発してたのか……。

 しかも、火縄式なんかじゃなくて、一足飛びでフリントロック式とはなかなか……素敵な国じゃないの。

 

 なんか、すごく行ってみたいっ! フリントロックが作れるくらいなら、大砲とかもっと素敵な兵器もありそうだ……となると駐屯地とか乗り込んで行ってブン捕れば……ゲフンゲフン。

 

 ……じゃなくて、帝国の文明レベルとかすっごい興味湧いてきたなぁ!

 ファンタジーな世界の帝都とかすっごい楽しそうだし……きっと美味しいものだって、たくさん……これはもう行くしか無いでしょ!

 

「ちょっ! うちの最新鋭秘密兵器を堂々とコピーしてんじゃないわよっ! そのコ、まだ戦場デビューだってしてないのよっ! 返してっ! 返しなさいっ! あんた、人の国のトップシークレットをなんだと思ってんのよっ!」

 

 姫様があからさまに狼狽して、大騒ぎする。

 あ、そっか……確かに、こう言うのって、そんなもんだもんね……。

 

 まぁ、コピーも取れたんだからこれは用済み……慎んでご返却しようっと。

 

「あ、これ……お返ししますね……強奪とかしてごめんなさい……。見るからに危なかったので、つい奪い取ってしまいました……って事にしてください。実は殺る気なんて、それほどでもなかったんですよ? 物凄く欲しくなって……あれです! ついカッとなって的な……その……極めて衝動的なものでした。コレも人の業、業故に人は争い、過ちを犯してしまうのですね……反省しました……。おかげで、わたしも……姫様との戦いを通じ、戦士の気概を学び、新たなる力を手に入れました。姫様の御恩にはきっと報います。今度、帝国に銃火器強奪……じゃなくて、遊びに行きますから……それではこの辺で……」

 

 そう言って、色々と本音がだだ漏れちゃったりもしたけれど……。

 姫様から奪った拳銃を手渡すと、なんとなく姫様も受け取ってくれたのでシュタッと片手を上げて、通り過ぎる。

 

 色々忘れてる気もするけど、もうこの戦場も……観客達こと兵隊の皆さんはポカーンって感じでフリーズしてる。


 まぁ、大戦争からの姫様オンステージ、そして、お笑いとガチ取り混ぜた超絶バトルからの銃火器強奪……もう、誰も着いてこれないでしょ。

 

 わたし的には、この姫様との戦いは十分に得るものがあった。

 ……もうこれでいいだろう……勝敗とかあやふやにして、そのうち正々堂々と決着をつける……それもまた、悪くなかった……。

 

 ライバルとの決着は簡単に着いたら面白くない……よね?

 

 それに、実は魔王軍の皆……さっきから、続々と集まって周囲に分散して潜伏待機してる……こっちは通信不可だけど。

 ワイズマン様が、手を回してくれたってとこか。

 

 玻璃ちゃんが雑草の隙間から顔だけ見せて、速やかに撤収せよと言う意味のハンドサインを送ってくるので、頷き返す。

 気配からすると、空戦隊の翡翠と瑠璃ちゃんに黒曜、超魔術師の四人もいる。

 

 ……うしっ、なかなかの強豪が集まってるね……。

 

 んじゃ、もう後は任せよう。

 姫様のことだから、たぶん、このメンツと戦っても生き残れるだろう。

 ……と言うか、あれだけ偉そうに啖呵を切ったのだから、それくらい乗り切ってほしい。

 

 無言で、クラウチングスタートの構えを取って、姿勢を低くしてロケットスタートの準備よし! レディ……!

 

「って……逃げんなっ! 待てや、ゴルァ!」

 

 フリーズ状態から復帰した姫様のヤクザ風怒鳴り声を聞きながら、スタートッ!

 風景が一瞬で線に変わるほどの超加速で走り出す!

 

(おお、わたしにも見えるよ……しろがねっ!)

 

 走りながら、振り返ると、姫様のいた辺りに、火の玉、氷の槍、矢なんやらが一斉に着弾。

 玻璃ちゃんと黒曜、上空から翡翠と翠玉さんが一斉に飛びかかって行っている。

 

「ぬぉおおおっ! いきなり何よっ! あんた達っ! ちょっ! そこの黒いの待ちなさいっ! 待って、私は! は、話し合いをっ! や、やめてーっ!」

 

 うちの精鋭、8人がかりとかオーバーキルもいいとこだよね?

 

 さすがの姫もボロ雑巾かな……これ。

 

「悲しいけど、これ戦争なのよね」

 

 駆けながら目尻に浮かんだ涙を拭いながら、思わず呟く……。

 戦争の悲しみと言うものをここまでシンプルに表現したセリフもそうないだろう。

 

 あの国民的アニメ、劇中の名セリフ中の名セリフだった。

 

「そぉよねぇ……悲しいけどぉ、これはぁ戦争なのぉ……って、よくもやってくれたわねぇ……黒猫ちゃあん」

 

 背後から低い地獄の底から響くような声がしたと思ったら、後ろから首根っこをガッツリ掴まれて、プラーンって感じに持ち上げられる。

 ちっこいとこういう時、不便……なんか、猫掴みされた猫か、UFOキャッチャーの景品になった気分。

 

 そう言えば、この人……空間転移みたいなこと出来るんだっけ……けど、そこで8人がかりでフルボッコにされてるのに、どうなってんの?

 

「時空連続体転写式……過去、未来、現在……異世界に存在する己の同位体を転写……要するに、もう一人の自分をコピー召喚したってコトね。いやぁ、参ったわ……黒猫ちゃんのお仲間……使徒クラスの化物がゴロゴロいるなんて……普通にやったら無理ゲーよね」

 

 あー、黄金姉様がやってた実体のある分身の術と似たようなヤツなのかも……そんなのまで使うとかズルい。

 姫様……こうやってわたしを捕まえたって事は……狙いは人質、かな。

 でも、そんなずっこい作戦……わたし達には通用しない……これははっきりと伝えるべきだろう。

 

「姫様……わたしを人質にとか、考えてるなら無駄ですよ……わたしは、絶対防御の使い手です……姫様なら、たぶん知ってますよね? 当然、皆……問答無用で容赦なく撃ってきます……だから、もうこの辺で止めときません? わたし、姫様の事、結構好きですよ……結婚とか言ったのは一時の気の迷いでしたけど、出来れば、こんな所で死んで欲しくないです」

 

「あらやだ……ここに来て、そんな甘いこと言っちゃうの? やっぱ、黒猫ちゃんっていい娘ね……ほんっと、可愛いわね……。けどね……ここで私が負けると、私の背後に居並ぶ者……東方、西方……すべての戦士達の運命をあなた達に委ねてしまう事になる……。あなた達もきっと魔王様から、全ての敵を滅ぼせとか言われてるのでしょう? だから、私は……私自身の正義のために負けられないの。ごめんね……だから、悪いけど……切り札を使うわ……出来れば、こんなもの……使いたくなかったんだけどね……」

 

 それだけ言うと、姫様はわたしを無造作に放り投げる。

 そして……手元に出現させた霞のようなものの中から、ずるりと「それ」を取り出した。

くろがねちゃんが暴走して、手を付けられなくなってしまいました。


作者も何言ってんのこの娘? 状態でしたが、面白かったのでリテイク無しで逝ったれ状態です。

なんともカオスな作品ですなー。


明日からは、シリアスさんが復活です。刮目して待て!

なお、更新タイミングは自動ではなく手動にしようと思うので、16時前後とアバウトです。

アップし忘れ対策に17時にタイマーセットするので、遅くともその辺です。


追伸

そして、案の定忘れる罠。

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