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第十話「「女帝」の本気」③

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 第十話「「女帝」の本気」③

 ---Kurogane Eye's---

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「まったく……黒猫ちゃん……なかなかやるわね……と言うか、その黒くてゴツい剣にしてから化けたわね。剣筋も鋭いし……パワーもあって、一発一発がくっそ重たい……ホンっと、たまんなかったわ。なんなの? それ……魔剣でもないようだけど、この世の剣じゃないでしょ……? それにしても『龍ノ顎』……まさか、私のカウンターを誘った上に見切って、逆に武器破壊カウンターを仕掛けてくるなんて……。お見事っ! まさにお見事なりっ! そのネーミングセンスも悪くないっ! ピンポイントで防壁を馬鹿みたいに複層化構築、シールド干渉爆発を誘発し爆発的な衝撃を生み出す……そんなところかしら? 確かに、こんなもの喰らえば、魔剣クラスですら持たない……まさに全てを噛み砕く龍の顎!! 恐るべき技ねっ!」

 

 ビシィッと指差しながら、ノリノリでご解説いただけた。

 

 本当にありがとうございます。

 

 ……すごいな。

 一瞬でそこまで……さすが、本職の魔術師……専門家……わたしは魔術の事よく解らんけど……大体合ってるし。

 

 と言うか……この人……ほんと解説好きだよね。 

 ……そのうち「知っているのか姫様っ!」とか言われる役になるんじゃない? ……なんてね。

 

 具体的にやった事。

 シールドをガシガシ折り畳んで、肘と膝に貼り付ける。

 

 折り畳み回数は五回程度……それだけで面積1/32、32層の複層構造が出来る。

 大きさは元が1メートル四方だったものが僅か3センチ四方まで縮む。

 シールド自体は、物理的な厚みというものがほとんどないので、こういうことが出来る。

 

 ちなみにこのシールドの折り畳み、確かに低コストで手早く複層シールドを作れるのだけど、普通はやらない。

 ……シールド同士の接触による相互干渉ってのがあるから、重ねれば良いというものではないのよね。

 

 この相互干渉現象、結構な確率でチュドーンと爆発する……だから、普通複層シールドを作る時は、先にやったように一枚づつ、間に隙間を設けるのが普通。

 

 ……なのだけど、その爆発には実は指向性がある……特に垂直方向からの衝撃によるシールド接触には、その衝撃の方向へ向かって、真っ向から爆発衝撃を放つという特性があった。

 要するに、シールド同士がぶつかるとぶつかって来た側へ向かって、チュドーンと行くのだ。

 

 その上、多層化すると、その枚数分だけ連鎖爆発し威力が増す。

 ……なら、その連鎖爆発同士に相手の武器を挟み込んでしまえ……と言う発想の技。

 

 その威力は……ご覧の通り、魔剣をへし曲げる凶悪なものだった……素手の相手にやったら……あまり考えたくないね。

 

 実際、手加減無用の技なので仲間との対戦じゃ使ったこと無い……干渉爆発の余波とか危なすぎる。

 練習って事で、玻璃ちゃん相手に突きを肘と膝に挟み込んで止めるってのまでは、やったんだけど……実際にまともにやったのは、これが初めて……まさにぶっつけ本番……だった。

 

 でも、これは黙っとこう……いかにも成功率100%、いつでもかかって来やがれくらいの余裕の態度でないと。


 カウンター技の存在は敵にとっても嫌らしいカードになるのだ。

 

 しかも、わたしの場合はカウンター・カウンターで一方的に打ち勝つと言う結果を出しているのだ。

 

 ハッタリ上等! これが戦闘の駆け引きって奴だもん……。

 

「……もう一度、さっきの張り手やってみない? 次はきっと見切れる。……だぶん、次は姫様のその綺麗な御御腕おみうでが木っ端微塵になる……試してみます?」

 

 口の端を上げて、ニヤリと笑う……たぶん、わたし……悪い顔してる。

 

「やめてよぉっ! 想像しちゃったじゃない……。それにしても、誘い受けカウンターなんてやってくるなんて……おまけに同じカウンター使い……やはり近接戦はそっちが上みたいね。やっぱにわかのボロが出てきたかぁ……なら、仕方ないわね……ここはひとつ距離を取らせてもらうわ!」

 

 そう言いながら、姫は軽やかなバックステップで下がっていく。

 手を後ろにやって、なんかゴソゴソやって錬成でもやってるのかな……間合いを離すとなると、飛び道具? 何が出るやら……。

 

 けど、待ってやるほど、こっちも優しくない……!

 再び錬成、今度は軽く薄い短剣を錬成……両手の指の間に合計8本一気に錬成し、投擲……更に錬成……更に更にっ!

 ……繰り返すこと4回、合計32本の短剣を投擲……それぞれコース、投擲速度に変化を入れてはみた……。

 

「あら? 先制かけてきたから、どんなのかと思ったら、こんな軽い短剣じゃ駄目よ……数撃ちゃ当たるって感じ?」

 

 案の定、余裕で受け、かわされる……半円状のシールドを形成し、正面からの攻撃は全て弾かれて、短剣も地面にばら撒かれていく。

 まぁ、単に投げただけじゃ、いくらやっても無駄だよねぇ……黒曜の「黒き牙・嵐舞」くらいの弾幕でないと。

 

「……やっぱりこんなもん……効かないですよね……だから……」

 

「だから?」

 

「……これは単なるめくらましです。」

 

 一本だけ、紛れ込ませていた……エーリカの背後に転がる4本の短剣……これが本命。

 この短剣には魔力線が接続されていて、遠隔操作が可能だった。

 

 にししと笑いを浮かべると、魔力線を一気に引く!

 短剣は剣先に接続された魔力線により引っ張られ、刃先を前にして飛び出していき……姫様の背後から、迫る!

 しかし、敵もさるもの……死角からの奇襲にも関わらず、シールドを背後に回し短剣を受ける。

 

 と思ったら、一本だけ下のほうからすり抜けて……トッス……って感じで、その形のいいお尻にブッ刺さってしまった。

 

(あ……背中狙ったのに、変なとこに行っちゃった……)

 

 一瞬、ビクッと固まって、そのまま全身をプルプルさせて、恐る恐ると言った調子で、背後を振り返る……。

 涙目で目をウルウルさせながら、おしりに刺さった短剣を指差しながら、ゆっくりとこっちに向き直る。

 

「だから、リアクション芸人かっ! あんたはっ!」

 

 イチイチ、ツッコミ入れるわたしも大概だけどさ……。

 

 もうねっ! ……この人のおもしろリアクションにいちいちツッコんでたら、こっちの気持ちが持たないよぉ……。

 せっかくのシリアスさんが、またどっか行っちゃうよ……!

 

「う……あ……ねぇ、私のお尻っ! お尻っ! めっちゃ痛くなって来たんだけどっ! うらぁっ! そこの黒いのっ! 何笑っとんじゃい! 私お姫様よっ! 姫のお尻をなんだと思ってんのさっ!」

 

 その剣幕に思わず笑ってしまっていた事に気付く。

 

 うーあー、めっちゃ怒ってる……お尻に短剣が刺さったまんまじゃ、確かに可哀想だし……。

 正直、そんな所に刺さるなんてこっちも思ってなかった……つまり事故!

 

 思わず笑っちゃったけど……なんとも申し訳ない事をした気持ちになってきたので錬成解除。

 

 刺さってるのを抜こうかどうか迷ってたようなのだけど。


 短剣が消えたのを見て、ぱぁって感じで、一瞬笑顔になったものの、短剣が刺さって出来たスカートの穴に指突っ込んで、ショボーンって感じで見てる。

 

「あ、ありがと……ひっどいわねぇ……お気に入りのパンツにまた大穴空いたじゃない……どうしてくれんのよ?」

 

 どうも傷も残らなかったらしい……まぁ、常時自動回復とかそんな事言ってたし、そんなもんだよね。

 わたしもあんな状態から、完全復活したくらいだし、お互いちょっとくらいの怪我なんて意味ないのか。


 決着は……相手を殺しきるか……全ての武器を破壊し尽くして、魔力も底を尽きさせる……。

 それか、心を折る……こんな感じなのかな……うっわ、面倒くさ。

 

 どっちにせよ……力押しでボッコボコに打ちのめすくらいしかやりようないな……今のわたしじゃ。

 大技って言ったって「龍ノ顎」くらいだし……。

 

「えっと、今のはしろがねのぶんってことで……。そんなパンツの穴なんかで騒がないでくださいよ……ダメージったって、まだお尻に短剣刺さっただけですよね? ええ、わたし別に怒ってなんかいないんですよ。かるーくグッチャングッチャンなボロ雑巾にされたくらいで怒ってらんないです。姫様も同じ目に合わせてやろうとか、マウント取って泣くまでボッコボッコにしてやんよとか思ってないですよ……はいっ!」

 

 それだけ言い放つと、最後はにこやかに笑顔!

 まぁ、実際別に姫様を恨んだり、仕返ししてやるとかそんな気持ちは不思議と沸かない。

 

 何というか、楽しい……すんごく楽しいのだ。

 この危機を乗り越える高揚感、自分が強くなっていくかのような感覚。

 ギリギリの刹那の攻防……最高にハイって奴だ。

 

「え、笑顔で怖いこと言うわね……確かにさっきのはちょっとやり過ぎちゃったけど……。お互い……こんなもんじゃない……まだまだ夜はこれからよっ! ハリー! ハリー! ハリー! お楽しみはこれからなんだからっ!」

 

 思わず、ぶっと吹き出してしまう! ネタが解ってしまうわたしも大概だけど、それ某吸血鬼漫画のネタじゃないっ!

 どうもさっきから、そんな気がしてたんだけど、確信した。

 

(この人……絶対、日本人……それもかなりのヲタクだ!)

 

 名前もエーリカとか日本人っぽいし……セリフにサラッとネタ混ぜ込んでくるし。

 わたしがこんな風に転生してるくらいなのだ、同じようなのもいるとは思ったけど……。

 

「ねぇ、姫様……色々聞きたいことあるんだけど……その……今のセリフとか……」

 

「な、何のことかしらぁ? さぁ……どんどん行くわよぉっ! お次は、我が帝国が誇る物理系最新兵器! ぶっちゃけ、オリジナルはただのおもちゃなんだけど……。私の魔術強化でパワーアップすれば、弾速、命中精度、破壊力……全て別格の超兵器になるわ……見た目のわりに凶悪なのよ? さすがの貴方も銃弾は避けきれないでしょうね……一発でオネンネしちゃったら、そこでゲームオーバーよ?」

 

 そう言うと姫様、両手にそのブツを手にしてにやりと笑う。

 

 それにわたしは目を奪われるっ!

 

「……そ、それって、フリントロック式拳銃ッ!」

 

 銃身を切り詰めたマスケット銃……多分、射程5mとかアホみたいに短い代物だろうけど、姫の魔術強化が入るとなると3-4倍の射程とこちらのシールドまとめて撃ちぬくくらいの威力はありそうだ。

 

 そして、獲物を見せびらかして、無駄に隙を作るほど姫様は甘くなかった。

 まず左手の銃が火を噴く……狙いは正確に……頭……初手からヘッドショット狙いとは、殺しに来てるっ! けどっ!

 

 射線と目の位置が合うと、飛来する銃弾が見えた! よし! ロックオンッ!

 

「そこっ!」

 

 一歩踏み出し、シールドを纏った手を振り下ろすとバチーンという音と共に右の掌が燃えるように熱くなり、手の中には堅いものが残る。

 

 よっし! 弾丸掴みとったりっ! ガンフロでライバルを驚愕させた弾丸掴み取りの超絶技っ! さすがわたし、まだ鈍ってなかった!

 

 と言うかバレットやらキャリバーの弾速に比べたら、こんなの止まってるも同然! 舐めんなっ!

 

 そのままの勢いで、更に地面を蹴って、姫様の眼前に一気に飛び込む!

 ……とっさに左手にシールド展開し、迎え撃つ構えの姫様!

 

 左手を伸ばし、姫の右手の拳銃に手をかけながら、こちらも肩口に二重にシールド展開っ!

 

 ……そのままの勢いで最後の一歩を地面を割らんばかりの勢いで踏み込むとフルパワーを乗せて肩からドーンっ!

 

 猛烈なタックルの威力に加え、シールド干渉爆発が起こり、姫様の姿が爆炎に沈む。

 

 姫様10mくらい吹っ飛びながら、ゴロゴロと地面をどこまでも転がっていく……大股開きでパンツ全開のすっごいカッコ……!

 

 けれど、わたしはそんなのに脇目もふらず、左手に残った戦利品を天高くかかげる!!

 

「ついに! ついに、念願の銃火器を手に入れたぁっ! やったぁっ!」

 

 そんな事を言いながら、ぴょんぴょん飛び上がるわたし。


 うん、物凄く旧式といえ……わたしにとっては念願の逸品!

 そんな物を目の前に出されたら、奪い取ってでも手に入れるのはむしろ当たり前。

 

 なので、割りと手加減無しのガチな一撃を加えてしまった。

 

 ああ、こういう時って、迷う暇も躊躇いもないのだなぁ……強奪……まさに力技で相手に勝利し奪い取った戦利品!

 

 今のは、ダンプカーがアクセルベタ踏みで突進したくらいの威力はあっただろう……。

 最後の踏み込みの跡なんて、地面が爆発したようになってる。

 

 たぶん、瞬間的な体重増加もかかってたはず……これ一瞬トン単位とかなってたんじゃないかな。

 

 普通の人だったら、きっと木っ端微塵。

 

 『グラビドンタックル』……とでも、命名しよう……これはもう必殺技の領域だろう。

 

 なんか一歩、登っちゃいけない階段を登ってしまったような気もするけど……!

 

 引き換えに得たものは余りに大きかった!

 

 

 てれれーんっ!

 

 戦利品:フリントロック式拳銃を手に入れた!

 必殺技:『グラビドンタックル』を覚えたっ!

うん、ごめん…またなんだ。


シリアスブレイカー発動中です。


この辺の下りは、くろがねちゃん大暴走って感じでした。

作者と言えど、止められない事だってあります…いやマジでマジで。


12/06

どうもこの部分で読者離れの傾向があるようなので、少し内容を変更しました。

ロマサガネタはやめて、少しだけプリティな感じで喜びを表現してもらいました。


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