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第七話「魔王軍襲来!」③

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 第七話「魔王軍襲来!」③

 ---Hari Eye's------

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 力尽き倒れこんだ敵将を油断なく構えを崩さないまま、しばし見つめる。

 

 そして、静かに構えを解くと、あたしはその側に駆け寄ると、その見開いたままの眼を閉じさせてやった。

 

 両手を合わせて……死者の冥福を祈る……そうするものだと、前にくろがねに教えてもらった。

 

 立派な武人だった……たぶん、いい人だったのかもしれない。

 間違いを正せる勇気を持て……そんな風な事を言っていた。

 

 自分を殺しに来た敵にお説教を始めるなんて……なんて馬鹿な人なんだろう。

 ……心なしか満足気な表情をしているのは、全力で運命に抗い果てたからか。

 

 お世辞抜きに見事な一撃だった……。

 最初はさっさと諦めてしまったクセに、油断していたら斬られていたのは、こっちだったかもしれない。


 少しだけ、目尻に滲んでいた涙を誰にも気づかれないように拭い取る。

 

 敵に情けも……感傷も要らない……。

 けど、先程までの雑兵を始末するのと違って、初めて人を殺したという実感が湧いてくる……言葉を交わした人が死ぬのは……なんとも切なかった。

 

「……いい一撃だったじゃない……今のはうちのくろがねにだって、一本入ったんじゃないかな……あたしも危なかった。年寄りのクセに大したもんじゃない……なかなかカッコ良かったよ。ダストンさん、敵ながらお見事。アンタのことは多分、忘れないよ……」

 

 そう呟くと、今度は空に向かって手を振る。

 

「瑠璃ちゃーん、お疲れさん! ……ここはもういいよ……後はもうこの大天幕を燃やすだけだから、次に行っちゃおうぜいっ!」

 

 上空にて、周辺監視……イザという時のバックアップについていた瑠璃に声をかけると周囲の音が戻ってくる。

 

 ふわりと瑠璃が空から舞い降りてくる、黒いメイド服のスカートがふわりとめくれるが、ちゃんと下にスパッツを履いてるから問題ない。

 

 最初の頃は、その辺何も考えてなかったようで、彼女達は空飛んだり降りてくるたびに、色々とチラチラ見せまくり状態……。

 スカートなんかで空飛べば、そりゃあそうなる……皆それに気付いて、指摘するべきか迷っていたのだけど。

 

 くろがねがダボダボなダッサいズボンを持ってきて「パンツ見えすぎだからこれ履くか、自分達で何か対策考えるかしろ」……とその空気を読まない蛮勇っぷりを発揮してくれた。

 

 さすがに、なんか可哀想だったので……飛んだり跳ねたりしまくって、同じ問題に直面し、対策済みだったあたしらが助け舟を出すことにした。

 

 つまり、スパッツ標準装備……パンツじゃないなら恥ずかしくない。

 

 ……万事につけて、あたしらに抜かりはない。

 せっこい戦い方とか陰険アタッカーズとか、色々陰口を叩かれていたあたしら4人を魔王軍の尖兵役という大役への抜擢……そのきっかけを与えてくれたくろがねには、ものすごく感謝している。

 

 それに、彼女が提示した隠密行動や隠密戦闘と言う概念……。

 これはまさにあたしらの為にあったようなもので……超熱心に取り組んで、研鑽を重ね……元祖たる彼女を驚かせる程度にはあたしらは強くなった。

 

 もっとも、くろがねも……ぶっとんだ戦闘センスや透明化をもあっさり見抜くおっそろしく鋭い洞察力、それに鉄壁の防御と……普段はボケボケしてるクセに、戦闘に関してはしろがねよりも厄介な相手。

 まさに我が好敵手にふさわしい相手だった。

 

 もっとも、実際はこっちが一方的に負けこんでる……。

 あいつ、なんかすぐに手加減とかに走るもんで、そんな余裕ないくらいのガチで仕掛けてるのだけど。

 

 まぁ、強いこと強いこと……スピードファイターのしろがね相手なら、三回に一回くらいは勝てるんだけど、くろがねは十回やって一本取れればいい方。

 

 ……なんか、くろがねの相手してるうちに位階の席順があいつの次、5席にまで上がったんだけど……これ以上、上がれる気がしない……悔しい。

 

「うん、玻璃もお疲れ……柄にもなく一騎打ちとか始めちゃうから驚いた。おかげで、こっちはお邪魔虫の始末に忙しかった……感謝しやがれ」

 

 降りてくるなり、ドヤ顔でなんとも、偉そうな台詞を吐く瑠璃ちゃん。

 

 まぁ、コイツはこう言うヤツだし、音もなく総司令部全員を暗殺と言うこちらの仕事の御膳立てをしてくれて、今もあたしが一騎打ちしてる最中に邪魔が入らないように、近づく敵兵を片っ端から射殺してくれていたのだ。

 ここは素直に感謝しよう……と言うか瑠璃ちゃん地味に強いコ。

 

「あんがとね! 瑠璃ちゃん……まぁ、相手は敵の総司令官……相応に名のあるヤツだったからね。無言で背後からブスリってやるには、ちょっと惜しい相手……だから、敵将への敬意って奴を示してみた。それに、お互い名乗りを上げて、正々堂々と一騎打ち……一度やってみたかった……カッコ良かったっしょ! てか、あたし……大将首討ち取ったりって奴じゃない? やっりぃ……一番手柄いっただきねっ!」

 

「玻璃、それはズルい……手柄はアシストと分かち合うべき、瑠璃だって超頑張ってた。その手柄は半分もらう……決定」

 

「えー、半分は持って行きすぎ……せいぜい7:3……いいとこ6:4ってとこでしょ」

 

「解った……瑠璃が6、玻璃が4で手を打った」

 

 実に満足そうな笑顔で両手を打つとそう言ってのける瑠璃ちゃん。

 おいこら、ちょっとまてや!

 

「ちょっ! なんでそうなるのよっ!」

 

「どっちがどっちって言わない、玻璃が悪い……世は押し並べて言ったもん勝ち」

 

 出たっ! 瑠璃ちゃん論法……人の話を適当に解釈して、自分に都合よく勝手に話をまとめて締めくくる恐るべき論法。

 

 けど、なんにせよ大将首を討ち取ったのは間違いなく大手柄……これは魔王様にも褒められるに違いなかった。

 ちょっとばかり、感傷に浸ってしまったが……ここは、敵将に討ち勝った事を誇るべきだろう。

 

 それでなければ、たぶん……あの人も浮かばれないだろうから。

 

 それに……あの名も知らない村の人達の仇もこれで取れたのかもしれない。

 

 「誠、正しき義に基づいて」

 

 ……それがあたしの選んだ道だった……前の人生ではあたしは正しくない事ばかりしてしまった。

 だからこそ、この第二の生は正しい道を歩みたい……それがあたしの理想だ。

 

 ……なんてことをやってたら、大天幕の方から叫び声が聞こえる。

 見ると、松明を持った騎兵がゾロゾロと到着した所だった……まぁ、大天幕の中でも見てしまったのだろう。

 あの中は今頃、血の海だ。

 

 こちらを指さしてる奴もいるから、どうも見つかったらしかった。

 

「もう、瑠璃ちゃん……バカなこと言い合ってたから、見つかってるし……ここは一撃かまして一旦退くよ。ゴメン、皆……がっつり見つかった……それから、敵総司令官ダストンはこの玻璃が一騎討ちの末、討ち取った……敵司令部は全滅よっ! 斬月作戦第一段階の目標は達成……第二段階の行動に移る! 以上、報告終わりっ!」

 

 通信用のイアリングを頬に当てながら、全域通信を送る。

 もちろん、敵将打ち取りのアピールも忘れない……ふっふっふ……あたしはこう見えても策士なのだぜ?

 

 まぁ、どうせこのタイミングなら見つかっても問題ない……次は第二段階、うちの妹達と合流して、徹底的に敵陣をかき回す予定だった。

 

「一撃かますって……どんな感じでいく? また毒霧でも撒こうかぁ? 風向きもいい感じだし、今度は地面すれすれじゃなく、無差別放射で……害虫退治は瑠璃にお任せあれっすよ」

 

 瑠璃ちゃんが、緊張感を感じさせない様子で聞き返してきた。

 確かに瑠璃ちゃんの毒霧は、こう言う有象無象相手には効果的なんだけど、ここはあたしらの強さと恐怖を印象づけるために派手にやりたい所だよねぇ。

 

「ここはひとつ……って、なんか来たよっ!」

 

 どんな技をブチかますか、なんて考えていたら、あたしらの頭上を大きな影が通り過ぎていった

予告通り、玻璃ちゃん視点です。

彼女は、魔王軍随一の戦闘狂の熱血ガールです。

本人はクールなつもりですけど、何かと言うとアツい娘です。


瑠璃ちゃんは…まぁ、CV南央美っすね。

モデルはそのまま、ナデシコのルリちゃんですけど、多少アレンジしてます。


この娘はやってる事もえげつないし、まさに害虫退治感覚で戦争やってます。

ある意味一番魔王軍と言うイメージ通りの娘です。


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