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第五話「まおう軍!」①

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第五話「まおう軍!」①

---Shirogane Eye's---

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「白銀っ! どうだ調子は?」

 

 訓練の合間に、一息入れていると、黄金姉様が長い金髪を揺らしながら、何やら嬉しそうに話しかけて来た。

 先程まで、魔王軍最強の戦士たる姉上も形無しといった様子で、くろがね教官に怒られてたような有様で、立場やらそんなものはこの場ではまったく関係なかった。

 

「黄金姉様、忙しい中お疲れ様です……いやぁ、私も自分の未熟さに恥じ入るばかりですよ。」

 

「はっはっは、私もくろがね教官にこってり絞られてしまったよ! お互いなかなか、楽しくもいい経験になったな」

 

 何とも楽しそうに笑う……黄金姉様。

 戦陣位階第一席総将……黄金姉様は、私達の長姉であり、我らが魔王軍の総指揮官でもある。

 姉様もくろがねの成長を見れて、さぞ嬉しいのだろう……なんとも楽しそうだった。

 

 なんだかんだ言って、私達姉妹は皆、末っ子のくろがねの事が、可愛くてしかたがないのだ。

 妹バカ姉妹……だよねぇ、ホント。

 

 それに実力も……ちゃんと戦えば、私なんかよりよっぽど強いんだよね……くろがねって。

 まぁ、そう言う危なっかしいところも含めて、私達は皆、くろがねが大好きなんだけどね。

 

「黄金姉様も私達と一緒に行動するんですからね……ちゃんと連携行動くらい出来るようになってもらわないと困りますよ」

 

「ふむ、とは言ってもまぁ……私と鋼は言わば、我らが魔王軍の決戦兵器みたいなもんだからなぁ。くろがねからも身体が大きいから隠密行動向きじゃないと言われてしまったよ……。けどまぁ、多少の隠形程度なら使えるし、そこまで問題にはなるまい。実際の所……斬月作戦でも恐らくお前達とは別行動となる……現場指揮も、この分ではお前達に丸投げになってしまいそうだ。ここだけの話……どうもかなり厄介な敵がいる可能性があってな……昨夜の翡翠たちの偵察で色々収穫があったみたいだ。もし、その敵がワイズマン司令の想定する敵ならば、私達でも1人では対抗出来ないだろうと言っていたよ……」

 

 後半、声を落とし目に真剣な顔でそう伝えてくる黄金姉様。

 ……お姉様方が1人では勝てない相手と聞いて、さすがに戦慄が走る。

 

 冗談じゃない……あの大量の軍勢だけに留まらず、そんな強敵までいると言うのか……。

 

 そう言う事なら、私も加わって、万全とすべきなのではないだろうか。

 私達姉妹三人揃えば、さすがにどんな相手であったとしても、負ける気がしない。

 くろがねは……そんな危険な相手のいるところに連れて行きたくない……実力の問題ではなく、気持ち的に。

 

「お姉様……なら、私もお手伝いさせていただけませんか。微力かもしれませんが、これでもお姉様方に続く第三席ですから、きっとお役に立ちます」

 

「いや、その必要はない……如何なる難敵が相手だろうが、我々2人が揃っていれば、必ず勝つ。だが、その気持ちは嬉しいぞ! ありがとう。とにかく、白銀……此度の戦……そんな楽な戦では無いということだ……。だからこそ、お前はくろがねの隣に居てやってくれ。あいつも少しは頼もしくなってきてるが、まだまだ危なっかしい……。何ぶん戦の経験が足りん上に、色々と気がかりな点もあってな……お前なら、皆まで言わずとも解ってると思うが……。だからこそ、しろがね、おまえが共に並び、付かず離れず……守ってやってくれ。こんなこと……お前以外の誰にも頼めん……我らの可愛い妹の面倒をしっかり見るのだぞ」

 

 そう言って、片目を瞑っていたずらっぽく笑う黄金姉様……確かにそうだ……くろがねを守るのは私の役目だった。

 なにより、姉上達は魔王軍最強の戦士なのだから、何の心配もいらない。

 

「そうですね……解りました。くろがねの事は私にお任せください……この身に代えても、守りきります! 絶対にっ!」

 

 私の返事に満足そうな笑みを浮かべると、軽く私の事を抱きしめて、この場を離れていく黄金姉様。

 

「しろがね! あれぇ……黄金お姉様は? うう、やっぱ……さっきのお説教……言い過ぎちゃったかなぁ……」

 

 私たちの様子を見ていたのか、慌てて駆け寄ってきたくろがねが心配そうに言う。

 先までと違って、教官モードは解除されたようで、どこかのんびりとしたいつもの調子だった。

 うん、やっぱりくろがねはこうでないとね!

 

「黄金姉様は、うちの総大将だからね……色々忙しいんだよ。くろがねも強くなったって褒めてたよ。」

 

「そ、そう? えへへ……けど、立場とか色々わきまえずに、なんか偉そうなこと言っちゃったんだけど……」

 

 嬉しそうに照れ笑いするくろがね。

 普段自信なげにしてる事が多いから、こんな風に褒められて照れてるとか、ちょっと斬新。

 こう言うのもあざと可愛いって言うんじゃないかな。

 

「大丈夫くろがね! それも含めてだから安心しなって……さて、私も戻るから、続きやろっか。」

 

 くろがねの肩に手を回し、抱き寄せると笑いかける。

 うん、やっぱくろがねと一緒にいるだけで、私は幸せな気分になる。

 この娘の笑顔を守りたい……戦場でも、お姉ちゃんたるこの私が絶対守ってやるからさ。

 

「うん、しろがねっ! 言っとくけど、どんどんハードになっていくから泣き言とか言わないでよ。しろがねは涼しい顔で、何でも余裕でこなすくらいでないと皆に示しが付かないよ?」

 

 くろがねにやんわりともっとがんばれと言われる。

 まぁ、確かに私がそうでないと示しがつかない……これでも私は第三席将補なのだ。

 

「はいはい……くろがね教官、イエッサー!」

 

 さっき、くろがね教官が言ってたように、最後にイエッサーと付ける。

 ほんとは、イエスマムなんだけど、くろがねをお母さん呼ばわりはちょっとねぇ……。

 

 私は、笑いながら訓練を再開した。

さて…本日二回目。

今回、しろがね視点でしたが。

どうでしょう? しろがねから見たくろがねはアワアワしながらもデキる女って感じだったりします。

そんなくろがねに、しろがねはもうベッタ惚れ…根っこはすっごい真面目な娘なのにねぇ…。


こんな風に複数視点での一人称ドラマってのは、意外に面白いのですよ。

別の人物の視点だと、同じ状況でもまったく違う見方になりますし、一人じゃ見えない所が別の人物の視点で見えたりと、話の広がりが違いますし、人物の厚みも一気に増します。


まぁ、その分作り手側はカオスなんで、むっちゃ大変ですけどね!

これが群像劇って奴…そろそろ、凡作からは脱出の予感? けど、もうちょっと人物紹介編が続きます。

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