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約1000字短編

アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ

作者: 真

 鍋の中でお湯が沸騰している。

 俺はスプーンで一杯塩をすくうと、それをサッとお湯の中へ入れる。

 コンロの火は鍋を強く焼き付ける。沸騰は止まらない。

 五百グラムで百円ほどのパスタを、親指と人差し指で輪っかを作るくらいに持ち、鍋の中へ押し込む。水分を吸って少しずつ柔らかくなっていくパスタを箸で混ぜる。箸で混ぜる作業は意外にも重要だ。最初に混ぜなければパスタとパスタがくっついてしまい食べ心地を損ねる。何回か失敗したことがあり、今では忘れることはない。ゆで時間は八分だ。俺はタイマーを六分にセットすると、しばらくはパスタを混ぜる作業を続ける。

 タイマーが残り四分くらいになったところで、フライパンを取り出す。そしてそこにオリーブオイルを流し込む。大さじ三杯くらいだろうが、そこは目分量だ。簡単な料理に時間をかけることは矛盾していると俺は思っている。コンロに火を点けてオイルを温める。

 そしてオリーブオイルの中にチューブのニンニクを入れる。これも目分量だが、本当はチューブじゃないほうがいい。ただ、今の俺にとって時間をかけることは悪手だ。

 少しずつオイルの中のニンニクが踊り始める。弱火にしてじっくりとオイルに香りを移す。ニンニクのいい香りが広がる。

 唐辛子のことを思い出して、棚からパックを取り出す。百円で買えるくらいの輪切り唐辛子だ。そいつもオイルの中に放り込み、少しだけ待つ。


 待っていると、ピピピピとタイマーが鳴る。

 タイマーのボタンを押して音を止め、おたまを手にする。

 これから乳化の作業に入る。

 作業に入ると言っても、パスタのゆで汁をおたまですくってフライパンに移すだけだ。そうすると、激しい音を立ててオイルと水とが混ざり合う。少しかき混ぜれば、それでソースの完成だ。

 俺は鍋に目を戻す。パスタを一本箸で取り、ゆで加減を確かめる。柔らかくなりすぎず、ごくわずかに固さが残っている状態がベストだ。それを確認してすべてのパスタをフライパンに移す。再びフライパンは音を立ててパスタを迎える。

 パスタとソースを絡める。そして塩コショウを振る。友達にそれでは焼きそばだという批判を受けたことはあったが、この味のほうが好きなのだから仕方がない。

 最後にこれまた百円くらいで買えるガラス瓶のパセリを取り出し、振りかける。

 少し混ぜてから、パスタを皿に移す。

 彩りも鮮やかだ。それがまた食欲をそそる。


 気づくと俺はそれに食らいついていた。

 うまい。

完全にただのレシピです。

他者から見ても小説と呼べるかどうかは不明。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] このパスタ、見た限りすげぇ薄味な気がするのだが、はたして本当に旨いのだろうか
2016/07/21 13:57 退会済み
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