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遊園地へgo!

高校一年のこころが、先輩たちと過ごす遊園地での一日です。

ずっと夏ごろから書きたかった題材なのですが、もたもたしているうちに季節が変わってしまいました。

夏の暑さを思い出してお読みくださいませ。

 頭の上は抜けるような青空。

 まぶしく降り注ぐ夏の太陽。

 まわりの誰もが弾むような足取りで歩いていく中、私の足は鉛のように重い。

 佐倉こころ、高校一年生、憂鬱です。

 あ~あ、雨でも降ってこないかなあ。

 これから遊園地に向かうのに、周りの人が聞いたら怒りだしそうなことを考えて空を見上げるが、晴れ渡った空には雲ひとつない。

 こんな日に外で遊んだら溶けちゃうよ~。

 基本的にインドア志向の強い私にとって、夏の遊園地なんて苦行に等しい。

 

「おーい。遅いぞー、佐倉ー」


 名前を呼ばれて顔を上げると、少し離れたところで桃坂先輩が手を振っていた。

 ああもう。やめてほしい。

 その女の子顔負けの可愛い顔に、惜しげもなく浮かべたビッグスマイル。

 人目を引くことこの上ない。

 このまま回れ右して帰ろうか。

 顔を引きつらせる私に向かって、先輩はさらに大きく腕を振り回し始めた。

 ダメだ。

 これ以上放置したら余計人目を引く。

 私は今日何度目になるか分からないため息をついた。


「あれ? 理子先輩は?」


 四人で来ていたはずなのに、理子先輩だけじゃなく佐藤先輩の姿もない。

 私を待っていたのは桃坂先輩だけだ。


「あー あいつらは先に行ってチケットの列に並んでるってさ。つーか待っててやった俺にまずお礼だろ?」


 なんと!?

 先輩にチケット列に並ばせるって、ダメじゃん私。

 桃坂先輩の後半のセリフはまるっと無視して、私は早足で歩きだした。


「おいちょっと、いきなりなんだよ」


 桃坂先輩が慌てて追いかけてくる。

 いやいや、慌てなくてもいいですよ。

 私一人で歩けますから、先輩はごゆっくり。


「なんだよ。ごゆっくりって。折角待っててやった俺を放置とは、相変わらずいい度胸してんな佐倉」


 そんな可愛い顔をして、凄んで見せても全然怖くありませんよー。

 桃坂先輩は高二の男子としては背の低い部類に入る。

 もちろん私よりは十センチ以上高いんだけど、百七十センチは絶対ないと思う。

 しかも究極の女子顔。

 色白のぷっくりほっぺに愛嬌のある丸い目。

 女の子だったらさぞモテる顔だと思う。

 でもそんな可愛い顔に似合わず、口は悪いし、やることも小学生の男子並。

 そんな人なのだ。桃坂先輩は。


 ふと気がつくと、いつの間にか先輩は私の隣を悠々と歩いていた。

 私が全力で歩く二歩が、先輩の一歩って、なんなの!?

 なんか許せない。

 おんなじちびっこ同士なのに。

 足なの!?

 足の長さのちがいなの!?


 しゃかりきになって歩いていたら、追い抜いたカップルのお姉さんが「可愛らしいカップルね」と言っているのが耳に入った。

 ちがうって!

 断じてカップルではありません!!


 


「大丈夫? ここ」


 私がぜーはーと息を切らして入場ゲートにたどり着くと、理子先輩と佐藤先輩はすでにチケットを手に入れ、ゲート前で待っていてくれた。

 この四人の中で一年生なのは私だけ。

 あとはみんな一つ年上の高校二年生だ。

 理子先輩は私のことを『ここ』と呼び、佐藤先輩は理子先輩にならって『ここちゃん』、桃坂先輩は名字の『佐倉』と呼ぶ。

 あー、相変わらず、理子先輩いい笑顔です。

 理子先輩の笑顔で、桃坂先輩によって苛立っていた心が癒されていく。


「ここちゃん、静流に意地悪されなかった? 悪いことされたらすぐに言うんだよ?」


 はい。佐藤先輩、イケメンなだけじゃなくて気づかいも抜群ですね。

 ちなみに『しずる』というのは、桃坂先輩の名前。

 『とうさかしずる』と、響きだけ聞けば、繊細な美少年をイメージするんだけど。

 中身はおこちゃま、ガキ大将。残念です。桃坂先輩。


 桃坂先輩の自他ともに認めるであろう親友が、佐藤先輩だ。

 佐藤先輩はわが校で不動のイケメンランキング一位を誇る超イケメン男子。

 整ったお顔にスタイル抜群の高身長。

 スポーツ万能、学力は学年トップスリーの常連というスーパーボーイ。

 しかも性格もいいって、神様に愛されてる人ってホントにいるんだね。うん。


 佐藤先輩の隣に立つ理子先輩は、私の中学時代からの先輩。

 優しくて可愛くて、でも凛とした強さを持っている理子先輩。

 できれば佐藤先輩の隣なんかじゃなくて、ずっと私の隣にいてほしいというのが私の密かな願い。

 

「はい、これ静流とここちゃんの分」


 佐藤先輩が私たちの分のチケットと園内案内図を渡してくれた。


「お、サンキュー」

「ありがとうございます」


 チケットを受け取り、カバンから財布を取り出そうとしたら、佐藤先輩がにっこり笑って言った。


「ああ、ここちゃんはいいよ。静流に出させるから」


 ええ!? でもこのチケット、乗り物フリーパスのだから、結構高いんじゃ……。

 びっくりする私に、佐藤先輩は爽やかに笑う。


「なんか強引に誘っちゃったみたいだし」

「なんだよ。俺が出すのに、まるで佐藤のおごりみたいじゃん」

「あの、そんなの悪いです。私、お金持ってきましたから」


 確かに、桃坂先輩にかなり強引に誘われたことは否定しない。

 でもチケット代を出してもらうのは、ちょっとちがうと思う。

 私が慌てて言うと、理子先輩が困ったように笑った。


「あのね、私の分も佐藤くんが出してくれたんだよ。だからお昼は私たちが出すってことでどうかな?」

「そんな気を使ってくれなくてもいいのに」

「だめだめ。そんなの余計気を使っちゃうよ。お昼代だけじゃ全然足りないくらいなのに」

「ふふ。本当に一之瀬さんって、奥ゆかしいよね」


 なんだろう。

 二人の、主に佐藤先輩から漂うピンクの空気は……。

 その空気に圧倒され、知らず知らずのうちに、一歩退いてしまう。


「そんじゃ時間がもったいないから入ろうぜ!」


 すごいな桃坂先輩。

 あの空気を無視して二人をゲートに追い立ててるよ。

 茫然としていたら桃坂先輩がこっちを振り返った。


「ほら佐倉! ぼんやりすんなよ!」


 ああはいはい。

 行きますよ~。

 行けばいいんでしょ~。


 あ、チケット代のお礼を桃坂先輩に言うの、忘れてた。

 っていうか、本当に桃坂先輩に払ってもらっちゃっていいんだろうか。

 



登場人物紹介

 佐倉こころ (さくらこころ)  高校一年生

               本人いわく、インドア派の普通の女子高生

 桃坂静流 (とうさかしずる)  高校二年生

               外見は超可愛い男の子

               中身は本人いわく男らしいらしい

 一之瀬理子 (いちのせりこ)  高校二年生

               こころの憧れの先輩

               優しくて芯の強い女の子

 佐藤文哉 (さとうふみや)   高校二年生

               神様に愛された高スキル男子

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