表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

出会い

 いつもと何も変わらない、普通の日。僕は特別な出会いに少なからず期待していた。 

 僕はいつものように部活を終え急いで帰路に就いた。すると小さな女の子が道端にしゃがんでいた。もうあたりは暗くなりはじめている。

「どうした?具合悪いの?迷子?お父さんかお母さんは?」

急いでたはずなのに、なぜかその女の子をほおっておけず僕はそう聞いた。すると女の子はゆっくりと顔をあげて僕の顔を見つめると、

「お母さんに貰った指輪…落としちゃったの……」

泣きそうな顔でつぶやいた。

「どんなの?」

かわいそうだから一緒に探してあげることにした。

「ビーズのやつ!」

女の子は急激に元気を取り戻して、うれしそうに叫んだ。しばらく探していると、キラキラ光っているものが目に入った。

「これ?」

女の子に見せてやると、

「うん!!これ!!お兄ちゃんありがとう!!」

女の子は目を輝かせてぼくにそう言った。思わず見入ってしまうくらい汚れのないめだった。

「だいじにするんだよ」

それだけ言って僕が帰ろうとすると

「あたし、魔法使えるの!お礼にお兄ちゃんの願い叶える!」

子供らしいな。僕は思わず笑みがこぼれた。まぁ付き合ってあげるか。でも願いか。急に言われても思い浮かばないし、こんな子供に現実的な悩み解決してもらうのも違う気がする。

「じゃあ、お兄ちゃんを不老不死にしてください」

これ、悪役のセリフじゃん。

「ふろうふし?それでいいの?」

どうやら意味は分からなかったみたいだけれど「願い」をかなえてくれるようだ。

「うん。おねがいします」

「お兄ちゃんがふろうふしになーれ」

そういいながら小さな両手で僕の顔を包んだ。

「これでお兄ちゃんはふろうふしだよ!」

指輪に負けないキラキラの目で僕に言った。

「ありがとう」

僕はそういって時計を見た。ヤバい。

「おうちの場所わかる?おくって……」

顔をあげるともう女の子はいなかった。辺りをみわたしてもどこにもいない。大丈夫かな?そう思いつつも僕は自転車に跨った。早く帰らないと一週間ためこんだ課題を片さなければ。僕は急いで家に帰った。つまらない日常の特別な出会いと、終わりそうもない課題のことを考えながら。

 今思えばなぜあの時あの子を探すことより課題を優先させたのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ