出会い
いつもと何も変わらない、普通の日。僕は特別な出会いに少なからず期待していた。
僕はいつものように部活を終え急いで帰路に就いた。すると小さな女の子が道端にしゃがんでいた。もうあたりは暗くなりはじめている。
「どうした?具合悪いの?迷子?お父さんかお母さんは?」
急いでたはずなのに、なぜかその女の子をほおっておけず僕はそう聞いた。すると女の子はゆっくりと顔をあげて僕の顔を見つめると、
「お母さんに貰った指輪…落としちゃったの……」
泣きそうな顔でつぶやいた。
「どんなの?」
かわいそうだから一緒に探してあげることにした。
「ビーズのやつ!」
女の子は急激に元気を取り戻して、うれしそうに叫んだ。しばらく探していると、キラキラ光っているものが目に入った。
「これ?」
女の子に見せてやると、
「うん!!これ!!お兄ちゃんありがとう!!」
女の子は目を輝かせてぼくにそう言った。思わず見入ってしまうくらい汚れのないめだった。
「だいじにするんだよ」
それだけ言って僕が帰ろうとすると
「あたし、魔法使えるの!お礼にお兄ちゃんの願い叶える!」
子供らしいな。僕は思わず笑みがこぼれた。まぁ付き合ってあげるか。でも願いか。急に言われても思い浮かばないし、こんな子供に現実的な悩み解決してもらうのも違う気がする。
「じゃあ、お兄ちゃんを不老不死にしてください」
これ、悪役のセリフじゃん。
「ふろうふし?それでいいの?」
どうやら意味は分からなかったみたいだけれど「願い」をかなえてくれるようだ。
「うん。おねがいします」
「お兄ちゃんがふろうふしになーれ」
そういいながら小さな両手で僕の顔を包んだ。
「これでお兄ちゃんはふろうふしだよ!」
指輪に負けないキラキラの目で僕に言った。
「ありがとう」
僕はそういって時計を見た。ヤバい。
「おうちの場所わかる?おくって……」
顔をあげるともう女の子はいなかった。辺りをみわたしてもどこにもいない。大丈夫かな?そう思いつつも僕は自転車に跨った。早く帰らないと一週間ためこんだ課題を片さなければ。僕は急いで家に帰った。つまらない日常の特別な出会いと、終わりそうもない課題のことを考えながら。
今思えばなぜあの時あの子を探すことより課題を優先させたのだろう。