シュラバラ
ディアボロの執務室の一つ、そこの机の空いたスペースにエレクトラは腰掛け、細い脚をぶらぶら揺らしながら、頬を膨らませていた。
「……妹様。退屈でしたらご自分の部屋に戻っても構いませんのよ?」
「アロマの意地悪。分かってるくせに……」
そう言って、さらに頬袋を膨らませる彼女に対して微笑ましい気分になりながらも、更に勢いを増した脚の所為でひらひらとめくれあがるスカートを見てはしたない、と彼女を自分と向かい合わせの位置に椅子を魔術で引き寄せ、座らせた。
「口で言わなければ、物事と言うのは伝わらないものですよ?」
「言ったって、アロマはのらくら聞き流すじゃない……」
……まあ、それはそうだ。
どうせエルちゃんは、ナインのリール・マール行きを黙っていたことに対して不満のぶつけ所を探しているに過ぎない。
そんなのはクリスにやってもらおう。何せ彼女も……いや、エルちゃんの唯一の姉なのだから。
普段私に面倒ごとを押し付けているのだ、この娘の躾くらいはきっちりやってもらいたい。
「……ナインちゃん、エヴァ様と今頃仲良くしてるのかな……」
「初日以降は別行動を取る予定と聞いておりますわ」
「ふうん……でもいいなあ、私も偶にはどこか遊びに行きたいな」
……これまでエルちゃんは、情緒不安定の傾向が強かったから。
……人間との大規模な戦闘地域に戦力として連れて行く以外にあまりアグスタの外に出してあげられる機会は少なかったけれど、最近は……誰のおかげとも言わないが、安定している様に見える。
今度クリスに進言してみるのもいいかもしれない。
もし、いつか人間との戦が終わったなら。
イスタ、リール・マール、フォルクス、セネカ、インディラ。
皆で主要な国々を観光しながら、ホールズの一周旅行でも出来たらいいと、そう思う。
人間より寿命の長い私達だ、生きているうちにそんな未来にたどり着くのは、現在の戦況が続けば決して不可能なことでもない。
……とは言え、それは先の話。現在のエルちゃんの心の慰めにはなるまい。
せめて、今は気晴らしに散歩に連れ出してみようかしら。緊急の案件も特にないことですし。
……なんだかんだ、私も甘い。
「エルちゃん」
「なあに?」
「ちょっと、私とぶらぶらしに行きません?」
「いいよー、でも……そうね、じゃあ一緒にガロンの所に行こう?」
「あら。なんでまた?」
「ちょっとナインちゃんのことで。アロマも見たでしょ、図書館の前でさ。これ見よがしにベタベタしちゃって、まったく……」
「…………」
すとん、と椅子から跳ね降りたエルちゃんは、たしたしと尻尾で床を叩きながら言う。
「釘を刺しに行こう。こーいうのは私一人より、アロマと一緒の方が話しやすいし」
「…………」
「……別に、いいよ。これは私の意思でやることだから。アロマはついて来るだけ……それならいいでしょ?」
……ちゃっかりしてる子だ。偶にそれを腹立たしく思うこともあるけれど、やはりこの子は賢しい。
いや、でも……今回はそれに甘えておくか。
でも、もしかしたらクリスよりこの子の方がしっかりしているというか、安心できる部分もある。
こんな年下の少女と比べられるクリスが哀れだが、偶にやらかす彼女の行いを思い返し、当然だと割り切った。
……お互いがお互いに対して欺瞞を与え合う茶番だけれど、今はそれに乗っておこう。
私にとって都合が良いことであれば、拒む道理など一つもないのだから。
――その時。ガロン・ヴァーミリオンは、城内の廊下にてピュリア・ハープと向かい合って対峙していた。
ガロンは腕を組み、ピュリアの目を真っ直ぐ見つめて、開口一番こう言った。
「よお、ピュリア。少し付き合えや」
「……何です、ガロン隊長?」
「今お前、暇だろう? 稽古つけてやるよ。オレも最近、戦闘がねぇから体が鈍っちまってよ」
「ウチじゃ相手にならんでしょうに。他の相手探したって……」
そう、ピュリアが常識的に答える。
そもそも、さほど直接戦闘に長けているわけでもないハーピーは、基本的に偵察要因として重宝されている。
魔王親衛隊……近衛として陛下の壁になる部隊の、しかも隊長ともなれば、相手になる筈もない。
ピュリアは、まったく当然の回答を口にした。
「なんだよオイ、逃げんのか?」
しかし、その言葉に眉をぴくりと痙攣させる。
……逃げる?
「……はぁ? 逃げるって……なんやそれ」
「お前、いざとなったら逃げる奴なのか? それならオレも無理にとは言わねえよ。そういう奴ならな」
――何せ、その方がオレにとっちゃぁ都合が良い。
ケツまくって逃げるって選択肢がある奴なら、話が早くて助かるからな。
そう、聞こえるか聞こえないかの声量で発されたガロンの呟きを、ピュリアは確かに耳にした。
「……言うてくれるやないですか。ハーピー舐めたらアカンってこと、教えたってもいーんですよ、たぁーいちょ……?」
ハーピーは、その猛禽の目つきで、人狼を力の限り睨めつけた。
「オラァ、降りて来い!」
練兵場の真ん中で、ガロンは大声を上げたが、無論ピュリアが聞くはずもない。
一対一の接近戦で、特にそれに秀でた種族である人狼に……それも、ヴァーミリオンの系譜に連なる者に挑むはずがない。
そんな真似をして生き延びることが出来れば、それこそ魔王候補の一角として名乗りを上げても許されるだろう。
このディアボロ以外であれば。
「地を這うしか能のない種族は不便ですなあ」
そう、空の高みから見下ろしながら、ピュリアは魔術でガロンの耳元に自分の声を届ける。
「あァン!?」
「おーこわ……たぁーいちょぉ、もうちっと女らしくした方がええんと違いますぅ……?」
「んだとぉ……!?」
「胸ばっかりでっかくなったって、アレがそーいう姿見たら……どうでしょね、どう思います、たぁ・いぃ・ちょぉ?」
「っ! テメェ……」
足が止まったのを確認し、急降下したピュリアはガロンの肩口……己の蹴爪が鎖骨下動脈に食い込むよう、狙いを定めるが。
「はっ」
そう、鼻で笑われて軽く避けられてしまう。そもそも、上空からの一方的な攻勢権利を得てさえも圧倒的に分が悪い勝負なのだ。
空を飛び続ける限り、自分の敗北は無いだろう。
しかし、人間に『赤爪』と仇名され、恐れられているこの怪物に決定打を与えることなど不可能に近い。
負けはしないが、勝つことも出来ない勝負なのだ。
……しかし、それは単純な殴り合い、殺し合いに限ってのことである。
「鳥ってのはやっぱり臆病だな! やばい時には、そうやって自分だけ逃げ回ってりゃ良いんだから気楽なもんだ!」
「……何が言いたいん?」
「お前にゃ、守ることなんか出来ねぇって話だよ!」
誰を、と言わないのは、今更だから。
……とは言え、しかし、だ。
「ふふ。く、クキキキ」
おっといけない。思わず種族の本能的な笑いが漏れ出してしまった。
ちょっと下品なこの笑い方は、あんまりアイツには見せたくないから、矯正してる最中なのに。
「何笑ってやがる」
「いえね、隊長。アンタ勘違いしてますわ……まあ、そんだけ強かったらしゃーないかもしれませんけど」
「……んだよ」
「アイツに必要なのは、戦場で守る力じゃないです。危ないところから逃がしてやれる、ウチみたいな……っ!」
そこまで口にしたところで、ぞわり、と肌が粟立った。
第六感が言っている。
自分は今、怪物の逆鱗に触れた。
「おい」
「……なんです?」
「後悔、すんなヨ?」
そう、耳元で言われたと錯覚するほどの圧迫感、威圧感。
ぎしり、と空気が軋み、ざわめく。
ずず、と風が彼女を中心に渦巻き始める。
ガロンの体の一部を纏っていた赤い獣毛が範囲を広げ、それが全身に及ぼうとしている。
二足歩行の獣、と行って差し支えない姿に、ガロン・ヴァーミリオンは変身しようとしていた。
そして、大きく体を反らし、口を開け。
致命的な何かを――。
「おやめなさい!」
――そこで、水入りとなった。
アロマの一喝を耳にした瞬間、ピュリアは空を滑空し、そのまま逃げ出す。
そう、今は既に、先ほどと状況が違う。逃げてもいいタイミングなのだから。
自分が伝えるべき意思は、既にガロンに示している。
態々お説教を食らうために、降りていく筋合いでもない。
自分より立場が上なのだから、責任はガロンにとってもらえばいいのだ。元々彼女が持ちかけたことなのだから。
……小さくなっていくピュリアの姿を見上げながら、アロマは腰に手を当てて溜息をつく。
最近妙に増えてしまったこの仕草、止めたいと思っているが、苦労をかける者が居なくならない限り難しいだろう。
アロマは、己の目線を、既に元の姿に戻っていた人狼少女に合わせる。
だが、彼女は悪びれることもなく平然としていて、それが殊更苛立たしい。
「ガロンさん、貴女今何をしようとしていたの?」
「アイツが挑発してきたんだ」
「質問に答えなさいガロン。貴女、何を、しようとしたの」
「アロマ」
そこで、エレクトラが口を挟んだ。
自分達は、当然二人のやり取りを見ていて、ガロンがピュリアに何をしようか……いや、どうしようとしていたのか、知っている。
あの殺意は、紛れもなく戦場で見せる彼女と全く同質のものだった。
だが、ガロンの口から言わせてしまったが最後、それはもう取り返しのつかない事態になることを意味していた。
……エレクトラの言いたいことも分かるが、それでも、とアロマは考えた。
しかし、何だかんだでガロンに懐いているエレクトラの縋るような目つきに、彼女は折れた。
「……せめて、こうなった原因を話しなさい。嫌とは言わせないわ。ガロンさん、何でこんな」
「オレから」
遮るように、ガロンは口を開く。
彼女は、恐らく後ろめたさはなくとも、それを明らかにすることで自分の中の何かが決定的に変質してしまうことを無意識で理解していた。
一つ唾を飲み込み、一度だけ開いた口を閉じて逡巡を見せたが、瞬き一つ。
改めて口を開いた。
「アイツがオレから、ナインを奪おうとしているから」
その言葉にエレクトラがまた口を挟もうとしたが、アロマはそれを右手で遮る。
横に伸ばしたその手を下ろしつつ、逆の左手を額に当てて、首を振った。
「……今回のことは、陛下には報告しません。この様なことで煩わせたくはないですから」
「…………」
「だからガロンさん。貴女もくだらない考えは捨てなさい。これは親切で言っているのよ? ……ヴァーミリオンの名を汚すつもり?」
「…………」
「彼が原因だというなら、貴女をナインの教育係から外します。もう、あの人間には近付かないように。良いですわね?」
「やだね」
「ガロン!」
語勢を強めてガロンを睨むが、むしろ彼女はそれを受けて、口角を上げた。
あたかも、嘲るが如く。
「……なあ、アロマ。お前、いつからそんなに分かりやすい奴になったんだ?」
……分かりやすい、だって?
「なんですって……?」
「なあ、宰相殿。はっきり言わなきゃ分かんねえかな」
「……なんのことですか」
「今のお前、嫉妬に狂った雌の臭いがプンプンするぜ。いやらしい奴」
…………嫉妬だと。
「口を慎みなさい、ガロン」
「いいや黙らないね。お前がそういう卑怯な態度を続ける限り、オレは黙らない」
「ガロン、貴女……!」
「正直に言えよ。お前、オレにアイツを取られんのが怖いんだろ? この臆病者!」
――パアン、と。
ガロンの頬から響いた音が、練兵場に高く高く響き渡る。
平手を振り抜いた姿勢のまま、アロマは声のみならず、その豪奢な金髪をも全身と共に震わせ、怒鳴った。
「こ、の……野良犬が!」
「ぬかせってんだ、甘ったれめ!」
そう怒鳴り返し、ガロンは同じく平手を返した。
「お前、無礼を見逃してやっていれば調子に乗って……! 穀潰しの分際で!」
「うるせえ! テメェの上から目線は、前から気に入らなかったんだ!」
――そうして取っ組み合いを始めた二人を、エレクトラはオロオロと交互に見る事しかできない。
何故このようなことになってしまったのだろう。
一体なんで。
私がガロンに嫉妬したから?
私がアロマを誘ったから?
だとしたら謝るから、二人とも止めてよぉ……!
――そんな彼女達を、己の部屋からアリス・クラックスは見下ろしていた。
明日のスリザへの出発の準備はもう終えて、暖かい紅茶を喉に馴染ませ、一時の休息を満喫していたところであった。
「怖がらなくても良いのに、アロマ様ったら」
ナイン様は、あの方は、平等に私達を愛してくださるというのに。
……いいえ、憂えることすら詮無いことなのよ。
平等なんて生易しい言葉では足りない。
あの方の愛は、私達を、無差別に壊し尽くすに決まっているのだから。
あの人間の愛は、この世界を真っ平らに、きっとまったいらに……。
アリスは一息に残った紅茶を飲み干し、乱暴にティーカップを戻した。
そして、服を脱ぐのももどかしいとばかりに、その右手を己の脚の付け根に伸ばす。
……少女には不似合いな程艶かしい吐息と、淫靡で粘着質な水音が、部屋の中に漏れ出した。
――――――――――
……ふわふわした世界。
地面もなければ、空もない。
薄く空気が桃色に色づいたような、そんな所。
地平線もなく、人っ子一人いないのに、それでいて誰かに優しく包まれているような充足感を感じる不思議な場所に僕はいた。
……あちらこちらに、扉が見える。
僕から見て、真っ直ぐだったり、ひっくり返っていたり、あるいは横を向いてたり。
色も赤、青、黄色と色とりどりで、なんだか楽しくなってきそう。
それらが遠くなったり、近くなったり、くるくる回ったりと現実味のない様子を見せてくれるものだから退屈はしなかったのだけれど、その中で一際目立つ真っ白な扉に興味を惹かれた。
地面がないから歩くことも出来ないけど、そっちに行ってみたいなあ、と思った瞬間。
その白い扉が開き、吸い込まれていった。
真っ暗な扉の向こう側に、落ち込んでいくような感覚。
ゆっくりと意識が溶けていきながらも、僕は気付いた。
……ああ、この感じは、クリステラだ。
天使のような、僕の魔王。
――――――――
「なあ、山猿」
クリスの組まれた右脚、その親指と人差し指の股を舐めて綺麗にしていた時、彼女は四つん這いの僕に、やや上気した顔で声をかけてきた。
「何でしょう、陛下」
「お前は一体、何を求めてここにいる?」
「……?」
「余は人間を滅ぼす。それは、貴様の同胞が居なくなる事を意味するのだぞ。その後、お前は魔族に支配された世界でどう生きる?」
「……特に、考えておりません。僕は、今、陛下を愛することが出来るのであれば、見返りなどいりません」
「……ふん」
彼女は黙って右足……踝の部分を僕の頬に当て、体をやや仰け反らせてバランスをとりながら、左足を口元に寄せてきた。
ゆっくりと降ろされた右脚が玉座の毛氈に触れた際、それのお蔭で水音こそかき消されたが、だからこそ、その長い毛足に僕の唾液が絡まる様子が目の端に写った。
催促をするように、彼女は僕の前で脚を揺らす。
その度に、彼女のスカートが重力を忘れて……不自然なほどふわりと舞い上がるのは、彼女が望めば可視化するとまで言われている濃密な魔力によるものだろうか。
それによって、暖かで、絶妙な肉付きを保つその太腿の奥が、わずか垣間見える。
僕に言われて、とまでは言わずとも少しは気を遣うようになったのか、随分と大人びたデザインの、透かしとレースによる装飾がなされた黒いショーツが目に入った。
思わず軽く鼻を鳴らすと、咎めるように彼女は目を細めた、気がする。
彼女の期待にこたえるため、左足を捧げ持つようにして、僕は舌を這わせ始めた。
……いつからか、手を使っても蹴られる事は無くなった。
「……お前は、自分の父のことを覚えているか?」
僕が作業に没頭していると、唐突に彼女はそんな質問をしてきた。
「忘れました」
本当に。
「……不孝者なのだな、お前は」
指から踵までを舐め終え、舌が踝から脹脛を伝うと、彼女はいつも、僅かに体を震わせる。
「……余の父は、既にこの世にはいない。母は、気付けば姿を消していた」
「…………」
「父は言っていた。人間の所為で、我らはこの厳しい土地に閉じ込められたのだと……お前は旅をしていた時、フォルクスの方に行った事はあるか?」
「あります」
「……あそこでは、よく甘い果物がなるそうだな。葡萄酒も質が良い物が出来ると聞く。……ディアボロではその様な作物は一つも育たない」
「…………」
「哀れむなよ。そんな真似をすれば即座に殺す。……ただ、知りたかった。余は、我々は、そんなに悪辣な存在であったのかと」
――当たり前だ、馬鹿野郎。
僕の家族を殺してくれやがって。
村の皆を殺しやがって。
何もかも僕から奪っておきながら、被害者ヅラか――?
「……エルや、余の子供と言っても良いディアボロの……いや、アグスタの皆に、のびのびと暮らすことの出来る世界を与えてやりたかった」
――ぬかせってんだ。
テメェがさっさと死んでれば、最初っからいなければ。
僕は、こんなところで、こんな真似しねぇで済んだんだ――!!
「……余を恨んでいいぞ、人間。我々は、我々の為、お前らを苦しめ、そして討ち滅ぼすのだ」
「いいえ」
即答した。できた。
「この身は既に、陛下に捧げました。必要ならばこの命、いつでも貴女に捧げます」
「……貴女? ふん、口の利き方がやはりなっていないな。減点三だ、精進しろ」
だが、愛い。
そう言って、彼女は背中から生えた大仰な、まさしく天使の様な羽根の片方を僕の頭に乗せて、二、三度撫でた。
……彼女自身が気付いているかは知らないけれど。
脚の付け根から、一筋垂れた透明なそれに向けて、僕は舌の進路を少しだけずらす。
…………。
これがクリスの味だ。
覚えておこう。
……ところで。
「ねえ陛下?」
「なんだ」
「そんなおぱんつ持ってたんですね、びっくりしました」
「いや、アロマから黙って借りた」
「うわばっちぃ」
顔が腫れ上がるまで引っ叩かれた後、部屋を蹴り出された。
……僕の可愛い陛下。
愛しいクリス。名前まで可愛いよ。
……良い名前だよな……聞いてるだけで心が温かくなりそうだ。
クリス。
クリス。
弱虫クリス。
強がって偉ぶって、皆から玉座に押し込められたクリステラ。
いつか僕が、そこから救い出してあげるからね……?
――起きなさい、ナイン――
はあい、ティア様。




