表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

シーチキンよ貴方は何処へ行く

 



素敵な三題をくれた親愛なる友人へ、感謝を込めて。







 

 真夏の深夜のことだった。私は不意に、シーチキンが食べたくて食べたくて仕方がなくなった。布団から這い出る。着替えようかと思い、しかし、面倒臭くなって、そのままコンビニに赴いた。


「ありがとうございましたー。」


 眠たげな店員の声が私を見送る。手の中にはツナ缶がひとつ。ビニール袋は断った。いらないし。

 ・・・・・・さて、と。

 どうやって食べようか。

 ツナマヨにして握るか?それなら最初からツナマヨのおにぎりを買え。


(醤油で和えてそのまま食べるか・・・。)


 それが一番、シンプルで良さそうだ。

 家まで5分の道のりを、たらたらと歩く。緩やかな登り坂。真夜中1時を過ぎた頃だが、夏だからね。汗がじんわり染み出てくる。ひじょうに蒸し暑い。 がらん、ころんと、最近 衝動買いした下駄が、足元で鳴く。ジャージにTシャツ、それと下駄。なんともだらしのない姿である。・・・・・・って、あぁっ! やばい! Tシャツに『腹が減っては戦は出来ぬ』とか書いてある!

 今更ながらそのことに気が付いて、愕然とした。


(やばい・・・・・・絶っっっ対、店員さんに『どんだけ飢えてんだコイツ』とか思われた・・・・・・。)


 うあああああっ、恥ずかしい・・・。

 思わず立ち止まって身悶えていると、汗の所為か手の中で缶が滑った。


「あっ!!」


 不覚にも落としてしまった。坂をころころと転がっていく缶。私は慌てて走り出した。

 コンビニを過ぎ、坂はだんだん急になっていく。スピードはどんどん上がっていく。追い付けない。


(ヤバイ! やばいやばいヤバイって!! この先には――――――)


 坂の向こうは、川だ。


(くっそーっ!! 間に、合わ、ないぃっ!)


 カンッ!


 何かに引っ掛かったように、シーチキン缶が大きく跳ね上がった。くるくると回りながら、闇の中に落ちていく。闇の向こうには川が待っている。私はもはや諦めて、急ブレーキを掛けた。

 瞬間、


ブチンッ

「っ!!」


 聞きなれない音が盛大にして、身体が宙に浮いた。鼻緒が切れたのだ、と分かったのは、落ちながらのことだった。


(こんの、安物ぉ~~~~っ!!)


 そうして、シーチキン缶の後を追うように、私も闇の中に消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ