34 王太子妃選定
王宮の大広間は、朝の光を受けて静かに輝いていた。重厚なカーテン越しに差し込む光は、金色のシャンデリアに反射して、まるで無数の星々が舞い降りたかのようだった。今日、この場に集まったのは、王族、貴族、外交使節団、そして特別に招かれた市民代表たち。緊張と期待の入り混じった空気が、広間を包み込む。
リディアは、深く呼吸を整えながら王座の前に立っていた。胸は高鳴り、しかしその瞳には揺るぎない決意が宿っている。孤児院での活動、学園での訓練、そして数々の試練を乗り越えてきた自分が、今、ここに立っているのだ。
会議の序盤から、王族や貴族たちの目は彼女に注がれていた。王妃候補としての適性、戦果、民への思いやり――全てがここで判断される。リディアの心は静かだったが、胸の奥で期待と不安が混じり合う。
隣国バレッタ王家からの使者が届き、駆け落ちした王女の子供が孤児院に保護されており、
その子供を見つけ、保護したリディアは、隣国からも支持されたとあって、評価は一気に上がった。
そして、王の低く響く声が広間に鳴り渡る。
「これまでの議論、そして候補者たちの評価を踏まえ……次期王妃を宣言する。」
広間の空気が一瞬、凍りついたかのように静まり返る。全員が王の次の言葉に耳を凝らす。
「次期王妃は――リディア・フォン・エルゼライト。」
その一言が放たれた瞬間、広間は歓声に包まれた。重厚なシャンデリアがきらめき、金色の光が会場全体を染め上げる。民、貴族、使節、そして王族たちが口々に祝福の言葉を投げかける。
リディアは深くお辞儀をし、声にならない涙をこらえた。胸に込み上げる感情は、言葉にする必要もなく、静かに心を満たす。孤児院の子供たちの笑顔、仲間たちの応援、そして何よりもクラウスの信頼が、この瞬間に重なり合ったのだ。
クラウスはその光景を見つめながら、目が潤んでいた。普段は冷静沈着で誰もが恐れる王太子であっても、今、彼の瞳はリディアへの深い愛情と誇りで揺れていた。
「リディア……君は、私の王太子妃だ。」クラウスの声が、低く、しかし確信に満ちて広間に響く。彼の視線はリディアから一瞬も離れることはなかった。
リディアは微笑みを返す。涙はまだ頬を伝うが、心は穏やかで満たされていた。全ての努力が、この瞬間のためにあったのだ。彼女の成長、誠実さ、そして他者への思いやりが、ついに国王と民に認められたのだ。
王妃も微笑み、リディアの肩に軽く手を置く。「よく頑張ったわね、リディア。あなたなら、きっとこの国を導いてくれるでしょう。」
会場の空気はまだ熱を帯びており、祝福の声と拍手が絶えない。外交使節団も微笑を浮かべ、隣国の王族使節は静かにうなずく。リディアの評価は戦果だけではなく、人柄と誠実さで築かれたものであることが、この瞬間、誰の目にも明らかだった。
クラウスがそっとリディアの手を握る。指先に伝わる温かさに、リディアの心はさらに満たされる。二人の間には言葉はいらなかった。視線だけで、全ての思いが伝わる。王妃としての道、クラウスの伴侶としての道、そして民の信頼を背負う道。すべてが、この小さな手の中で確かに始まったのだ。
「これからも、共に歩もう。」クラウスの声が、リディアの耳に柔らかく響く。
リディアはうなずく。「はい、クラウス様。私、全力を尽くします。」
広間の歓声はますます大きくなり、国中の人々に届くかのように響き渡る。王妃として迎え入れられるその瞬間、リディアの心は希望と誇りで満たされ、決して揺らぐことのない光に包まれていた。
クラウスは目を細め、胸の奥で静かに誓った。リディアを守り、共に国を導く。その想いは、言葉にする必要もなく、全てが行動となり、未来へとつながっていく。
王妃としてのリディア。王太子の伴侶としてのリディア。民の希望としてのリディア。それぞれの立場が交差し、彼女の存在はまさに国の光となったのだった。




